2月のおわりに、まど・みちおさんが亡くなりました。 「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」など、人口に膾炙する詩はとても多く、そのすばらしさを伝える評論も数かぎりなくあります。だから、屋上屋を架すことではあるのですが、あえてまどさんについて書いてみようとおもいます。
「地球の用事」という詩は、ビーズ玉が手から落ちて、畳の上で止まるまでのー瞬を描いたものです。なんでもないことをふしぎがり、仔細に、鮮やかに描くことで、時間の長短が、その時間のもつかけがえのなさと必ずしも正比例しないことを教えてくれます。 日々の生活の中では、こうした多様な時間軸があり得ることをつい忘れがちです。ボタンを押せば瞬時に飲み物が出てくる自動販売機のように、行動とその結果とのタイムラグは短ければ短いほどよいという価値観があり、私たちもそのことに利便性を感じています。 けれど、実際の生活の中には「そんなに簡単に決めないでよ!」と思うこともたくさんあります。そんなとき、「1秒は1秒でしかない」という単一の時間軸しか許されなければ、とても苦しくなってしまうでしょう。だから、まどさんの詩のような自由で多様な時間軸をもつ能力がほしいなぁとおもうのです。
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