スーパーボウルは、ゲームを見ないでCMだけまとめて見る派です。
Google(グーグル)が自社のAIモデルGeminiの機能をスーパーボウルのCMで宣伝しようとした際に、思いがけずAIツールの最大の欠点、すなわち「でっち上げる傾向」を逆に広告しちゃったみたいですよ。
The Vergeの報道によると、Googleは2月9日に開催される第59回スーパーボウルで流す予定だったGeminiのCMを修正しなきゃいけなくなったそうです。その理由は、同社があらゆるサービスに組み込もうとしているこのAIモデルが誤った情報を伝えてしまったからなのだとか。
Googleのスーパーボウル用CMでは、全米の中小企業が業務支援のためにGeminiを活用している様子を伝えるために、各州ごとに異なる事業を紹介する50のストーリーが展開されるそうです。
たとえば、ウィスコンシン州の広告では、チーズ業者が自社のウェブサイトでゴーダチーズの記述を作成するためにGeminiを利用しているシーンが描かれています。Geminiが生成したテキストには「ゴーダチーズは世界のチーズ消費量の50〜60%を占めている」と書かれているのですが、実はこれ、根拠に乏しく信ぴょう性が低いみたいなんです。
Geminiが出典を示していなかったため、旅行ブロガーのNate Hake氏がX(旧Twitter)でその統計を幻覚(ハルシネーション)だと指摘すると、Google Cloudのクラウドアプリケーション担当社長であるJerry Dischler氏がCMを擁護するこんなコメントを残しました。
やあ、ネイト。幻覚じゃないですよ。Geminiはウェブを基盤にしているので、ユーザーは結果や参照先をいつでも確認できます。
で、元の広告には出典が示されていなかったみたいなんですけど、Dischler氏は「今回の場合、ウェブ上の複数のサイトが50〜60%の統計を含んでいます」とも述べています。
「だってみんながそう言ってるもん」状態ですね、これ…。
確かにインターネット上ではその統計が紹介されてはいます。でも、ほとんどの情報はcheese.comの記載に由来していて、そこにも具体的な根拠は示されていません。
「Geminiが不確かな情報を引用しているからしょうがない」という言い訳は、まったく説得力がないと言わざるを得ません。ところで、「ネットの情報をうのみにするな」という格言はいったいどこに行っちゃったんでしょうか?
ちなみに、これは本題とはあまり関係ないのですが、Dischler氏はコメントの最後に「よいニュース(Gouda news=Good news): 多くの人がこのチーズを愛しています! 悪いニュース: 必ずしも皆がこれを素晴らしいと思っているわけではありません」と書いてるんですけど、説明すると「Gouda(ゴーダチーズ)」と「Good」をかけてあるんですね。
もうこれ「Geminiにゴーダチーズのダジャレを頼んだ」としか思えないんですけど。いや、自社製品を信じるのはいいことだと思いますよ。でも、正直なところなんかイタい感じがします。
何はともあれ、CMの中でGeminiが生成した情報を擁護していたにもかかわらず、GoogleはCMの修正に踏み切ったようです。新しいバージョンでは「50〜60%」という統計が削除されているとのこと。修正後のバージョンがこちら。
しっかり修正されています。この修正が手動で行なわれたのか、あるいはGoogleがGeminiに別の指示を与えた結果なのかは不明ですが、修正版のCMはスーパーボウルで流れる予定だそうです。てか、本当に50州分あるわ、このCM…。
Googleは今回の一件で、Geminiのようなツールは学習した情報をそのままコピーするだけで、正しいかどうかを検証する仕組みがないという実態をCMで上手に表現しているみたいに見えます。
まあ、正確性のチェックはできなくても、少なくとも時間の節約はできますよってことで一件落着!
Reference: Google Workspace / YouTube
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