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悲劇の天才相場師の投資の鉄則とは/タザキの投資本案内「世紀の相場師 ジェシー・リバモア」

  • 2024年3月16日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。投資・マネー系の本を300冊以上読破した経験から、特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介。2024年2月2日には、著書「しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた」を刊行しました。

本日は「世紀の相場師 ジェシー・リバモア」(著:リチャード・スミッテン/KADOKAWA)をご紹介します。ジェシー・リバモアは、ウォール街の“グレートベア”という異名を持つほど、世界恐慌時に巨額の空売りを行い、巨額の利益を上げたことで知られていますが、そんな彼の伝記のような一冊です。

また、何度も破産と復活を繰り返す波乱万丈な人生や、人間関係なども綴られていますが、ここでは、彼の取引手法をメインに、要諦として「タイミング」「資金管理」「感情の制御」の3点を、詳細にまとめていきます。

■1―タイミングが全て
相場師にとって、タイミングは全てと言ってもいいものです。巨大な利益は座して待ちながら、チャンスが来た「瞬間に」売買注文を入れます。先行きを期待したり予測したりするのではなく、じっくり待ち、現実の動きを確認してから、試し玉から始めるのがリバモア流です。

「新高値」は彼にとって「つねに福音」だったと言います。「買い」に入るのに高すぎるということもなければ、「空売り」するのに安すぎるということもないという記載にも表れています。

新高値をつけトレンドが確認できたら、リバモアはすぐに乗り、増し玉をしながら利益を徹底的に伸ばしていきます。新高値をブレイクしたら投資をする手法は、現代でも有名な手法の一つです。それが100年ほど前に確立されていたということには驚きを隠せませんね。

■ピボタル・ポイント理論
リバモアの投資テクニックの根幹とも語られたのが「ピボタル・ポイント理論」です。これは、「リバーサル・ピボタル・ポイント(RPP)」と「コンティニュエーション・ピボタル・ポイント(CPP)」の2つがあります。

RPPは、トレンドの明確な方向転換であり、彼にとって最高条件の取引タイミングです。上昇相場ならここで上げ止まり、下落相場ならここで下げ止まるポイントです。このポイントでは買い手と売り手の激しいせめぎ合いによって、しばしば出来高平均の100〜500%増という規模に達します。

CPPは、一定方向のトレンドを保ちながら、相場が一時的に反発するポイントです。このポイントは、第2の好機と言え、まだ取引を開始していない場合は新規で取引を開始し、すでにポジションを持っている場合は、取引規模を増大させるチャンスでもあります。トレンドの「ダメ押し」的な意味を持ち、その後トレンドが継続する可能性が高いポイントであるため、リバモアは通常以上の資金を投入します。

以上がピボタル・ポイント理論の概要ですが、やはり実践となると、いかにそのポイントに近いタイミングで動き出せるか、が勝負になるでしょう。完璧にピークをとらえるのは、いわば「神様トレード」です。リバモアは「5%ないし、10%も変動した後となると、遅過ぎの感は否めない」と考えており、この水準は現代のトレーダーの感覚にも近い水準ではないかと考えられます。個人的には、アマチュア投資家であれば15%程度以内が1つの現実的な目安ではないかと思います。

また、「一日逆転のポイント(ワン・デー・リバーサル)」が察知されたら危険信号と捉え、撤退する「勇気」も必要だと述べています。このポイントは、価格の瞬間風速は前日の高値を凌駕しながらも、その日の引け近くには前日の安値を下回る水準で引けるという動きです。出来高は前日の商いを上回ります。

これは、テクニカル分析における、「包み線」であり、現代でも相場参加者の心理を表す代表的な「売り時」指標の一つです。

■2―資金管理について トレンドに従い、試し玉から投入
資金管理の法則その一が「金・資金を失うな」です。現金のない相場師は、在庫のない商店と同じであり、絶対に一定資金を守ることが鉄則です。

そのため、RPPのようなチャンスが訪れたと思っても、リバモアはすぐに全力投球することはありません。真の転換点になるかどうかを確認するためには、まず資金の20%を当て、2回、3回と、20%ずつを投入します。利益が乗り、トレンドの方向性に間違いがないと確認できたら、最後の40%を投入します。これは、空売りから入る場合も同様です。

当然、思惑が外れ、逆方向に動けば、追加の投入は行いません。決して、トレンドに逆らった押し目買いや、戻り売り、ナンピンを行わないのが、彼の絶対ルールです。

■バケット・ショップで学んだ10%ルール
資金管理の法則その二が「取引を開始するにあたり、ターゲットを設定すること」です。これは、購入数、どのように分割するか、目標株価、損切りラインのことです。

