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Vol.33 民主党が掲げたすごい目標について考える

  • 2009年10月8日

 

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
 いきなりですが、民主党政権になって1ヶ月が過ぎました。ここで政治の話をするつもりはまったくないですが、それでも「ぼんやり学会」は曲がりなりにもエコ連載なので(笑)、「2020年までに1990年比でCO2を25%削減する」という民主党政権の世界公約(!)には触れないわけにはいかないでしょう。
煙突  率直な感想としては“途方もないことを言うなあ”という感じがします。が、そういう高い目標を掲げてこそできることもありますから、それはそれでいいと思うんです。ただ、その目標の高さ以上に僕が気になるのは、問題がある意味ですり替えられているような印象を受けるということです。具体的に言えば、目標が数字になっていて、そればかりがアピールされていることが問題だと思います。言い換えれば、あの数値目標を達成することがより良い社会を実現するための取り組みなんだということとちゃんと結びつけて語られていないということが問題で、僕が認識している限りでは、その数値目標を達成するとどういうふうに社会が良くなるのかということがよくわからないんですよね。
 加えて、何のために、誰が、どういうリスクを背負って決定したものなのかということをもう少しちゃんと見せてほしいと思います。誰が、どういうことを根拠にその数字を出し、そのためにはどういう努力をしなきゃいけないのかということをしっかり示してほしい。これだけの大きな問題ですから、そのあたりのことも決して単純な話じゃないだろうと思うし、不確定要素も多いだろうと思うんです。だからこそ、後から「やっぱり間違ってました」というふうになってもいいから、「いま、わたしたちはこういうふうに考えているんです」とていねいに説明してほしいですよね。「誰々の責任でこうしたいんです。よろしくお願いします」という姿勢でないと、個人的には一緒にやって行く気にはなれないなあという気がします。「国際的にいいと言われていることなんだから」ということで、何の確認もなくやってしまおうとするのはずいぶん独裁的な感じさえします。
 整理すると、僕が望むことは2つです。この目標が設定されるに至った経緯をていねいに説明すること、そしてその目標が達成された先にはどういう社会の姿がイメージされているのかをしっかり示すということです。個人的には、現在のような閉塞感が高まっている世の中では未来のビジョンをしっかり示すということがとりわけ大事だと思います。今回の「CO2を25%削減」というのは約10年先までを踏まえた、言わば短期目標です。民主党の現状を考えれば、50年先、100年先のことなんて言えないのかもしれないけれど、僕の感覚で言えば、「今だからこそ民主党は100年の国計を考えます」と言うべきだと思います。それはすごく勇気のいることだとは思いますが、それでも今「100年の国計のタネを植える、民主党政権の間はとにかくタネを植えることを続けていくので、みんなで我慢しましょう」というようなメッセージを発したら伝説になるでしょ。そういうことをやってくれないかなあと期待しているんですが。
 それから、今の時点で懸念されることを先回りして2つあげておきます。ひとつは、排出権取引の問題です。僕は、排出権を買っても本質的には意味はないと考えています。排出権取引を使えば数字的な目標は達成しやすくなりますが、あれは自分たちが全然減らさなくても、例えば20%分買えれば、それで削減できたことにしていいという仕組みですから。そんなことをするくらいなら、そのための資金を20年後のための先行投資として技術開発にお金をまわしましょうとか、そういうことがなぜできないのかなと思います。
 もうひとつは、CO2削減が強く求められるあまり、“他のものをどんなに出してもCO2が減ればとにかくOK”というような状況になりそうで心配です。例えば「CO2削減のために原子力発電は必要だ」という考えがありますが、僕は原子力発電所のほうが温暖化なんかよりもはるかに怖いと思います。
 ただ、実際には“みんなが無理してがんばったものの実現できなくて終わる”というすごくションボリした未来像が思い浮かぶのも事実です。もちろん、目標を実現できなくても、ここでがんばることが後で効いてくるということもあると思うんですが、その場合もやはり今どういう形の未来を思い描いているのかということが重要になってくるでしょう。
この問題は、いろいろな場面で僕たちの生活に直接関わってくる問題だと思うので、ひき続き注目していきたいと思っています。


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