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Vol.49 「エコアイディアハウス」で考えたこと

  • 2010年6月3日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
 今回は「エコアイディアハウス」を見学させていただきながら、考えていたことについて書きます。それは、ひと言で言ってしまうと、「やっぱり“ワクワクするからやるんだよ”というところにやっぱり立ち戻らないといけないのかな」ということです。一見エコとは全然関係ないと思われるであろうそんなことを僕が考えたのは、無意識のうちに“ゴスペラーズの今”とリンクして考えていたからだと思います。 ゴスペラーズ ゴスペラーズは今、15周年が終わって次のレベルに行かなければいけないというところにいるわけですが、ブレイクしてからのしばらくの間のゴスペラーズというのは、“どういうふうに思われているんだろう?”とか“どういうものを求められているんだろう?”ということを軸にして活動してきたと思います。それはすごく大事なスタンスだし、僕自身それを全面的に肯定しています。そのおかげで得たものがたくさんあるし、僕自身それによって鍛えてもらった部分がたくさんありますから。でも、それにしても16年目以降、どういうゴスペラーズを見てもらっていくかということを考えると、やはり“自分たちがやりたいから、やる”あるいは“自分たちがワクワクするから、こういう音楽が生まれた”というふうに、主体的に活動しているということをもっと見せていかないと、つまりあらゆる活動が自分たちのモチベーションにちゃんと結びついていないと疲弊していってしまうと思っていました。だから、ゴスペラーズというものを一生続けていくためには主体的に取り組むという意識が改めて必要だなということをちょうど考えていた時期に見学に出かけ、期せずして近未来のライフ・スタイルの提案とゴスペラーズの今後が僕のなかでリンクしてしまったというわけです。

 マーケティングをしっかりやったうえで、ユーザー(ゴスペラーズの場合はリスナー)におもねるのではなく、“こういうのって、ワクワクしませんか?”というものを出していかないと、エンタテイメントでもエコでも、どういう分野であろうと共感を広げていけないんじゃないかなと思います。
 ただし、“ワクワク”を主体的に提示しただけで共感を広げられるかと言えば、もちろんそういうわけではないということはみなさんもよくおわかりでしょう。そこには、確かに別のテクニックというか、ある種の能力が必要になりますが、僕自身は“共感を広げる”という課題をテクニックや能力の問題にしてしまうのではなく、心がけの問題として考えたいなと気持ちがあります。それは、簡単に言えば、最大公約数を指向するのではなくて、最小公倍数的な共感を大事にするということです。特に「エコアイディアハウス」のような、様々な技術を統合してひとつのスタイルを提案するような場合には、すごく重要なんじゃないでしょうか。

 さらに言えば、その意識はユーザーであるみなさんにもとってもすごく大切なことだと思います。もしユーザー側がちゃんと自分の暮らしについての理念を持って生活していなかったら、言い換えれば企業のお仕着せで満足していたら、例えば企業からのプレゼンテーションにちょっと嘘が混ざっていても気づかないかもしれません。逆に、ユーザーにちゃんとしたチェック意識があれば、企業は嘘をつくことができなくなっていきます。というか、どんどん正直になっていくと思うんです。ユーザーが意志を持って生活することを続けていけば、企業はどんどん正直にならざるを得ない。結果、ユーザーはその正直な提案を楽しむことができるようになっていくわけだし、企業とユーザー双方のそうした正直さや率直さが最小公倍数的な共感を生み出すんだろうと思います。だから、みなさんがもし「エコアイディアハウス」に行くようなことがあるとすれば、あらかじめ自分が暮らしのなかで抱いている不満や要望を整理して、“こういうエコな暮らしがしたい”という意志を持って出かけるのがいいと思いますよ。そうすると、ワクワクすることとがっかりすることと、その両方を得られると思うんです。そのことが重要なんですよね。

 ところで、素晴らしい技術や製品に触れて時々残念に思うことのひとつは、“最高であることが最適であるわけではない”ということです。今回の「エコアイディアハウス」は、“最高のものを組み合わせて最適にするという取り組み”として捉えるとすごく意味のあるものだと思うんですが、そういう取り組みを続けているどこかの企業が僕をコンサルタントとして雇うなんてことはないでしょうか(笑)。“作り手の気持ちがわかりつつ、でも実際には作っているわけじゃないから厳しいことも言えるっていう意味では、かなり効果的なコンサルティングができると思うんだけど…“なんてこともちょっと思った見学でした。

 

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