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草彅剛「白い布に血が滲んでいくような変化にゾクゾクした」白石和彌監督最新作で“復讐に燃える男”に

  • 2024年5月17日
  • Walkerplus

白石和彌監督の最新作「碁盤斬り」で主演を務めた草彅剛さん。囲碁の達人で、武士の誇りをかけて“復讐に燃える男”を描いた本作。主人公の浪人・柳田格之進を演じた草彅さんに、白石組を経験して感じたことや共演者とのエピソード、さらに映画館の思い出などを語ってもらった。

■格之進の持つ実直さや古くさいと言われる考え方には「現代にはない大事なものが隠されている」
――お話が来たときはどのような心境でしたか?

【草彅剛】基本的にオファーいただいた仕事はお断りしたことがないのですが、今回は白石和彌監督の作品だと聞いてすぐに「やります!」とお返事しました。 (香取)慎吾ちゃん主演の「凪待ち」や、役所広司さん主演の「孤狼の血」を拝見したときにすごい監督だと思っていましたし、なんとなく“おもしろい現場”なんだろうなと想像していたので即答でしたね。

――監督とご一緒してみていかがでしたか。

【草彅剛】すごく穏やかな方なので、バイオレンス要素のある「孤狼の血」みたいな映画を撮っている監督にはとても見えなかったです。あと、年が同じだからなのか、友達みたいな感じでフランクに接することができました。

細かく役について話すというよりは、「ここはもうちょっと間をとってセリフを言ってみましょうか」みたいな感じで、大事なポイントだけを確認しながら撮影していましたね。スケジュール面でハードなときもあったのですが、すごく楽しい現場でした。

――身に覚えのない罪をきせられたうえに妻も喪い、故郷の彦根藩を追われた浪人・柳田格之進という役をどんな風に捉えて演じられたのでしょうか。

【草彅剛】武士の道理が大事なのかなんなのか、とにかくめんどくさい人ですよね。あまり共感できないというか、むしろ最初はちょっと嫌いでした(笑)。だけど撮影が進むうちに、格之進の持つ実直さや古くさいと言われる考え方には、現代にはない大事なものが隠されているんじゃないかなって、そんな風に思えてきたんです。なので撮影終盤には格之進のことを“すてきな人だな”と思いながら演じていました。

――格之進が囲碁を打つシーンがたくさんありましたが、どのぐらい練習されましたか?

【草彅剛】囲碁は今回初めて打ったので、まずルールを覚えるところから始めて、その後ひたすら打ち方の練習をしていました。まず石を取って、その石を回して人差し指と中指に挟んでからパチっと打つんですけど、実際にやってみるとけっこう難しいんです。

でも格之進は囲碁が強いので、プロの棋士の方が見て不自然に感じないようにしなきゃと気合いが入りましたね。囲碁のシーンは手元に気をつけながらお芝居していました。

――囲碁のシーンでアップになったときの手元が美しくてドキドキしました。

【草彅剛】美しかったでしょ?(笑)。美しく見せるだけじゃなく、役の感情を乗せて一手を打っていたから、それがスクリーンを通してお客さんに伝わったらいいなぁ。

■いつもの白石監督作品とはエンジンのかかり方が違う「白い布に血が滲んでいくような変化にゾクゾクした」
――源兵衛役の國村隼さんとは何度も共演されていますが、本作の現場では國村さんとどんなお話をされましたか?

【草彅剛】國村さんが高倉健さん、松田優作さん、マイケル・ダグラスさんと共演した「ブラック・レイン」が好きで、本作の現場で「当時の撮影はどんな感じだったんですか」って質問したんです。そしたら國村さん優しいから「ブラック・レイン」の撮影秘話をたくさん聞かせてくださって。それがすごく興味深くておもしろかったですし、京都のおいしいご飯屋さんも教えていただいたりして、すごく幸せな時間でしたね。

お芝居に関しては、國村さんが流れるようにセリフを話されるので、聞き入っているうちに自分のセリフの番が来て、“あれ?國村さんのセリフってもっと長くなかったっけ?”って焦るんです(笑)。それぐらいお芝居が自然なので、驚きつつも毎回感化されて、とてもいい感じに格之進を演じることができました。國村さんは俳優として憧れますし、粋でかっこよくて生き方がおしゃれで、本当にすてきな先輩です。

――格之進と因縁のある武士・柴田兵庫を演じた斎藤工さんとの撮影はいかがでしたか?

【草彅剛】工くんも何度も共演しているので、心の底から安心してお芝居ができました。工くんが演じた兵庫は格之進が復讐心を燃やす相手なので、これまで共演してきたいろいろな作品の集大成というか、二人で築き上げてきたもの全部を格之進の感情に乗せてぶつけるように演じていました。

――そのことは斎藤さんには事前に伝えてらっしゃったのでしょうか?

