群雄割拠、切磋琢磨。
AMDが最新のグラフィックボード「Radeon RX 9070」をリリースしました。価格は550ドル。米Gizmodoの記事でも詳しく紹介されています。Radeon RX 9070の作りは堅牢で、デスクトップPC向けの4Kシナリオにも対応可能。ただ、もっともその真価を実感できるのは、ゲームを1440pでプレイしたときかもしれません。
実のところ、RX 9070の競合相手は、NVIDIA社製品ではありません。同じくAMDが600ドルで展開する上位版のRadeon RX 9070 XTは、金額のちがいを大きく上回る性能アップを実現。XTの価格が跳ね上がったりしない限り、迷わず600ドルの上位版を選ぶことをおすすめします。
Radeon RX 9070は、解像度4K未満のゲームや、集中的なグラフィック処理を必要とするレンダリングタスクに適した、比較的堅実なGPU。
先だって発売されたNVIDIA GeForce RTX 5070のレビューでも同じ文言を目にされたかもしれませんが、両者はメーカー希望価格もほぼ同等。私たちのテストではRX 9070のほうが合成ベンチマークと一部のゲームで優勢。PCはアップグレードしたいけど、NVIDIAは在庫がない…と嘆いているPCゲーマにとってはかなりの朗報かも。
たしかに性能自体はNVIDIAより優れていますが、4Kに対応させようとゲーム内設定をいじるのは面倒と感じてしまうかも。DLSS 4とマルチフレーム生成機能が必要かどうか、など、それぞれの性能をしっかり見極めてから、NVIDIAとAMDのどちらを選ぶか考えた方がよさそうです。
AMD独自のアップスケーリング・ソフトウェア技術FidelityFX Super Resolution 4(FFSR 4)は大幅に性能アップしているので、シングルプレイヤーのゲームが好きで、リフレッシュレートの高いモニターをお持ちの方は、AMD版がおすすめかも。
上位のRadeon RX 9070 XTはNvidiaのRTX 5070 Tiと機能は同等ですが、希望小売価格は150ドル安め。RX 9070は、550ドルという価格でありながら、いくつかのベンチマークやゲームでNvidiaの最新GPU RTX 5070を上回る性能を発揮しています。それでもGPUにあまりお金をかけたくないのであれば、買うのはちょっと待った方がいいかもしれません。
以下で詳しく解説していきます!
AMDの新しいグラフィックボードは、同社が最近発表したRDNA 4アーキテクチャで動作します。これは、ボードのレイトレーシング機能のスピードとパフォーマンスを向上させる最新のパイプラインを備えた、RDNA 3のアップグレード版。
NVIDIAのBlackwellアーキテクチャとは異なり、AMDのRDNAアーキテクチャは「コンピューティングユニット」で動作します。AMDは、「最新のコンピューティングユニットは前世代よりも効率的で、各パッケージ内にそれほど多くのユニットがなくても全体のパフォーマンスが向上する」と主張しています。
仕様面の特徴RX 9070のVRAM仕様は9070 XTと同じで、メモリ帯域幅が644.6GB/秒の16GB GDDR6 VRAMを搭載しています。RTX 5070の12 GB GDDR7と比較すると、AMDのカードは高解像度に対応する余裕がありますが、他のスペックが足を引っ張っている印象。
RX 9070のコンピューティングユニットは56基で、RX 9070 XTは64基。RX 9070には112個のAIアクセラレータが搭載されていますが、9070XTにはさらに16個が追加されています。50ドル安い分、ブーストクロックは9070 XTの2.97から2.51にスピードダウン。
Radeon RX 9070の消費電力は220Wと、XTの304Wより抑えめ。AMDはRX 9070に最低550Wの電源を推奨していますが、デスクトップをゼロから構築するのであれば、将来の使い勝手やアップグレードのために700Wの電源を選ぶ方が良いでしょう。ちなみに、Radeon RX 9070 XTでは700Wが推奨されえています。
AMDからレビュー用に入手したのは、Acer Nitro Radeon RX 9070 16GBグラフィックボード。これは、市場に出回っている他のボード同様、一般的な2スロット、3ファンのGPU構成。でも、仕事はきちんとこなします。筆者のOrigin PC Neuron 3500Xの内部では、非常に静かでした。
