ドーナツのイラストは小川さんの奥さんがデザイン
九州編の第108回は福岡県北九州市にある「Little O coffee&donut」。北九州モノレールの平和通駅の真下あたりの小さな雑居ビル前に、営業中だけちょこんと置かれた、ドーナツのイラストがかわいい看板。これが同店の唯一の目印となっており、地下の店舗へと続く扉が入口になっている。階段にはPeace Ave.と書かれているように、「Little O coffee&donut」はPeace Ave.というバーの昼〜夕方の時間帯を間借りしているコーヒーとドーナツの専門店だ。地下1階という隠れ家的な立地で間借り営業を始めた理由、コーヒーとドーナツの2つを柱に掲げた思いを聞いてみると、店主の小川さんのコーヒーに傾ける情熱が見えてきた。
オーナーの小川晋平さん。コーヒーの抽出、焙煎を担当するほか、ドーナツ作りも自ら行う
Profile|小川晋平(おがわ・しんぺい)さん
福岡県北九州市出身。大学時代に経験した飲食店のアルバイトからサービス業に興味を抱く。大学卒業後、下関の人気ロースタリー、Craftsman Coffee Roastersに入社。入って数年はバリスタとしてコーヒーの抽出、サービスの現場に立ち、途中からは焙煎にも従事。2023年2月、「Little O coffee&donut」をオープン。2024年6月に行われた日本・韓国・台湾から競技者を募るエスプレッソ競技会「EL ROCIO CUP 2024」では見事チャンピオンに。
■ドーナツを通したコーヒーとの出合い ドーナツは常時8種程度を用意。人気はバニラミルクグレーズ(1個280円)、シナモンシュガー(1個280円)
そうやって開業した「Little O coffee&donut」。前職で抽出・焙煎ともにしっかり技術を磨いてきた小川さんだけにコーヒーを柱に据えるのは当然だが、なぜコーヒーと同列でドーナツを店のウリの一つに打ち出したのか。
■さまざまなモノ・コトのフィルターにコーヒーを 前職時代から磨いてきたエスプレッソ抽出
「Little O coffee&donut」はドーナツだけテイクアウトしてもいいというスタイルではあるが、やっぱり同店ではコーヒーを味わってほしい。その理由が小川さんのバリスタとして高い技術を持っているからだ。日本、韓国、台湾で活躍するバリスタを対象として初開催されたエスプレッソ抽出の競技会・EL ROCIO CUP 2024でチャンピオンとなったほか、熊本で行われたエアロプレスの競技会でも1位を獲得。特にEL ROCIO CUPは大会そのものの歴史は浅いものの、コーヒーのレベルが高い韓国、台湾のバリスタも参加した中で1位を獲得したのはすごいことだ。
【写真】EL ROCIO CUP 2024のチャンピオントロフィー
さまざまな競技会に参加していること自体、コーヒーに対して真摯に向き合っていることは明白だが、小川さんは地元のコーヒーのレベルを底上げしていくための取り組みも行っている。それが、2024年9月に初開催したKitakyushu Hand Drip Championship(KHDC)だ。小川さんにイベントを開いた理由を聞いてみた。
Kitakyushu Hand Drip ChampionshipはPeace Ave.で開催した
「熊本で行われたエアロプレスチャンピオンシップに参加して、強い感銘を受けました。競技会としては決して規模が大きいわけではないのですが、その根底にあったのはコーヒーを通してさまざまな人が繋がり、その地域においてより魅力的なコーヒーを提供していこうとする姿勢です。北九州にはそういう取り組みがなかったので、いろいろ考えるよりも、まずはやってみよう!と実行に移しました。初開催でいろいろ反省点はありましたが、自分の中ではこういった機会をもっと増やしていく必要があると感じる貴重な機会になりました」