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フランス、ポップな台所事情

  • 2003年9月25日
  • 緑のgoo編集部

フランス、ポップな台所事情

 最近、数人のパリジェンヌたちの台所を拝見させてもらう機会に恵まれた。台所にある食品にも流行り廃りがあるが、今は、スローフードの影響か、古い食品や雑貨、昔の野菜などが明らかにブームになっているようだ。今回は、最新食材の風潮様子をリポートします。


ブームその1:忘れ去られた野菜たちのカムバック。


 例えば、トピナンブール(topinambourg/菊イモ)。もとは北アメリカ産。17世紀にヨーロッパにもたらされたイモだ。戦争中、食べるものがなくて仕方なく食べていた貧乏野菜というイメージが強かったために、今までは忘れ去られていた野菜のひとつ。これが、どういうわけか去年あたりから大ブームになっており、スーパーなどでもすぐ売れ切れてしまうという。シックなレストランでも、つけあわせとしてさり気なくトピナンブールが添えられていることも稀ではない。味は、アーティチョークに似ていて、ほんのり甘味があるサトイモのよう。

 パネ(panais)という植物もトピナンブールと同じ運命を辿っている。こちらは、ヨーロッパに古くからあった植物で、強いて言えばニンジンに似ており、ポトフに入れると味が締まると言われている。

 また、日本ではデザートに使用されるタピオカ(tapioca。キャッサバ芋から作られる)も、おばあちゃんの時代には、スープの中に入れて頻繁に飲まれていたらしいが、今ではすっかり忘れ去られていた。しかし、こうした野菜たちが、若くてお洒落なパリジェンヌたちの台所にカムバックしてきたのだ。

 今回、トピナンブールを購入して写真を撮ろうと思い、パリ中のマルシェをまわったのですが、残念ながらシーズンには少し早すぎて見つけるコトができませんでした。ごめんなさい。



ブームその2:昔ながらの商品の限定復刻版


 クッキーや飴の箱やらの復刻版も良く見かける。写真は、『アンテジット』。フランス人なら誰でも知っている変な飲み物のひとつ。これは、レグリスと呼ばれる甘草のエキスやらアニス、ミント、レモンを凝縮したもので、フランス人薬剤師によって19世紀後半に発明された健康飲料。消化促進、のどの渇きを癒すなどの効用があるそう。シュガーレスだけど甘い。しかもベタベタしなくて美味しい。今でもおじいさんたちが、お水に垂らして飲んでいる姿は時々見つける。いかにも医学的な茶色の小瓶にコルクをして鑞を垂らした、発売当時の状態で、セレクトショップや高級食材店などで発売中。

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ブームその3:へんな色


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 カラフルな色の食材も、スーパーに増えた。例えば、タラマ(*)としか思えないこのピンクの粒々。しかし、これは、カシスのマスタード。誰でも、「ディジョンのマスタード(フランスで一番美味しい辛子の本場がディジョンです)」と言えば、セラミックのからし壷に入ったものを想像するだろう。この鮮やかなピンクの粒入りマスタードは、1840年から作られているディジョンの辛子ブランド、エドモン・ファロが作っている。イザベル(39才、3児の母)に言わせると、「このマスタードならば、子供が喜んでお肉を食べてくれる」とのこと。

(*)タラマ(タラマ、またはタラモ)とは、トルコやロシア、バルカン半島で食べられているパンなどにつけるペーストのこと。



ブームその4:世界のスパイス


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 今までに例を見ないスパイスブームは、ワールド・キュイジーヌとか、インターナショナル・キュイジーヌといわれる世界料理のブームの余波なのだろうか。フランス人にも、ワサビはしっかり定着した(ちなみに、そのままwasabi と綴る。余談だが、先日、ラーメンにワサビを入れているフランス人を見かけた)。

 スーパーにも、今までになかったような凝ったパッケージのスパイス商品がところ狭しと並んでいる。写真の商品は、南アフリカでブームになっているスパイスシリーズの「Rua」。家庭で手軽に使えるように、数種類のスパイスをあらかじめミックスしてある。例えば、「Bed of Roses(写真上の缶)」はバラの花弁に、パプリカ、クミンなどのブーケの強いスパイスミックスで、普段のサラダにひとふりかけるだけでオリエンタル風にサラダが変身してしまう。「Zen Garden(写真下の缶)」は、禅寺をイメージして作られた、ワサビとゴマベースの禁欲的なスパイス。友人のシャルロット(36才、一児の母)は、ふりかけとしてごはんに散らしたり、パスタに、刺身に、と、かけまくっている。



ブームその5:フランソワ・テロン Francois Theron


 グルメならば彼の名ぐらいは知っているだろう。食のコンセプターとして知られるフランソワ・テロンは、産業的な食材を美味しくポップに、おしゃれにする天才だ。冷凍食品チェーン店「ピカール」のためにマロン・グラッセ入りの栗のアイスクリームを作ったり、ハーゲンダッツの新しくて斬新なフレーバーを開発したり、エアー・フランスで出されるおやつを考えたり。とにかく、食産業企業に引っ張りだこの売れっ子フード・デザイナーだ。

 そんな彼が、自ら、ジャムのブランド「Carla」を発売した。小さな可愛い保存瓶に入ったジャムのフレーバーは、「ルビー&ゴールド(金箔入り!)」「チェリー&チョコレート」「パイナップル&スグリの実」「アプリコット&オレンジの皮」など、今までに体験したことない味覚ばかり。これからも、フランソワ・テロンの活躍には目が離せない。

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ブームその6:なんでもピンチョス?

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 最後に、おまけとしてミニパンの串焼きを紹介したい。世界的なスペイン料理ブームの影響なのか、BBQの延長なのか、小さな小さなパンを数種類串刺しにした可愛いパンを発見。小粋なデパート、ボン・マルシェ「グランド・エピスリ・ド・パリ」内のパン屋さんで売っている。

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