イルカと話せる日が来るかも…Googleがイルカ語を解析するAIを開発

  • 2025年4月22日
  • Gizmodo Japan

イルカと話せる日が来るかも…Googleがイルカ語を解析するAIを開発
Image: Google / YouTube

海にいるイルカと地上から話せるようになったらいいのに(泳げないのよ)…。

もしイルカが「言葉」を持っていたとしたら、会話ができるのでは? Google(グーグル)と研究者たちは、長年の問いに本気で挑んでいます。

40年分のデータでAIがイルカの会話を解析

AIがイルカの「おしゃべり」を理解して、そしていつか「会話」ができるようになるかも。そんな未来を目指して、Googleは野生のイルカから集めた音声データをもとに、新たなAIモデル「DolphinGemma(ドルフィン・ジェンマ)」を開発しました。

このプロジェクトの主役は、大西洋に生息するタイセイヨウマダライルカたち。1985年から彼らの行動を観察してきたWild Dolphin Project(WDP)の研究者たちは、40年にわたって水中映像と音声を記録し続け、イルカが発するクリック音やホイッスル、バーストパルスなどの複雑な音と行動の関連性を丁寧に解読してきたそうです。

Image: Google

例えば上の画像は、エサを食べ終わった子イルカを、母イルカが名前のような「ホイッスル」を使って呼び戻す際に発する音のスペクトログラフを表示しています。

その他にも、ケンカのときに使う「スクォーク」、サメを追いかけるときや求愛時に発せられる「バズ」などを理解しようと研究が続けられています。音と意味の関係を理解するには、どの個体がどんな状況でどんな音を出しているかを正確に把握する必要があるといいます。

人間の言語モデルが「イルカ語」に応用される時代

WDPの観察データをもとに、Googleは約4億のパラメータを持つ音声特化型のAIモデルDolphinGemmaを開発。

Googleの音声技術「SoundStream」でイルカの音をトークン化し、人間の言語モデルと同じようにイルカの話し方のクセを大量に覚え込ませることで、「たぶん次はこの音が来るはず」と予測するシステムだそう。

このAIモデルは、野外での運用にも適していて、WDPが現場で使っているGoogle Pixel上でも動作可能とのこと。まさにイルカの声をその場で翻訳できるAIになるかもしれませんね。

「会話」の第一歩は遊び道具のリクエスト?

さらにWDPとジョージア工科大学が共同開発した「CHAT(Cetacean Hearing Augmentation Telemetry: 鯨類聴覚増強テレメトリー)」システムもこの研究を支えています。

CHATは人工的なホイッスルと、イルカが好きな物体(海藻や研究者のスカーフなど)を関連付けて学ばせるシステムで、イルカがそれらの音を真似することで、「リクエスト」を伝えてくる可能性を探っているそうです。

下の動画では、スカーフをどのようにしてイルカに学ばせて、イルカが真似をするようになるかを説明しています。日本語字幕をオンにしてご覧ください。

CHATではPixelがリアルタイムでイルカの音を解析し、どの音が模倣されたかを瞬時に特定。その情報を骨伝導ヘッドホンで研究者に伝えることで、すぐに正しい物を提供するという双方向のやりとりを目指しているとのこと。カナヅチだけど試してみたい。カナヅチだけど。

研究者に向けたオープンなツールへ

DolphinGemmaは、2025年夏に研究者向けにオープンモデルとして公開される予定です。Googleは「世界中の研究者が自分たちの音声データを分析し、パターンの発見を加速し、これらの知的な海洋哺乳類への理解をともに深めていくことを願っています」と述べています。

また、モデルをオープン化することで、ファインチューニングすれば、バンドウイルカやハシナガイルカなど、他のクジラ類を研究する科学者にも役立つのではないかと期待しているそうです。

ちょっと待って。AIが種の異なるクジラ類の通訳をする日が来るかも?

もちろん、いますぐイルカと世間話ができるわけではありません。でも、DolphineGemmaという「通訳」の卵が生まれたことで、人間とイルカが本当に理解し合える日が、ほんの少しだけ近づいたのかもしれません。

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Source: Google

Reference: Wild Dolphin Project(WDP), Google / YouTube (1, 2)

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