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Vol.125 最近の僕が学生と向き合うときのスタンスはこんな感じです。

  • 2013年7月4日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 7月になってしまいました。学生のみなさんはもう夏休みの計画を考えたりして盛り上がっている人もいると思います。僕も遊ぶのは大好きですが、でも今は自分が立ち上げたもろもろのプロジェクトがどれもちょうど転換期にあって、今年度中には次の展開が見えてくるようにしないといけないと考えているので、それどころじゃないという感じではあります。

 母校で行っている“うた”の授業も、前期だけの講座ですからそろそろ佳境に入っているわけですが、今年は昨年以上に学生から濃い反応が返ってきていて、僕自身かなり手応えを感じています。この講座は、うたを通して、自分が持っている感覚とどういうふうに向き合うかということのヒントを感じ取ってもらいたいというものですが、今年は意図的に5月までは正解のないところでずっと話を進めていきました。言い換えれば、「僕はこう思う」ということはほとんど言わずに、「君たちはどう思うの?」ということだけを問い続けたということです。それは多分「これは正しい、これはテストに出るから覚えてください」という形式に慣れている学生にとっては非常に辛い内容だったと思います。それでも僕がそういうやり方を選んだ理由のベースにあるのは、大学生を対象としたアカペラのワークショップで得た知識や経験で、授業はいわばその知識と経験を総合してバージョンアップしたものなんです。

 ここのところ、母校の慶応大学だけでなく、横浜を中心にいくつかの大学のアカペラ・サークルでワークショップを行うことがあって、先日もAWSの活動に参加している学生の要望に応えて、横浜市立大学のアカペラ・サークルで2時間半のワークショップを行いました。そこでも、正解は提示せず、どういうふうに考え、どういうふうにアプローチすればいいかについての提案を出し続けるというスタンスで臨み、僕自身いろんな発見があったんですが、それとは別に個人的に目を引いたのはそこからAWSへ参加した学生がすごくたくさんいたということです。おかげで、AWSとして出かけていくためのワークショップやクリニックを始める時期なのかもしれないということも考え始めました。そういう状況も含め、僕がAWSを立ち上げた気持ちややりたいことがじわじわ広がっている感触はあるし、参加者が増えていることはうれしいことです。ただ、いろんな人がいるから、その一人ひとりのキャラクターとしっかり向き合いながらやっていかないといけないということを考えると、僕自身がやれる規模は多く見積もっても100人くらいまでかなと思っているところです。

 それはともかく、この連載のスタッフからも聞かれたので、ワークショップからAWSへの参加者が増えた理由を僕なりにちょっと考えてみたました。

 ワークショップではAWSへの参加につながるような意識付けは一切していないし、社会貢献に関する話もしていないし、そもそもAWSへの参加につなげることがワークショップの目標というわけではありません。そういうなかで、その参加者増の理由を敢えて探せば、僕が何も押し付けなかったのが良かったのかもしれないと思うんです。僕はいつでも、「これが正しいんです」ということをひとつも提示せずに、歌いたいという欲求や何かの悩みを抱えている学生に対して、「こういうふうに考えてみるのはどうだろう?」とか「○○とか△△とかあるなかで、そのどれかを選んでみるのはどうか?」というふうにいろんな提案をし続けました。一般に社会貢献の取り組みというのは世の中では正しいこととして捉えられているでしょうし、その文脈のなかで僕自身も正しいことをやっている堅い人だと思われているところがあるように感じています。でも、ワークショップでの僕は、基本的には “アカペラを歌うというのはそもそもどういうことなのか?”とか“ハーモニーとはどういうことなのか?”ということをいっしょに考える仲間であるという立場に立っています。だから、“そういう男が始めた取り組みだったら、自分も馴染めるんじゃないか、何かやれるんじゃないか”と思ってAWSに興味を持ってくれたんじゃないかなというのが僕の推測です。まあ、全然違ってるかもしれませんが(笑)。

 ただ、“アカペラを歌うというのはそもそもどういうことなのか?”とか“ハーモニーとはどういうことなのか?”ということについて考えることで、人間関係や自分のあり方についてのいろんな葛藤を乗り越えるヒントをつかめるということは確かにあると思うんですよね。次回は、そのあたりをもう少し踏み込んで書きたいと思います。どうぞお楽しみに。


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