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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第43回 ライフスタイルを変えるソフト的なCDMの実現に向けて

  • 2007年8月9日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

特集/日・中・韓3ヵ国でCO2ダイエット宣言の実施へ
〜20%クラブ日中韓ワークショップin葛巻町より
ライフスタイルを変えるソフト的なCDMの実現に向けて
(財)地球・人間環境フォーラム
中村 洋

無断転載禁じます

 岩手県葛巻町で、同町と「持続可能な都市のための20%クラブ」(事務局:地球・人間環境フォーラム、以下20%クラブ)が主催し、「温暖化対策と地域活性化を両立させる市民参画型の国際協力」と題したワークショップが、2006年10月29〜30日に開催された。日本・中国・韓国で温暖化防止活動を推進する自治体やNPO、企業等の代表約50人が参加し、温暖化防止のための国際協力を具体化する議論が行われた。

COP/MOP1で議論された新しい国際協力のかたち

 これまで20%クラブは、自治体間の国際協力を推進するために、国際会議の開催や最新の取り組みの情報を提供することで、側面的な支援を行ってきた。しかし、地球環境問題で国際協力をしても、自治体に直接的なメリットが少ないため、役所内部や地域住民に事業を行う意義について理解が得られないことが多かった。

 しかし、国際的な枠組みの中で温暖化対策を検討する「第1回京都議定書に関する締約国会合」(COP/MOP1、2005年11月、モントリオール)で、自治体やNPOが有する二酸化炭素(CO2)削減のノウハウを活かした国際協力もクリーン開発メカニズム(CDM)となる可能性が出てきた。道のりは厳しいながらも、この枠組みを活用できれば、温暖化防止のために協力した自治体やNPOも排出枠を獲得でき、そのクレジットを活用することで直接的なメリットを生み出せる。

ボトムアップアプローチによるCDMの必要性

 ワークショップでは、3ヵ国の自治体やNPOが取り組んできた地域レベルでの温暖化対策を活かした国際協力をCDMにできるかどうか、そのプロジェクトの具体化を目指し、活発な議論が行われた。

 自治体やNPOにとっては、なじみの薄いCDMというテーマであったにも関わらず、中国や韓国の自治体やNPOから地域のニーズや特性を活かしたさまざまな提案がなされた。

 中国の環境NGO・環境友好公益協会からは、中国各地の地方政府やNPOから情報を集め、北京、南京、上海の家庭での省エネルギー活動や黒龍江省や雲南省でのバイオマス利用の促進等の提案が、韓国最大の環境NPO・韓国環境運動連合(KFEM)からは、メタンガスの排出抑制や家庭レベルでの省エネルギー活動の推進が提案された。中国福建省東山県からは、太陽熱温水器を活用した石炭等の利用削減が、韓国光州市からは、廃棄物の資源化、太陽光発電の普及、省エネルギー型照明の普及、地域での省エネルギー活動の推進など具体的な提案がなされた。

 環境友好公益協会の李力会長は、「中国では第10期5ヵ年計画のうち目標を達成できなかったのは環境保護のみでした。そのため、第11期5ヵ年計画では、政府は環境保護に力を入れています。省エネルギー活動の普及のためにNPOに協力を求めた省もあります。このようなことは初めてです」と、中国でも地域レベルの環境改善活動にNPOへの期待が高まっていることが報告された。

 KFEMの金氏からは、「韓国では、これまで家畜のふん尿の60%が海洋投棄されていました。しかし、海洋汚染の問題もあり2011年より全面禁止になります。この問題と温暖化を解決するために畜産バイオマスによる国際協力が求められています」と報告があった。

地域レベルでの温暖化防止協力の具体化

 さまざまな議論が行われる中で、「CDMの実現に向けて情報共有をしたい」「20%クラブのような団体に協力する形であれば、協力しやすい」という意見が出された。そのため、20%クラブは「日・中・韓地域CDMネットワーク(仮)」の設立を提案した。環境友好公益協会(中国)、KFEM(韓国)と20%クラブ(日本)が中心となり、中国・韓国の各地で温暖化防止協力に対するニーズを掘り起こし、日本で協力できる団体を探し出し、具体化させようとするものである。

 さらに、ネットワークの手始めの活動として、家庭での省エネルギー活動と植林を組み合わせた「CO2ダイエット宣言」(事務局:東京電力)を東京電力の支援を受け、中国で実施することとなった。

 この活動は3年前から日本で始まったもので、個人や団体が省エネルギー活動への参加を宣言すると、20人につき1本の苗木が小学校等にプレゼントされるもので、40万人が参加している。多くの市民に呼びかけた世田谷区からは、同区が活動で得られた苗木を中国や韓国での活動のために役立てて欲しいという提案もなされた。

「CO2ダイエット北京宣言」の始動

今年1月に北京地質大学で開催された「CO2ダイエット北京宣言」のワークショップの様子

今年1月に北京地質大学で開催された「CO2ダイエット北京宣言」のワークショップの様子

 ワークショップの成果を受け、環境友好公益協会と20%クラブが調整を重ね、北京市海淀区にある北京地質大学の社区(2,650世帯、7,000人)を対象として、今年から「二酸化炭素減肥宣言北京活動」を実施することとなった。

 その準備会合として、1月27日に北京地質大学付属中学校において、同協会と東京電力、20%クラブが主催して「二酸化炭素減肥宣言北京活動検討会」が、社区の住民、北京市内の大学生など約30人の参加を得て開催された。

 ワークショップでは、CO2ダイエット宣言のメニューの検討が行われた。「フィルターの掃除をする」「エアコンの設定温度を冬は18℃、夏は26℃に設定する」等の中国でも普及しつつあるエアコンに関するメニューや、「水を流しっぱなしにしない」「すすぎ用の水を再利用する」等の省エネメニューが作成された。

 また、プログラム型CDMの可能性を調査するために、CO2ダイエット宣言による削減効果を計測する方法についての議論も行われた。北京市では、プリペイドカードを各家庭の分電盤に差込み、電気代を支払う方法を採用しているため、月単位の家庭での電気使用量を厳密に把握することが難しい。そのため、1,000世帯から100世帯程度のモニターを選び、アンケート調査と週単位の電気使用量の変化を大学生の協力を得て調査することとなった。このような調査に対して、海淀区の電気部署の担当者も協力を申し出た。

ソフト的CDMの実現に向けて

 韓国でも、光州市やKFEMがCO2ダイエット宣言に非常に興味を持っており、日中韓が協力し、地域レベルの温暖化防止活動を広めることを目標としている。

 現在、中国で白熱灯から蛍光灯への買い替え促進など家庭レベルでの省エネ・CO2削減活動を、CDMの枠組みで進展させることを目指したプロジェクトが進みつつある。施設の設置等のハード的なCDMが現在は主流であるが、そのようなハード面の取り組みをより効果的に運用し、波及効果を高め、地域ぐるみでの面的なCO2削減に結びつけるためには、一人ひとりの意識や行動を変えるソフト的な取り組みもCDMに取り込むことが必要だと考えている。

 日本では、自治体やNPOが、ライフスタイルを変えるための工夫や仕組みづくり、効果的な普及・啓発活動を行い、さまざまな知見や経験を蓄積してきた。将来的には、このようなライフスタイルを変えるソフト的なCDMを実現することが、地域レベルの国際協力をより発展させると期待している。

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