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Vol.47 旅を振り返って思うのは“まだまだ知らないことがいっぱいあるなあ”ということ

  • 2010年4月28日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
 今回は春休みの旅行報告の3回目。小豊島(こてしま)編です。
 じつは、この小豊島に行くのが今回の旅の最初の目的で、というのはそこにいまではもうほとんど日本に残っていないと言われている和船を作る船大工さんがいるんです。その人の話を聴き、あわよくば作り方を教えてもらって船作りプロジェクトをスタートさせようというのが最初の目論みでした。結論から言えば、その船大工のおじいさんに指導を受けながら船作りを進めるというのは難しいようですが、それでもこれまで全然知らなかったことをいっぱい教えてもらいました。
 例えば船魂(ふなだま)。将棋の駒のような形をしていて、振ると音がするんですが、これが守り神として船の中に奉られていたそうです。
和船  それから、和船はもちろん木造で、使っている間にどうしても木の隙間ができるそうなんですが、そこには檜の皮を剥いで繊維状に撚ったものを専用の道具で詰めて対処します。その作業を含め、いろいろと船作りの工程を実演してもらいましたが、その技の素晴らしさはまさに驚愕のひと言。おかげで、みんな盛り上がり、とにかく自分たちでも作ろうという話になりました。
 洋船とのいちばんの違いは、骨組みを先に作るか側を先に作るかという作り方にあるようですが、西洋流の古い木造船を作っている人はいっぱいいるそうで、伝統の木造船を作る技術を学ぶ専門学校がイギリスだけでも20校くらい有るそうです。日本には1校もない。でも、それはいい/悪いの話じゃないでしょうね。向こうの人は、“伝統を守ろう”とかそういう話ではなくて、船を作るということ自体にロマンを感じるというか、楽しみとしてやってるみたいです。趣味でギターを弾く、みたいな感じで。僕自身も、そういうふうに趣味の世界を広げたいというか、素朴に「オレ、船を作ったことがあるんだ」って言ってみたいっていう(笑)。
 その大工さんが作った船も見せてもらったんですが、いまはメンテナンスが大変で、ずっと水に浮かべているのも、ずっと水から揚げておくのも、どちらも良くないそうで、適当に水につけなきゃいけないっていう。なので、底板にプラスティックを貼って、いまはメンテナンス・フリーの状態にしたそうです。
 ただ、やっぱり伝統の技術で作った船は風を受けたときの流され方とか漁をしているときの安定感が他とは全然違うという話でした。いまはFRPとかアルミで作っている船が多いですが、例えばスピードを出す場合は圧倒的に木造船のほうがいいということでした。競艇のボートというのはベニヤ板でできているそうで、FRPとかアルミで造った船が主流になった時期もあったそうですが、その時期には競艇選手の死亡事故が続出したそうです。
 というわけで、教えてもらいながら作るということが難しいとしても、僕らとしては今後も折にふれて作業の進行状況を報告に行ったりしたいな、と。単純に、住んでる人たちに会いに行くだけでも楽しいですから。
 小豊島は全人口が13人! 今回、僕らのほうは17人の集団で、その船大工のおじいさんの奥さんは僕らが上陸するのを見て「島が沈む!」と叫んでました(笑)。
 それから、今回のツアーではビーチ・コーミングも初体験しました。ビーチ・コーミングというのは、ビーチに櫛をかけるように浜辺の漂着物を拾うことで、言わば浜のゴミ拾いの進化形ですね。ゴミ拾いを楽しくシステマティックにやれて、しかもデータがとれるという。4人くらいでチームになって、リーダーは拾ったもののリストを作っていきます。僕がやった日は漂着物の量は比較的少なかったそうですが、でも僕の感覚からすればすさまじい量でした。例えば、牡蠣の養殖に使う塩化ビニールの小さな用具があるんですが、それが外れて流れてくるそうで、100メートルくらいの浜を何チームかで手分けしてやって、僕のチームだけで20分間に100個以上拾いましたから。
 以上、3回に分けて春の旅行のレポートを紹介しましたが、旅全体を振り返って思うのは、“いやあ、やっぱり世の中は広いな”ということです。普通に暮らしてると、まったく気づけないことに囲まれてるんだということを改めて思い知らされてショックでした。確かに、クルマで一気に移動すれば、意外に日本は狭いなというふうにも感じましたが、その一方で、たった30キロ離れるだけで全然文化違うということも目の当たりにして、それは素敵なことだなと思うんです。その両方の実感を伴っていろんなものが今回の旅を通して僕のなかに押し寄せてきてくれた感じです。ひと言で言えば、まだまだ知らないことがいっぱいあるなあっていう。知るべきことというか。本当は知らないほうが楽なんだろうけど(笑)。
 さて、来月は近未来のエコハウスを見学したレポートを紹介します。どうぞ、お楽しみに。

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