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Vol.44 じつはこんなことも考えています。

  • 2010年3月18日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、NTT情報流通基盤総合研究所見学レポートから「高電圧直流給電システム」のお話です。このシステムの特徴や意義などの詳細はNTT環境エネルギー研究所のホームページを参照していただくとして、なぜこのシステムの見学が今回のメインテーマだったかという話をしましょう。

郊外  じつは、僕は最近、郊外に住む場所を手に入れ、そこで自給自足のような生活を送ることをよく考えています。まず、可能性の話で言えば、いわゆるテクノロジーを使わずに自給自足生活を実行するということは可能だと思います。だって、昔のひとはやっていたんだから。とは言っても、もう少し現実的なレベルで考えると、衛星放送やインターネット・コネクション、あるいは電話といった部分は外の力に頼るとして、それに接続するための電力だとか、そういうものが手軽に自給できるとワクワクするよねというわけです。それで、太陽光パネルや風力発電の設備などを、個人レベルで購入できる程度の金額のものを組み合わせることでどれくらいのことができるのかということを最近検証したくなってきていました。

 言い換えれば、暮らしのなかの何をどうするのに何が必要かといったことを、実感とともに知りたいということですね。それを、僕個人でコツコツとやるのもいいんですが、日妄研と連携してやれると面白いかなと思っていて、そこにどこかの企業あるいは団体が「ウチの設備をいろいろ使ってもらっていいですよ」みたいなことを提案してくれないかなあという他力本願な気持ちもあり(笑)。そういうサポート・システムがもし実現すれば、その枠組み自体が実証実験みたいなことになって、結果的には新しい生活サイクルの提案につながるだろうと思うんです。自然回帰みたいな指向と都会生活のいいとこ取りみたいな試みですから。あるいは「変化を不便と感じずに歓びとしてとらえる境界線を探る試み」というふうにも言えるでしょうか。

 新しい生活サイクルの提案ということについては、「江戸時代の生活に帰ろう」という意見がよく聞かれます。確かに、江戸時代の生活から学ぶことはたくさんあると僕も思います。例えば江戸時代には火災が多かったことが知られていますが、江戸の町に火事が起きたときに、大きな屋敷の焼け跡から大黒柱を運び出して、焼けた部分は削り、残った木を今度は庶民の家の柱に使い回したりしていたそうです。そういうことを繰り返して最終的には傘の骨にまで使っていたという。徹底して使えるものは使うという文化だったということですね。そのベースにある、ものを使い切るという考え方は現代のいろいろな場面にも活かせると思います。しかし、現代生活にフィットし得ないこともたくさんあって、そこのギャップをどうするのかということについて回答を提示しないと、「江戸時代へ帰ろう」説の魅力は半減してしまうでしょう。そういう意味でも、歓びと不便の境界線を知ることが大事だろうと思うわけです。

 それに、いまはなんでも分業というか、元は同じなのに目的別に枝分かれしていることが多いですが、昔は例えば湧き水の出るその場で村のみんなが飲み水を汲んだり料理の下ごしらえをしたり、洗濯も場合によっては入浴もしていたわけで、さらにいうともしかしたら発電もできるわけで、自給自足生活をやろうとすると、そういう生活の仕組みの統一感みたいなものがよみがえるような気がするんです。
 それから、社会的な分業によって失ってしまった切迫さみたいなものを取り戻すことが大事なんじゃないかという気持ちもあります。例えば水源から出てくる水に何かが混ざっていて人体に害を及ぼす可能性がある、と。その危険をとり除くのが浄水場の仕事で、そのおかげでわれわれの水は安全ですというのが現代社会の成り立ちですが、その構造というのはともすれば“山が汚れても、オレたちは大丈夫”という意識につながっている一面もあるように思います。でも、自分で山の小川から水を汲んできていたら、そういう危険が自分の身の安全と直結しますから山の汚染ということを切迫した問題として考えますよね。何をしても変わらない水道の水よりも、自分たちが積極的に関わって水源を良くすれば自分たちがもっといい水を飲めるような環境であれば意識はずいぶん変わるだろうし、自分自身がより生態系のなかに近づいていけるんじゃないかなあというふうにも思います。しかも、そういう環境とダイレクトにつながっている感じを楽しく実感できれば、それに越したことはないだろうし。

 というわけで、自給自足です(笑)。この「北山ハウス・プロジェクト」(仮)にとって今回の「高電圧直流給電システム」を見学できたことはすごく刺激的でしたし、実際にハウスメーカーなどでもこうした研究開発が進んでいるそうで、次はぜひそういうところにも出かけてみたいと思います。

 なんてことも考えつつ、来月にはまたソロ・ライブもありますから、そちらもお楽しみに。


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