ボードには3つのDisplayPort 2.1ポートとHDMI 2.1ポートが1つ搭載されています。Acer Intelligence Spaceのようなメーカー製ソフトウェアは必要なく、カードを差し込んだ際に不要なソフトが自動的にインストールされることもありませんでした。
ただし、NVIDIAとは異なり、AMDはファーストパーティーによる純正のグラフィックボードを提供していないため、ボードによってレイアウトや熱など、技術面での差があります。
また、AMDはGPUへの電力供給にデュアル8ピン電源コネクタを採用。少なくとも、RTX 5090のような電源コネクタ溶解問題のことは忘れて良さそう。12VHPWRケーブル1本ではなく、2つの電源コネクタを接続することについては、不満を言う必要もないでしょう。
AMDとNVIDIAのベンチマークを、同じPCで比較してみました。CPUはIntel Core Ultra 9 285K、RAMは32GBのDDR5、6400MT/sというスペック。NVIDIA GeForce RTX 5090とRTX 5080にも対応できたので、550ドルのRX 9070はまったく問題なく利用可能。
ベンチマークではAMDのほうが、かなり好感触。3D MarkとGeekbench AIでは、レイトレーシング機能が重視されるケースなど、複数のシナリオでRX 9070がNVIDIAのRTX 5070を上回っていました。
ゲームもAIもベンチマークでは上をいくまずはゲーム系のベンチマーク結果から(いずれも主に描画性能を測るものです)。リアルタイムレイトレーシングのベンチマークである3D Mark Port Royalでは、RX 5070の13835に対し、RX 9070は17819を記録。また、3D Mark Speed Wayテストでは5070と同等、3D Mark Steel NomadではNVIDIAを900ポイント引き離しました。
AI性能に関しても、ベンチマークではAMDのカードがNVIDIAを大きく上回り、AIがNVIDIAの主力だと考えると、なんとも皮肉。Radeon RX 9070は、Geekbench AIで25961の定量スコアを記録。750ドルのRTX 5070 Tiより4000ポイント近く高いスコアですが、RX 9070 XTにはわずか684ポイント及びませんでした。
FSRが使えるゲームで強いゲームでは、各AI処理ユニットの性能そのものも大事ですが、グラフィックボードのメーカーがそれをどのように活用するか、のほうがはるかに重要です。AMDのFSRアップスケーラーの改善については後述しますが、本当に知りたいのは「RX 9070がゲーム内でどのようなパフォーマンスを発揮するか」です。
当社のテストでは、Radeon RX 9070が『Horizon Zero Dawn: Remastered』など、一部のゲームでRTX 5070を凌駕し、アップスケーリングすることなく4Kで89 FPS、「バランス」モードのFSRで116 FPSを記録しました。これもRTX 5070 Tiを上回っています。
『サイバーパンク 2077』に関しては、RX 9070は4Kで約18 FPSで、RTX 5070よりもわずか1〜2 FPS下回っていました。AMDの前世代アップスケーリング技術FSR 3を使用した場合でも、RX 9070はベンチマークで44 FPSとなり、NVIDIAの最新バージョンのアップスケーラーで動作するRTX 5070の43 FPSをわずかに上回りました。
1080pでも、RX 9070のほうがRTX 5070よりかなり強力で、「バランス」モードのアップスケーリングでNVIDIAは110 FPSでしたが、こちらは120 FPSを記録しました。
ただ、ゲームタイトルとの相性があり、FSR対応作も多くないRX 9070 XTのレビューですでにお話ししたように、『黒神話:悟空』はAMDのカードとあまり相性は良くないようです。きっと、NVIDIAの同価格帯GPUに及ばない、あるいは勝てないゲームは他にもあるでしょう。
たとえば、『Alan Wake 2』でFSR 2を有効にして、レイトレーシング設定をすべてオフにした場合、4Kで60 FPSにも達しません。レイトレーシングをオンにすると、フレームレートは30台半ばから後半になりました。
FSR 4をサポートするゲームは数少ないですが、AMDの最新グラフィックボードで優れた性能を発揮するものもあります。Marvelの『Spider-Man 2』は、レイトレーシング設定をHighにしても、60FPSを超えました。『スター・ウォーズ 無法者たち』では、FSR 3設定を有効にすると、平均80〜90 FPSを達成し、レイトレーシングをオンにしても大きな影響はありませんでした。
