
岐阜市・長良川の近くにある、小さな雑貨店「QQ実験所」。世界各国や日本の伝統工芸品などが並び、温かみのある手仕事のアイテムがあふれています。店主夫妻が直接現地で仕入れた商品には、それぞれの背景や物語がたくさん。心に残る一品を見つける旅気分を味わいに、ぜひ訪れてみてください。
岐阜市の北側、清らかな長良川の近くに佇む「QQ実験所」。まるで旅先の小さな市場のような雰囲気で、中をのぞくと素朴で丁寧な手仕事の日用品や雑貨たちが並んでいます。日本のもののほか、インド、ラオス、ケニア、ウズベキスタンや東ティモールなど世界各国の雑貨がゆったりとした空気の中に溶け込んで、小さな店内で静かに個性を放っています。
店を営むのは、東京から岐阜へと住まいを移した片山輝さんと千鶴さんご夫妻。「QQ」というちょっと不思議な名前は、台湾の言葉で「もちもちした」という意味のかわいらしい響きから名付けたそうです。そして「実験所」の由来は、決まったジャンルにとらわれず、これからも柔軟に、自由に、いろんなことに挑戦していきたいという想いから。2022年春に、その歩みをスタートしました。
店内に並ぶアイテムは、どれも「表情のあるもの」ばかり。片山さんご夫妻は「人間味が感じられるような、表情のあるもの。そういうものに出会いたいんです」と、商品を仕入れるときにはなるべく作り手のもとへ足を運び、直接会って話をしてから、店に迎え入れるかどうかを決めるのだそうです。
最近では東ティモールまで出かけ、色とりどりの編みかごや小物入れを現地で仕入れてきたそう。「このカラフルな入れ物は、もともと儀式で使われていたものかもしれません。現地のお店では、会計の時にこのかごに紙幣と小銭を分けて入れていました。そういう実際に使われていた道具って、とてもリアルで、暮らしの知恵を感じます」。
買付けの旅で感じたのは、日本同様に世界各地でも進む“手仕事の空洞化”でした。高齢化により伝統の担い手が減り、若者は教育や職を求めて都市へと移動していく。受け継がれるはずの技が、静かに失われようとしている現実を感じたそうです。
「ほっておくとなくなってしまう。そういうものを、微力なりにも伝えていきたい」と話す片山さんの言葉に、雑貨を扱うだけではない深い願いが垣間見えました。
QQ実験所の魅力は、海外のものだけにとどまりません。棚には、岐阜や各地で受け継がれてきた工芸品も並びます。例えば、長良川の鵜飼で実際に使われている竹かごや、白川村で今も手作業で編まれる鬼胡桃のかごバッグなど。日本のものも、海外のものと同じように、自然に、気負いなくそこにあるのです。
また、食品コーナーには、無添加の調味料や自然栽培のスパイス、岐阜で農薬を使わずに育てられた「よもぎ茶」なども並びます。どれも「誰が、どんなふうにつくったか」が分かるものばかり。日常にそっと溶け込んで、ふとした瞬間に豊かさを感じさせてくれるアイテムです。
「これだけを扱うなどは決めていないんです。お店の名前に実験所とつけたのも、何屋になってもいいかなという気持ちがあって。いろいろ実験しながら続けていけたらいいなと思っています」と片山さん。
世界のもの、日本のもの、新しいもの、古いもの。ジャンルや国籍にこだわらず、ただ「いいな」と思ったものをセレクトしているからこそ、どれもが自分らしく、その場で輝いています。それはまるで、「みんな違って、みんないい」という言葉をかたちにしたよう。雑多さこそが個性を際立たせてくれる、不思議な調和のとれた空間です。
「これはどこで作られたんですか?」
そんな会話も、このお店で過ごす旅のようなひととき。小さな実験所で、心に残るものとの出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。