「悲しくて温かい気持ちに」「ガツンとくる」家族を失った男性の“生きている意味”描く漫画が胸を打つ【作者に訊く】

  • 2023年10月22日
  • Walkerplus

自ら崖から飛び降りた息子と、その死を悲しみを分かち合っていた妻、愛する家族を失いひとりぼっちになってしまった男性。「こんなにくるしくてみじめなのに」と、孤独の中で自分が生きている理由を問いかける――。
電気こうたろうさん(@gurigurisun)による創作漫画「生きて伝える」は、家族に先立たれた人が一人きりで「どうして生きているのか」を自問自答する短編作品だ。息子や妻と過ごした思い出の時間を振り返りながら、どうしようもなく生き続けている男と、「忘れないため」という答えを独特のタッチで描く同作には、X(旧Twitter)で2000件以上のいいねとともに「すべての描写が妙にリアル」「葛藤がものすごく伝わって来ました」「ガツンとくるものがありました」と、読者から多くのコメントが寄せられた。

作者の電気こうたろうさんは、自身のXや創作プロジェクト「チーム空洞電池」でオリジナル漫画を発表。本作をはじめ、認知症の母とのかかわりを描き1万件以上のいいねが集まった「トンネルの中で昔の母さんに会えた話」や、愛する黒猫との出会いと別れを描き、やはり3万超のいいねと反響を呼んだ「そよちゃん」など、心を打つ短編を数多く発表している。ウォーカープラスでは「生きて伝える」の制作秘話や、作品制作への思いを訊いた。

■「寂しさや悲しみの中にこそうつくしさがある」作風にこめられた想い
――もともと、電気さんが漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

「ずっとバンド活動をしていたのですがステージに立って生で演奏するという行為が向いてないなと気づいてやめて、時間をかけて取り組めて完成までに何度でも修正できてひとりでできることがいいなと思いそれだけで漫画を描くことにしました」

――本作は4ページの中に、男性とその家族の生きてきた時間が詰まっているように感じました。電気さんが本作を描く上で特に力を入れた部分があれば教えてください。

「セリフと間の取り方に特に力を入れました。前の自分だったら『このセリフやこのコマは無駄だからいらないな』と判断して削るところを、あえて残すことで余韻や人間らしさが滲み出るようにしました」

――「忘れないためだよな」という最後の台詞が、どこまでも切なくてそれでも生きていくことを引き受ける力強さを感じました。どんな思いで本作を描かれましたか?

「10年間一緒に暮らした猫が死んでしまって、ぼくがいずれいなくなったら誰もこの子のことを話さなくなって、あったはずの命が無かったようになってしまうのが悲しくもあり、不思議に感じました。死んでしまった人や動物のことをどれだけ生きて伝えてもきっと先細りして忘れ去られてしまうけれど、ぼくはその弱さに力を感じるし、うつくしいと思ったのでこの漫画を描きました」

――本作のほかにも、4ページで抒情的な作品を多く描かれています。こうしたスタイルで描く理由はなんなのでしょうか?

「4ページなのはXで読んでもらうにはちょうどいいページ数かなと思ったのと一週間に一度ネットに公開しようとすると4ページが自分の限界だからという理由です。テーマについてはもともと不思議な話が好きで、それだけで描いていた時期もあったのですが、寂しさや悲しみの中にこそうつくしさがあると気づいて、それからは不思議な設定の中でいかに感動できるかを模索してやっているところです」

――漫画を描くうえで大事にしていることや、こだわりがあれば教えてください。

「嘘っぽい表現にならないように気を付けていることと、どんなキャラクターに対しても愛を持って描こうと決めています」

取材協力:電気こうたろう(@gurigurisun)

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