【草彅剛】いえ、僕が勝手に思っていただけですが、きっと僕のお芝居から工くんに伝わっていたんじゃないかなと思います。ここまで激しくぶつかり合うお芝居は初めてだったので楽しかったです。ただ、ひとつ思うのは、なんで工くんは現場でいつも落ち着いた雰囲気を醸し出しているのかなって。休憩時間に「この差し入れおいしそうだね!食べちゃおう!」って僕がはしゃいでいると、その横で工くんは「うまそうですね…」って静かに言うんですよ。

僕のほうが年上なのに彼がお兄ちゃんみたいに感じるし、“なんでそんなに大人なの?”って思う(笑)。でも、そういう妙な対抗心っていうのかな、それが格之進のスイッチを押してくれたのかも。それに、彼は監督として映画を撮っているから、いい意味での緊張感もあったんですよね。工くんとはいつも以上に熱が入ったお芝居ができたように思います。

――完成した本作をご覧になってみていかがでしたか?

【草彅剛】最初のほうは囲碁を打っている穏やかなシーンやコミカルなシーンがけっこうあるんですけど、小泉今日子さん演じるお庚さんがだんだん厳しい一面を見せ始めて、格之進が兵庫への復讐心を燃やし始めたあたりから、いつもの白石監督作品とはエンジンのかかり方が違うなと感じて。なんていうか…白い布に血が滲んでいくような変化にゾクゾクしたんです。

あと、囲碁での“静”の戦いと、殺陣のシーンでの“動”の戦いのバランスもめちゃくちゃいいなと思いました。古典落語をベースにした脚本だから話がわかりやすいし、程よくおかしみもあっておもしろい。僕の新たな代表作ができたと思います。

■今後の目標は「“最高にかっこいい大人”を目指して頑張ること」
――普段はどんな映画をご覧になりますか?

【草彅剛】配信サービスで最近観たのは「RUN/ラン」っていうサイコスリラー映画。生まれつきの病気で車椅子生活の女の子が、あるときから母親に不信感を募らせていって、母親から与えられた薬を調べたらとんでもない事実が発覚して…という怖い展開にドキドキしました。

――代理ミュンヒハウゼン症候群という精神疾患を扱った作品ですよね。

【草彅剛】そうそう。リアリティのある内容で、脚本も秀逸だったからすごくおもしろくて引き込まれましたね。最近はNetflixやプライム・ビデオで気になった作品の予告を観て、おもしろそうだなと思ったら本編を観るようにしています。でも、映画は映画館で観るのが一番ですよね。

――映画館でご覧になった思い出の作品を教えていただけますか?

【草彅剛】子どものころ、「まんが日本昔ばなし」のオープニングに出てくる龍の子太郎が大好きだったので、父親が映画「龍の子太郎」を観に映画館へ連れて行ってくれたのを覚えています。あと、チェッカーズの「CHECKERS in TAN TAN たぬき」やキョンキョン(小泉今日子)の「ボクの女に手を出すな」も映画館で観た記憶があります。

――映画館の座席でお気に入りの位置はありますか?

【草彅剛】特にお気に入りの位置はないんですけど、1番前の席はなるべく避けるようにしています。スクリーンが大きいと見づらいですから。ただ、普段はネットで事前予約をしないので、劇場に着くと既に人気作のいい席は全部埋まっていて、端っこの前のほうしか空いてないんですよね。「タイタニック」や「アナと雪の女王」を前方の端っこの席で観た記憶があります。

――好きなハリウッド俳優や映画監督はいらっしゃいますか?

【草彅剛】作品とセットで俳優や監督を好きになることが多くて、たとえば「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のロビン・ウィリアムズさんとマット・デイモンさん。お二人のお芝居は素晴らしいので何度も観たくなるし、「レオン」のナタリー・ポートマンさんとジャン・レノさん、「セブン」のブラッド・ピットさんもかっこいいですよね。

「パルプ・フィクション」を観ると(クエンティン・)タランティーノ監督ってやっぱりすごいなと思います。当時日本でも流行った映画って鮮烈に記憶に残っているし、何度観てもおもしろいところが好きですね。

――最後に今後の目標を教えていただけますか。

【草彅剛】一番は“最高にかっこいい大人”を目指して頑張ることかな。今回「碁盤斬り」に出演したことで、これからもエネルギッシュに自分の力を注げる作品にどんどん巡り合っていきたい、そう思ったんですよね。それを実行するには体力を維持しないとダメだなと思って。

俳優の先輩方を見ていると、皆さんすごくエネルギッシュだし努力も続けているんです。観てくださった方が“明日からまた元気に生きていこう”と思ってくれるような作品を、これからも作っていきたいです。

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:細見佳代(ZEN creative)
◆ヘアメイク:荒川英亮

(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

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