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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第59回 バイオエネルギーと生物多様性〜社会公正の視点から

  • 2008年12月11日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

特集/バイオ燃料・森林減少防止は気候変動対策となるか?〜G8環境大臣会合に向けた国際市民フォーラムより 第1特集/バイオ燃料は気候変動対策か? バイオエネルギーと生物多様性〜社会公正の視点から サウィット・ウォッチ ノーマン・ジワンさん

無断転載禁じます

 インドネシアには世界に現存する熱帯雨林の10%、植物種のうち10%、ほ乳類の12%、爬虫類の16%、鳥類の17%が存在しています。
 パーム油はインドネシアの自生種ではなく、1848年にオランダ人によって輸入されました。1911年初の大規模商業農園が開設され、2007年12月時点で730万haのアブラヤシ農園が存在しています。
 インドネシア政府の試算によると、2020年に生産されるディーゼルの少なくとも20%がバイオ燃料から得られるとしています。
 また、先進国の需要が7,100万tに達することが予想されているほか、EU(欧州連合)は2010年までに最低5.75%のバイオ燃料の利用を決定しています。
 政府の政策としては、規模の大きな農園を採用する開発手法をとるほか、森林を農園に転換することを考えています。また、大統領命令を発令し、11の省庁から成るチームをつくり、バイオ燃料の調達計画をこれから執行しようとしています。

自然を貪る

 エタノール、ヤトロファ(ナンヨウアブラギリ)も推進されていますが、産業として確立されているのは、今のところパーム油産業だけです。しかし、パーム油を調達するために、原生林を伐採し、農園に転換しようとすると、地元の人びとのすみかを奪うことになるほか、森林火災の発生、泥炭地の排水やその農地への転換、パーム油工場からの汚染、農薬の利用などの問題があります。また、513件ほどの紛争が現在も続いており、コミュニティと先住民に影響を与えています。
 例えば、西カリマンタン州政府はこれから10年で500万haをアブラヤシ用に開放しようとしています。しかし、地元にとって、土地利用は食糧安全保障が第一となるはずで、地元の人びとの自治権の問題にもつながります。自分たちの食糧を手にする権利があるのです。
 日本との関係は消費だけではありません。インドネシアのパーム農園に日本の銀行から2億4,100万ドルほどが投資されています。先住民族との交渉なしに、違法な形で土地を接収し、環境アセスメントも行われないままに、パーム農園の開発を行っている企業に投資されていたことがわかりました。

市民社会の視点から

 HSMをより実用化するために、HSMを構成する6カテゴリの相対的重視度の評価を行いました。
 森林伐採や農地への転換、排水、現地の人びとの食料問題などさまざまな問題がありますが、言葉だけでなく実際に実施される合意にどのように結びつけるのか。
 バイオ燃料を購入する人たちに、まず消費を減らすことが最初の要求になります。消費を減らさない限り、どんどん農地の拡大は進んでしまいます。また、きちんと製品を選んで購入することも重要です。持続可能な原料を使っている製品、生物多様性を考慮していることが確認できる製品を買うのです。
 また、市場・消費者もローカルなコミュニティや先住民族に対して説明責任を負っていることを認識しなければなりません。現在のグローバルな森林破壊に対してきちんとした行動をとり、社会正義を実現する必要があります。気候変動を改善していくためには、社会正義という観点を忘れてはいけないと思います。
 私の所属するサウィット・ウォッチとして勧告したいことは、エコロジカルフットプリントに関する即時の拘束力あるコントロールが必要だということです。
 また、消費圧力を減少させること、森林・泥炭地の減少や転換、マイナスの影響を減らすことです。技術と情報を駆使すること、ローカルなコミュニティに力を持たせることも重要です。気候変動などの影響ですでに農業のやり方が変わってきています。
 現在進行中の社会危機に対する緊急の拘束力のある行動をとること。違反行為に対する是正措置をとること。土地の接収などが違法な形で行われたのであれば、地元の人に返すという改善策が必要になります。また、効果的な社会的説明責任を追求するためのメカニズムを採用しなければなりません。プラスの相互作用により、さらに持続可能な開発へとつなげていくことが重要です。国際的な開発計画や技術協力プログラムは人権に基づいたアプローチを採用すること、経済協力や二国間合意などもあります。
 先住民族や被影響住民の社会的・経済的・文化的権利が搾取されてきた状況を、もし何か問題があれば直ちに是正しなければなりません。そして人権に基づいたアプローチをとらなければ、やはり公平なき開発は搾取となってしまいます。

(グローバルネット:2008年6月号より)


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