
「小児がん」とは、15歳未満の子供に発生するがんのこと。1年間に約2000~2300人の子供たちが小児がんと診断されている。今回は小児がんの体験談をもとに描かれた漫画「中学生でがんになりました」の冒頭部分を紹介する。
作者は、自身も闘病の経験があり、SNSでフォロワーの病気の体験談を漫画にしているつきママ(@tsukimama34)さん。つきママさんにも病気をテーマに漫画を描く理由などを聞いた。
■友人関係に悩む中学2年生。腹痛が続くが誰にも相談できない…。
主人公の佐久間莉子は中学2年生。友人関係に悩みがあり、加えて最近よくお腹が痛くなることも気になっている。体育の授業も休みがちになるほどだが、原因はストレスだと思っていた。シングルマザーの母親には、忙しい中心配かけられないと相談できていない。しかしある日、トイレに行っても便が出ず、さらに急な吐き気に襲われる…。
■闘病の大変さだけではない。がんの影響は学校生活にも
つきママさんは、自身も脳血管疾患で闘病した経験を、漫画「ただの頭痛かと思っていたら脳疾患だった話」で描いている。現在はフォロワーから寄せられた病気の体験談を漫画にしており、「中学生でがんになりました」も実際の体験をもとに描かれた作品だ。
漫画ではがんの発覚から闘病だけでなく、友人との関係やその後の学校生活までを描いている。小児がんの経験者をはじめ多くのコメントが寄せられているが、なかでもつきママさんの心に残っている声があるそうだ。
「主人公と同じく、中学生でがんになられたお子さんを持つお母様のDMが今でも忘れられません。そのお子さんは退院後、学校に復帰しましたが、ひどいいじめを受けて学校に行けなくなってしまったそうです。がん治療を行うと見た目が大きく変化するので、いじめのターゲットになったようでした。『ただ普通の暮らしがしたいだけなのに』というお母様の声が印象的で、何も力になれない自分に無力さを感じたのを覚えています」
■早期発見が何より大切。定期検診に行き、体調の異変があったら受診してほしい
自身の体調不良をなかなか言い出せなかった主人公の莉子。「親子関係を密にして、何かあればいつでも相談できる関係であることがベストですが、思春期だと、何でも親に隠したがる年頃なので実際は難しいですよね…」とつきママさんが話すように、子供の場合、まだ幼くてうまく伝えられなかったり、成長すると逆に親に相談しにくかったりすることもあるだろう。
しかし、がんという命に関わる病気になってしまった恐怖、抗がん剤の副作用の辛さ、そして将来に対する不安は、子供にとっては計り知れないものだ。つきママさんが病気を題材に漫画を描く理由は、少しでも病気の啓発に繋がってほしいという思いからだ。
「私自身の闘病の経験から、早期発見が何よりも大切だと思い知らされました。私の漫画を通じて1人でも多くの方が定期検診に行っていただき、体に異変があったらすぐに病院を受診してほしい。そう願って、病気というテーマで漫画を描いています」
「中学生でがんになりました」は、つきママさんのInstagramとブログで公開中。最後に読者へのメッセージをもらった。
「いつも読んでいただき、ありがとうございます。皆様の温かいコメントやDMが創作活動の励みになっています。飽き性でなかなかひとつのことを続けられない私がこんなに長く漫画を描けているのは、読者の皆様がいるからです。本当にありがとう!そしてこれからもよろしくー!」
健康なときは、まさか自分が病気、ましてやがんになるなんて想像しにくいもの。そしてそれは、大人より子供のほうがずっと難しいだろう。しかし、いつ誰が病気になるかはわからない。病気について描くつきママさんの漫画、しっかりと心に留めておきたい。
取材・文=松原明子