ただ、一部のゲームでは画面がカクカクする「ヒッチング」などの問題も発生。AMDからこの点に関する明確な説明はありませんでした。『ドラゴンエイジ: ヴェイルの守護者』ではヒッチングが発生し、『ホグワーツ・レガシー』ではドロップフレームが多発しました。
こうした問題については、すでにRX 9070 XTのレビューで詳しく説明するので、ここではあえて深堀はしません。ただ、AMDのAdrenalinソフトウェアがまだ発展途上だということは、覚えておいたほうがいいかも。NVIDIAはまだRTX 50シリーズのブラックスクリーンの問題を完全に解決できていません。
最近はGPUに比較的安価な選択肢が増えており、なんとも喜ばしいことです。昨年のIntelのBattlemageラインナップも忘れちゃいけませんね。1080p、または最大1440pの解像度でプレイできる、真の格安GPUだといえます。選択肢が多いのは良いことですし、RX 9070は、その価格帯では確かに手に取りやすい製品です。ただ、一番のおすすめかと聞かれると、そうとは言えないかも。
AMDはハードウェアをサポートする一方で、ソフトウェアでは、少なくともNVIDIAと比べると、苦戦していると言われています。NVIDIAがゲーム・ハードウェア企業である前に、そもそもAIの会社だったことを考えれば、同じ土俵で比較すること自体、酷なのかもしれません。
AMDとNVIDIAはいずれも長い間、ゲームのスポンサーとして競い合い、最新かつ最高のタイトルに各社独自のグラフィック技術で貢献してきました。現在、RDNA 4のAIアクセラレータが実現したAMDのアップスケーリング技術FSR 4は、前世代のソフトウェアより進化しています。
たしかに、トランスフォーマーモデルのDLSS 4やマルチフレームジェネレータの話題ほど派手ではありませんが、こうした中価格帯のGPUで安定したフレームレートを実現するには、FSR 4で十分です。
唯一の問題は、現在FSR 4をサポートしているゲームが非常に少ないこと。ソニーのPlayStation 5からPCに移植されたソフトや、『Call of Duty: Black Ops 6』、『モンスターハンターワイルズ』、『Kingdom Come Deliverance II』、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』で利用可能。
ちなみに、リリース時にDLSS 4をサポートしていたゲームの数は75以上で、NVIDIAはここ2カ月でさらにサポートを拡大しています。
ただ、それはRX 9070にとってあまり大きな問題ではないでしょう。下位レベルのGPUが必要な最高画質に到達するには、AIのアップスケーリングに大きく依存します。それを加味しても、RX 9070で4Kが常に手に入るとは思えません。そう考えると、RTX 5070と同様、1440pに適した製品だと言えるでしょう。ただ、その場合、アップスケーリングに対応したゲームの選択肢は増えます。
マルチフレーム生成をサポートするゲームの数が増えていることから、この価格帯ではNVIDIAのRTX 5070の方が、ややおすすめかも。NVIDIAのパフォーマンス向上は期待外れでしたが、それでもこの価格帯ではRX 9070よりも、こちらを選ぶほうが有意義かと思います。
ただ、プラス50ドルでRX 9070 XTが買えますので、こちらはアリです。在庫状況にもよりますが、よほど最安値で手に入る場合を除き、RX 9070は選ばないほうが得策。もしRX 9070 XTを600ドルかそれに近い価格で見つけることができたら、迷わずゲットするべきです。
期待されすぎたRTX 5070。4Kにこだわらないなら安定ではある、けど… 在庫払底中のNvidia GeForce RTX 50シリーズ。一番手頃なのはRTX 5070なんですが、パフォーマンスはどうなんでしょうか? 米GizmodoのKyle Barr記者がベンチマークしてるので、以下見てみましょう。 550ドル(日本価格10万8800円)のNvidia GeForce RTX 5070 Founders Editionは、RTX 5080や5090より小さくて、お https://www.gizmodo.jp/2025/03/nvidia-geforce-rtx-5070-isnt-a-miracle-worker-its-just-a-solid-card-for-non-4k-gaming.html