
和歌山県・白浜。リゾート地としても人気の街に、開園から45年を迎えたテーマパーク「アドベンチャーワールド」がある。ここは“日本一のパンダファミリー・浜家”が暮らすテーマパークとしても知られ、園内には、これまで10頭のジャイアントパンダを産み育てた良浜(らうひん)という、メスのお母さんパンダがいる。
良浜(らうひん)が、10頭の母になるまでに、どのような物語があったのだろうか―。中国国外の飼育施設で世界一の繁殖実績をあげる「アドベンチャーワールド」。そこで暮らす良浜(らうひん)の命の物語を「パンダのミライー浜家・良浜 いのちの物語ー」と題し、取材をもとに遥那もより氏(@moyoribiyori)の漫画とともにお届けする。
今や誰もが知る、立派なお母さんパンダの良浜。そんな良浜にとって一番大変だった出産のエピソード。誕生したばかりの小さな命が危ない⁉その命はどうなった⁉
■スタッフが「もうダメかもしれないと思った…」と振り返る出産とは?
「良浜の6度目の出産」は大変だった出産の一つだと、飼育スタッフや獣医師らは語る。体温も体重も平均以下で産まれたジャイアントパンダの赤ちゃん。しばらくの間、飼育スタッフが手で保育器を温め、体温は徐々に上がるものの、体が小さすぎて母乳を飲む力がない状態だった。
ジャイアントパンダの飼育において、授乳が始まった時期に出る母乳は「初乳」といい、赤ちゃんにとってはとても大切な栄養源。免疫力を保つためにも重要とされている。
そこで、スタッフが良浜の母乳をしぼり、注射器で赤ちゃんに飲ませるという方法をとっていた。しかしながら、赤ちゃんは小さすぎるがゆえの栄養不足から危険な状態に…。ついには心音が聞こえなくなる状態にまで陥っていたという。
そこからスタッフによる懸命の救命措置により、命を取り留めたジャイアントパンダの赤ちゃん。2日後には良浜が抱っこしている間に体重が増えていた。これは、赤ちゃんが自力で母乳を飲んでいるという何よりもの証である。
こうして「良浜の6度目の出産」は幕を閉じた。この時、誕生した赤ちゃんが彩浜。みんなに心配されながら生まれた彩浜は、2023年8月には5歳の誕生日を迎え、今もすくすくと成長している。
奥が深い、ジャイアントパンダの出産。今後も、そんな母・良浜(らうひん)の命の物語をつづっていく。
次回更新は11月30日(木)です。