世界最大のダム、満タンになると地球の自転を遅くしてしまう

  • 2025年5月25日
  • Gizmodo Japan

世界最大のダム、満タンになると地球の自転を遅くしてしまう
Image: isabel kendzior / Shutterstock

人間は無力ではないと確信。

中国の巨大ダムが、地球の自転を人間が気づかないくらいほんのちょっとだけ遅らせているそうですよ。

巨大ダムが地球の自転に影響?

NASA(アメリカ航空宇宙局)の2005年の報告によれば、中国湖北省にある「三峡ダム」は、世界最大級の水力発電ダムとして知られていますが、このダムは満水時に約40立方kmの水を蓄えられるそうです。オリンピックサイズのプール1,600万倍、琵琶湖およそ1450杯分になります。デカい。

この膨大な水の移動によって、地球の形は赤道がわずかにふくらみ、極地域が平ら気味に変形し、1日の長さが0.06マイクロ秒長くなる可能性があるとのことです。

たったそれだけ?と思うかもしれません。でも、これはたとえるなら、フィギュアスケーターが腕を広げてスピンの速度を調整するようなもので、三峡ダムという「腕の動き」が、地球という「スケーター」の回転に影響しているという話なのだそうです。

NASAゴダード宇宙飛行センターのBenjamin Fong Chao博士によれば、車の運転のようになんでもなさそうな行為でさえ、地球に微妙な影響を与える可能性があるのだとか。三峡ダムは、人間の活動が意図せずに地球の自然な力学を変化させてしまう好例といえます。

ちなみに、0.06マイクロ秒は、わずか約1666万分の1秒。ストップウォッチで計測できないくらいの短い一瞬で、地球の赤道は約28マイクロメートル(平均的な人間の髪の毛の半分以下)回転します。光ならその間に18メートル進んでしまうという、わかるようなわからないような、なんとも不思議なスケール感。

氷床が解けても自転が遅くなる

それでもやっぱり、人工物ひとつで地球の自転速度を変化させるなんてすごい話です。そういえば、「つくる」以外にも、人間は地球の自転に影響を与えちゃってます。

人間活動に起因する温室効果ガス排出によって南極大陸やグリーンランドの氷床が急速に解けていますが、それが原因で、2000年以降に100年あたり約1.33ミリ秒というハイペースで日が長くなっているとNASAが報告しています。氷が解けて重たい水が赤道付近へ移動することで、地球の自転に影響してしまうそうです。

つまり、三峡ダムのような超巨大建造物をつくらなくても、あるものをなくすだけで地球の自転に影響を与えられるというわけです。これまた人間ってすごい。

三峡ダムが中国全体の電力需要に占める割合はわずか3%にすぎませんが、その存在は単なる発電設備以上の意味を持っているようです。国家の技術力を象徴するインフラであると同時に、私たちの文明が惑星そのものに影響を及ぼすという現実を象徴しています。

人間はちっぽけな存在ではない

人間がつくる構造物が自然のリズムにさえ影響を与えるようになったいま、いっそのこと何をすればどれくらい地球の自転を遅くしたり速くしたりできるのかいろいろ試してみればいいじゃん、なんて冗談のひとつも言いたくなってきます。

ところで、どうすればできるのかは正直ぜんぜんわかりませんが、三峡ダムの真裏あたりに自転を0.06マイクロ秒速める何かをつくれば、ちょうどバランスがとれるような気も……しません?

Source: Sustainability Times, NASA

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