
【精神科医が解説】15人に1人が一生のうちにうつ病を発症すると言われている時代、うつの発症に男女差はあるのでしょうか? 分かりやすく解説します。
■Q. 「男性よりも女性の方がうつになりやすい」って本当ですか?
Q. 「最近、仕事と家庭の両立に疲れて、気分が沈んでいます。よく『女性はうつになりやすい』と聞きますが、実際にそうなのでしょうか? 自分もうつではないかと不安になります」
■A.「男性よりも女性の方がうつになりやすい」というのは事実です
うつ病の発症にはさまざまな要因がありますが、男性よりも女性の方がうつになりやすい傾向があるのは事実です。
最も大きな身体的な差として、妊娠・出産という大きなライフイベントに伴う負担が挙げられます。妊娠・出産によるホルモンバランスの急激な変化は、うつ病発症のリスクを高めると考えられています。
また、男性以上に家事や育児の負担を抱えながら働いているケースも多いのが現状です。家庭内外での負担が重なることで、高いストレスにさらされやすいことも一因と言えます。
さらに、仕事で男女格差がある場合、対等な立場を得るためのプレッシャーも無視できません。環境的なストレスもまた、うつ病のリスクを高める要因となります。
しかし一方で、自殺数に関しては男性の方が多いという統計もあります。これは、男性が精神的な不調を感じても病院に行くのをためらい、適切な治療を受けずに症状を悪化させてしまう傾向があるためでしょう。
このように、男女でうつ病の発症傾向には違いがあります。大切なのは発症傾向を正しく理解し、それぞれに応じた支援を実現させていくことです。
▼中嶋 泰憲プロフィール千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。
中嶋 泰憲(医師)