
高額療養費制度があるおかげで、病気やケガで医療機関に支払う自己負担額が高額になった場合でも安心です。しかし、全ての医療費が高額療養制度の対象になるわけではありません。今回は、対象から外れる医療費について詳しく解説します。
■高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、病気やケガで医療機関にかかり、医療費の自己負担額が高額になった場合に家計への負担を軽減するための公的制度です。
健康保険に加入していれば誰でも利用でき、1カ月(1日〜末日)ごとに医療費の自己負担に上限額が設定されています。自己負担の上限額は、収入に応じて決まっており上限額を超えた分は後から払い戻される仕組みです。
もし急な入院や手術で高額な医療費が発生しても安心ですが、実は全ての医療費が高額療養制度の対象になるわけではありません。今回は、対象から外れる医療費について詳しく解説します。
■高額療養費制度でカバーされない医療費とは?
高額療養費制度の対象は、「保険診療の範囲内」で支払った医療費のみです。以下のような費用は対象外となりますので注意しましょう。
▼差額ベッド代:個室や少人数の部屋を希望して入院した場合の追加料金差額ベッド代は、高額療養費制度ではカバーされないため、自分で支払わなければなりません。差額ベッド代がかかる病室には、次のような条件があります。
・4人以下の部屋であること
・病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上の広さがあること
・ベッドごとにカーテンや仕切りなど、プライバシーを守る設備があること
このような設備が整っている部屋を利用する場合、追加料金が発生します。
なお、原則として差額ベッド代は、自分が希望していない場合は発生しません。
▼先進医療にかかる費用「先進医療」とは、まだ新しいために公的な医療保険が使えない特別な治療法のことを指します。先進医療にかかる「技術料」は保険がきかず、全額自己負担になります。先進医療の費用は治療内容によって大きく異なります。
▼上記以外で対象外となる主な費用・入院中の食事代
・文書料:診断書や証明書などを発行してもらう際の費用
・交通費・宿泊費:通院や入院にかかる交通費や家族の宿泊費用
・予防接種や健康診断費用:治療を目的としない医療サービス
・美容目的の医療行為:美容整形や審美歯科など、保険適用外の施術
・入院中のテレビ・冷蔵庫などの使用料:病院によるレンタル品
・入院中の日用品の購入費:パジャマ、洗面用具など日常的に使用する品々
・医療保険適用外の薬剤費:漢方薬やサプリメントなど
■まとめ
高額療養費制度は医療費の負担を軽減してくれる心強い制度ですが、「全額カバーしてもらえるわけではない」という点を押さえておく必要があります。入院や手術を控えている場合は、事前にどこまでが自己負担になるのか確認することが大切。制度の仕組みを正しく理解して、万が一に備えましょう。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)