「幽霊? 幻覚?」 病院に行くべきでしょうか【精神科医が回答】

  • 2025年5月11日
  • All About

【精神科医が解説】見えないはずのものが見えたり、聞こえないはずの声が聞こえたりする幻覚。精神疾患が原因のこともありますが、多くはありふれたもので心配はいりません。分かりやすく解説します。
■Q. 部屋に知らない人がいる幻覚を見ました。精神的にマズい状態でしょうか?
Q. 「夜寝ようとしたとき、誰もいないはずの部屋に人が立っているのを見ました。一瞬ですがかなりはっきりと見えたので、いわゆる『幻覚』を見たのだと思います。最近忙しく、疲れている自覚はありますが、幻覚を見るほどの精神状態となると、かなりマズいのでしょうか? 病院に行くべきか、少し迷っています」

■A. その後の日常生活に影響が出ていないなら、問題ありません
結論から言うと、日常生活に影響が出ていない限りは、全く問題ありません。そこにいないはずの誰かの姿が見えたり、声が聞こえたりする「幻覚」は、精神医学的には「精神病的な精神体験」と言います。

何となく誰かに後をつけられているような気がするのも、その類です。私たちの4人に1人は、一生のうちにそうした精神体験をするとも言われています。

実際、筆者にも似たような経験があります。雪が空を舞う、寒さの厳しい冬の日のことです。午後の外来診療が始まる前、病院内にはまだ誰もいません。しかし突然、診療室の扉を隔てた受付のあたりから、若い女性の笑い声が聞こえたのです。

事務の女性も、同じ声を聞きました。もう一人の病院スタッフの笑い声かと思ったのですが、その女性は全く違う場所にいたのです。

それでは、聞こえた笑い声は何だったのでしょうか? 幻覚だとすれば、自分も事務の女性も、同じタイミングで同じ内容の精神病的体験をしたことになります。一種の「集団幻覚」と言えるものかもしれません。あるいは、女性の笑い声に似た何らかの音がした可能性もあります。

そうならば、単なる聞き違いです。いずれにしても、その声を聞いた筆者も事務の女性も、それまで通りの毎日を送れていますので、精神医学的な問題はないと考えられます。

一度幻覚があったとしても、その後の日常生活に変わりがなければ問題はないのです。もしも、「何度も同じ幻覚を見て、不安が大きい」「幻覚が気になり、仕事に集中できない。夜も眠れない」など、日常生活への支障が出ている場合は、精神科で相談してみることをおすすめします。

また、余談ではありますが、読者の方の中には、笑い声の正体が気になるという方もいるでしょう。事実は分からないままですが、周辺情報が1つあります。実は、病院から見える塀の向こうにはお寺の墓地があるのです。

筆者は医師ではありますが、「もし幽霊だったとしても、笑い声をたてる幽霊ならきっと怖いことはしないだろう……」と考えるようにしています。考え方で気持ちを落ち着かせることも、心の健康のために大切なことだからです。

▼中嶋 泰憲プロフィール千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。

中嶋 泰憲(医師)

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