
20XX年、人類は滅亡し世界には僕と彼女の二人しかいなくなった。彼女は記憶が逆行する奇病に侵されていて――。今回は、終わりゆく世界と恋人との最後の日々を描いた詠嶌太郎(@N_taro_P)さんの漫画「ブローバックシンドローム」を紹介しよう。
20XX年11月5日、車内で目を覚ましたケイと恋人のシェリー。何気ない会話を楽しむ二人だったが、シェリーは眠りにつくと記憶が逆行し、わずか数カ月で逆行に耐えきれず死に至る病に侵されていた。発症した日から日々の出来事をボイスレコーダーで記録して、失った記憶を補完していたが、次第にケイのことを恋人と認識できなくなってしまう。すべてを拒絶し発作的にパニックを起こすようになったシェリーとの壮絶な日々の中で、以前交わした約束だけが二人をつなぐすべてとなっていた。
翌年の元旦、残された時間が少ない二人は海岸へとたどり着いて――。
■きっかけは斉藤和義さんの「ウサギとカメ」だった
病におかされた彼女と共に生きる切ないストーリーには、「いい話!」「単行本で何度も読みたい」とたくさんの反響があった。ここからは、作者の詠嶌太郎さんのインタビューを紹介する。
――本作はいつごろ描かれたものですか?本作を描いたきっかけを教えてください。
描いたのは数年前になります。きっかけは斉藤和義さんの「ウサギとカメ」を聴いて、ラストシーンの絵を思いつき、描こうと思いました。
――45ページの大作で読了感のあるお話でした。病気におかされたシェリーに「死」が近づいていると思うと切なくて、ラストは涙なしには読めませんでした。
大切な人を失くすと退廃的な気持ちになって立ち止まってしまいますが、「そこから前に進めたらいいな」と思ってます。
――読者のコメントには「単行本にならないかな?」「ベクトルが違うけど好き!」という意見もありました。
単行本化は今のところありません。X(旧Twitter)やpixivに置いているので、いつでも会いに来てやってください。
――「ブローバックシンドローム」について、記憶が逆行しパニックを起こす様子が非常にリアルでした。何かを参考にしたのでしょうか?
特に参考にしたものはないです。まったくの想像です。
――シェリーが初めてボイスレコーダーで記録したメッセージに出てくる「私たち」は誰のことを示しているのか?という読者コメントを見ました。何か秘密が隠されているのでしょうか?
記憶が逆行して過去にいる自分と、ボイスレコーダーにメッセージを吹き込んでる現在の自分を指して「私たち」と言っています。とくに秘密はないです。
――最後に、本作以外でどのような作品を描いているのか教えてください。
Xに「職場の女の子に投資する話」というラブコメ作品と日記漫画を載せてます。ぜひ、読んでみてください!また、別名義にて「セブン・エンド」というサスペンス漫画を連載しておりますので、こちらもよろしければチェックしてみてください!
お互いの記憶がどんどんと離れていく中、絶望しながらもシェリーに寄り添おうとするケイ。最後の別れを前に何を思うのか。ぜひ感動のラストを見届けてほしい。
取材協力:詠嶌太郎(@N_taro_P)