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Vol.37 初夏の尾瀬

  • 2013年6月27日

 先日父に誘われて、初めて尾瀬に行ってきました。尾瀬は雪解けのあとに水芭蕉の咲く春、ニッコウキスゲなどの高山植物が一気に咲く夏、足下の草もみじと遠くの紅葉で色合いが楽しめる秋と、いろんな味わい方があるそうです。今回は6月のはじめに訪れたのですが、尾瀬は涼しいところなので、楽しみ方を季節で分けるとまだまだ春です。
 まず車で戸倉というところまで行き、そこからは環境保護のためにマイカー規制がかかっているので、バスに乗り換えて鳩待峠まで登っていきました。そこで昼食を食べ、1時間ほど山を下っていくと、山の鼻というところに出ます。その先はず〜っと、尾瀬の湿原です。あの「夏の思い出」の歌の通り、水芭蕉の花がたくさん咲いていました。水のなかで揺れながら咲いている花もあって、水中花の持つ独特のロマンを感じました。

 よく「一度尾瀬に行くと病みつきになる」といいます。湿原のパノラマの真ん中の、どこまでも続く細長い木道の上に立ってみて、その本当の意味が分かった気がしました。湿原を白いふちで飾り立てるように群生している白樺や、白樺に似たダケカンバ。その向こうの西と東にそびえる、それぞれが対照的な雄大さ持つ、至仏山(しぶつさん)と燧ヶ岳(ひうちがたけ)。景色だけをとっても、尾瀬という舞台は何重もの仕掛けが施されているのです。
 いろんな植物にも出会いました。木道の隙間に咲いていた黄色いリュウキンカ、ミニチュアの曼珠沙華のようなショウジョウバカマ、探して探してやっと見つけたお地蔵さまのようなザゼンソウ、桜のなかでは遅咲きのチシマザクラ。ほかにはワタスゲ、チングルマ、オオバキスミレ、レンゲツツジ、フキノトウ、サンカヨウ、オオカメノキなどなど。

 人のいない場所で鳥や蛙の声を録音したので、いろんな生き物も印象に残っています。冷たく透き通った池にはアカハライモリがたくさん泳いでいましたね。赤いお腹を見せてくれるのは、水面でターンをしたときだけなので、その瞬間を見るのが難しかったです。

 今回の旅ではあまり歩かず、湿原の中ほどの竜宮小屋というところで一泊しました。尾瀬にはたくさんの小川が流れているのですが、ときどきその小川が姿を消して、まったく違うところから流れ出ているのを見ることがあります。それは、小川のトンネルが幾つもあるからなのだそうで、その中のひとつを竜宮と呼ぶそうです。
 夜はかすかな電波を頼りに東京と連絡を取り合ったりしながら、就寝時間まで仕事をしてしまいました。仕事を置いてこれない、いつも時間に追われている都会人のような気分のまま、そして満天の星をうっかり見ないまま眠りました。
 その代わり早朝の霧の立ちこめる、静かなダケカンバの森を散策できたのが良かったです。昔の人はダケカンバの幹の皮の裏側に恋文を書いたそうで、、、。寡黙な尾瀬も、なかなかやるもんです。

 朝食のあとはその霧が嘘だったかのような晴天。今回は梅雨入りしたあとにも関わらず、運良く天気に恵まれた二日間でした。でも雨に濡れながらもくもくと歩く湿原の旅も楽しそう。今度は違う季節に訪れてみたいと思います。父も帰りの木道の上ですでに、一緒に行く次の旅を考えているようでした。




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