特に、「10%以上のマイナスは抱え込むべきではない」、というルールは肝に銘じるべきルールです。これは、リバモアが投機家としてのキャリアのスタート時に学んだルールです。

彼は14歳で親元を離れ、株式取引を行う店でチョークボーイとしてキャリアをスタートさせています。彼は株価を黒板に書き込む仕事をしながら、ボスの「重要なのは、ティッカーが伝える情報だけだ」という言葉に学び、値動きの規則性を研究していました。

15歳の頃には自ら取引も始め、バケット・ショップ(株価掲示板などがあり一見株式ブローカーと見間違うほどの呑み屋。“取引”や“記帳”はあっても資金は証券取引所に届かず、実際の株取引ではなかった)で大きな利益を上げることができました。

バケット・ショップでは、仮想“持ち株”が10%値下がりすれば強制的にゲーム終了となり、払い込んだ資金が全て店のものになるというルールがありました。それでも、当時は、リバモアのような元手の少ない一般市民が真剣勝負できるのは、この手のバケット・ショップだけだったようです。

バケット・ショップでの取引で作った元手と相場理論を引っ提げて、ウォール街に乗り込みましたが、半年で全てを失ってしまいます。

バケット・ショップではうまくいき、ウォール街では勝てなかった理由には、取引の注文から成立までの時差などもありましたが、バケット・ショップの「10%強制ロスカットルール」がかえって好都合だったこともありました。

この経験が、素早く損切りを行う彼のスタイルの根幹にあるのではないかと考えられます。

■「タイム・イズ・マネー」は間違いである
資金管理の法則その三が「常に予備の現金を確保せよ」です。賢明な相場師は忍耐の意味を知り、常に予備の現金を用意します。チャンスは、逃してしまったと思っても、また別のチャンスが訪れるためです。

どうしても我々は、持っている資金全てに常に意味を持たせたくなってしまいますが、彼に言わせればその意識こそが大敵と言います。

同様に、「タイム・イズ・マネー」も彼には間違いなのです。私もファイナンスを学び「貨幣の時間価値」が体にしみ付いているため、現金を遊ばせることはあまり良くないことだと考えがちだったので、「時間は時間、金は金」という彼の言葉は特に響きました。

「休むも相場」という格言がありますが、彼も「全く休みなく相場に張り付くという姿勢は感心しない」と言い、ときには市場から離れていました。大好きな沖釣りに興じることもあったようです。

成功のためには決して急いではならず、資金を遊ばせる時期を設ける必要があるのだと言います。それに我慢できないうちは、彼のいう「忍耐」を理解できていないのかもしれません。

■順風下で、思い切り走らせる
資金管理の法則その四が「あわてて利確をしない」です。

「勝ち銘柄は、全ての要因が順風下にある限り、そのまま動きに任せる」という、利益を最大限に伸ばす投資スタイルでした。

とはいえ、「思いつきで購入した株を永久に保有するという手法と混同してはならない」のです。この世の全て、不変なものはないため、ただ先を楽しみに保有してはならないと言います。ただし、地力のある株を手にしたら、危険シグナルが点灯するまで思い切り走らせろと述べています。

■弾丸を確保する
資金管理の法則その五が、「十分な成果を得たら、現金化」です。法則その四と一見矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、これは法則その三に近く、「弾丸の確保」のための意味合いです。

特に投入資金の2倍になるまで資金規模が膨らんだ場合、半額を銀行口座に戻すなど、取り分けることを勧めています。カジノで幸運が続いたときの賢い法則でもあります。

以上、5つの資金管理の法則は、彼が若い頃から失敗を重ねながらも確立した、珠玉の法則と言えるでしょう。

■3―感情の制御について 自らに合った手法を考案し、ルールに従うこと
リバモアは、株取引において、感情を制御することは最も重要だと語ります。取引に関わる辞書から「希望」という文字を排除せよと説き、希望を持ちながら行う取引は「ギャンブル」に過ぎないと言います。

また、自分なりの取引手法に忠実に従い、やり方をコロコロ変えたり、他人の忠告に耳を貸したりしてはいけないと言います。このルールも、リバモア自身が自らのルールを破ってしまった経験から来ています。ウォーレン・バフェットや、ニコラス・ダーバスの考え方と近いものを感じました。

■叩き上げの相場師が身につけた、珠玉の相場論
およそ100年近く前に活躍したトレーダーの話なのですが、新高値ブレイク法、トレンドフォロー、5つの資金管理の法則、そして心理との付き合い方など、現代のトレードテクニックの源流にもなっているのかと思えるほどの内容です。

巻末には、投資の鉄則が簡潔にまとめられているのも、本として便利で、さらに詳細を読みたいと思えば、その臨場感を本文から感じ取ることができます。読み物としてもおもしろく、ぜひ、本棚に置いておきたい一冊です。




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