着陸が苦手だった「ハチロボット」、しなやかな4本脚をゲットしてふんわり着陸を実現

  • 2025年4月22日
  • Gizmodo Japan

着陸が苦手だった「ハチロボット」、しなやかな4本脚をゲットしてふんわり着陸を実現
Image: Harvard University

見かけたら怪しいドローンじゃないかと思って警察に通報してしまいそう。さすがに殺虫剤はかけないと思うけど…。

未来のある日、小さなロボットのハチたちがリアルなハチと一緒に花畑を飛び回って、花粉の媒介を手伝う。ハーバード大学マイクロロボティクス研究所は、そんな風景を思い描いて長年研究を続けてきました。

でも、その夢の実現を妨げる大きな壁がありました。というのも、ハーバード大学の「RoboBee(ハチロボット)」は、不時着しかできなかったそうなのです。

ガガンボをヒントに着陸用の脚を装着

ハーバード大学の研究チームは今回、小さなRoboBeeにガガンボ(カトンボやアシナガトンボとも呼ばれています)の脚から着想を得た、長くてしなやかな4本の着陸用アームを取り付けました。

軟着陸できるようになったことで、環境モニタリングや災害の監視、人工授粉などの用途において、RoboBeeは実用化に一歩近づいたといいます。今のところはまだSFみたいな話かもしれませんが、そう遠くない未来に実現しちゃうかもしれません。

この改良については、科学誌Science Roboticsに発表された研究論文で詳しく紹介されています。

今回の研究の共著者で、ハーバード大学工学応用科学部の博士課程に在籍するクリスチャン・チャン氏は、大学のプレスリリースで次のように説明しています。

以前は、着陸の際に地面から少し浮いたところでロボットの電源を切ってそのまま落下させ、うまく直立して安全に着地してくれるよう祈るしかありませんでした。

博物館のデータベースから着想を得たデザイン

Image: Harvard University

ハーバード大学のロバート・ウッド工学・応用化学教授が率いるチャン氏らの研究チームは、同大学の比較動物学博物館のデータベースから、新しい着陸スタイルのヒントを探しました。

そして、最終的にガガンボの体の構造を参考にして、軟着陸できるようRoboBeeに関節付きの長い脚を4本装着したといいます。

また、ロボットの「脳」にあたるコントローラーを改良し、着陸時の減速性能を向上させたといいます。これらの改良によって、ふんわりした着陸が実現したと声明で報告しています。

安定した着陸を目指して

これまでのバージョンは、羽ばたきで生じる空気の渦が地面近くで不安定さを生むため、制御された着陸が難しかったそうです。これはヘリコプターでも発生する「地面効果」と呼ばれる現象ですが、RoboBeeは重さ約0.1gで翼幅が約3cmと非常に小さいため、より難しいとのこと。

ハーバード大学の元博士研究員で、現在はパデュー大学電気・コンピューター工学部で助教授を務め、研究の主執筆者であるNak-seung Patrick Hyun氏は、こう説明します。

飛行体が安全に着地するには、接地前に速度を最小限に抑え、着地後に素早くエネルギーを逃がすことが不可欠です。RoboBeeのような小さな翼の羽ばたきでも、表面付近を飛行する際には、地面効果の影響を無視することはできませんし、着地後に跳ねたり転がったりすると、状況はさらに悪くなる恐れがあります。

Hyun氏は、固い地面と葉の両方を使って、RoboBeeの着陸を検証したそうです。

Image: Harvard University

上の画像の離着陸の様子は、以下の動画(7秒〜20秒)でも確認できます。

ガガンボの脚と改良コントローラーは、RoboBeeの壊れやすい圧電アクチュエーター(電圧を加えると伸縮する特殊素材を用いた超小型駆動装置で、RoboBeeの筋肉にあたる部品)を守る役割も果たしているそう。

研究チームは論文のなかで、次のように説明しています。

マイクロロボット用の圧電アクチュエーターが抱える主な課題は、その壊れやすさと衝撃に対する低い破壊靱性(素材の破壊に対する抵抗力)です。柔軟性のある脚は、不時着時の衝突からこのデリケートな部品を守るのに役立ちます。

研究チームは今後、RoboBeeのセンサー・動力・制御それぞれに自律性を持たせることを目指しているそうです。つまり、RoboBeeは自分で周囲の状況を感知して、自力で飛んで、状況に応じて行動を決定するようになると。

もしもRobobeeがこの三種の神器を手に入れることができれば、絵空事のように思える実用化も現実味を帯びてきそうですね。

でも、地域によっては減少が著しいミツバチなどの花粉媒介者をカバーするには、かなり大量のRoboBeeが必要になりそう…。

Reference: Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences / YouTube

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