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タザキの投資本案内「バフェットの財務諸表を読む力:大不況でも投資で活躍する58のルール」/永続的な競争優位性を持つ企業を財務諸表から見つけるには

  • 2024年2月10日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。これまでに投資・マネー系の本を300冊以上読破した経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介。24年2月2日には、著書「しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた」を刊行しました。

今回は「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール」(著:メアリー・バフェット、デビッド・クラーク/徳間書店)という本をご紹介したいと思います。

この本では、バフェットが重視する「永続的な競争優位性を持つ企業」の財務諸表の読み方や見つけ方が58の視点から紹介されています。

この本を読むことで、財務諸表の見方に関する新たな視点を得ることができました。すでに財務諸表の読み方を把握していると思っている方でも、この本から新たな視点を得られると思います。

■適正価格で優良株を購入する
バフェットの投資哲学を表す有名なフレーズとして、「そこそこの会社を割安で買うよりも、優れた会社を適正な価格で購入することで長期的にリターンを得られる」という言葉があります。このフレーズをタイトルに据えた、『とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法』(パンローリング)という本も存在するほどです。これは投資家向けウェブサイト運営者、チャーリー・ティエンの著作であり、こちらもバフェットの思考法に基づく客観的な分析が参考になります。

この背景には、バフェットの投資スタイルの変遷が見て取れます。若きバフェットは証券分析の巨匠、ベンジャミン・グレアムから投資の基本を学びました。しかし、グレアムのバリュー投資法にも弱点があり、マンガーから学んだ新しい視点はその弱点を補うものでした。それ以来、バフェットの手法はグレアム流のバリュー株投資と、グロース株投資が組み合わさった形に進化していきました。

■スーパースター企業の3つの法則
バフェットはスーパースター銘柄の経済性を解き明かせば、恩師グレアムの投資手法をさらに向上させられると考えました。その研究の結果、スーパースター銘柄は競争優位性を持ち、自社製品を他社よりも高く売ることが可能になっていました。これは大きく3つのモデルに分類されました。

1. ほかにはないユニークな製品を売っている会社
2. ほかにはないユニークなサービスを売っている会社
3. 一般大衆からの安定した需要がある製品もしくはサービスを、低コストで仕入れて低コストで売っている会社

このようなスーパースター銘柄には、価格決定権が働くため、十分な利益を残せると考えられています。

■損益計算書の法則:高い粗利益率の理由
バフェットは、売上高をさらっと確認したあと、個々の経費をじっくりと吟味します。利益は、どれだけ経費を抑えられるかが重要であると彼は考えています。

その1つに挙げられるのが、粗利益率が高いことです。

売上高から売上原価を引いたものが「売上総利益」または「粗利益」と称されるものです。

粗利益率は、売上総利益(粗利益)を売上高で割ったもので、売上に対する粗利益の割合を示します。永続的競争優位性を持つ会社は、この粗利益率が高いとされています。

例えば、バフェットがお気に入りの企業であるコカ・コーラは、同書の執筆時点では一貫して60%以上の粗利益率を維持しています。

コカ・コーラが高粗利益率を残せるのは、コストを大幅に上回る価格を設定でき、それにもかかわらず購入者がついてくるという特性があるためです。

■損益計算書の法則:営業経費を注視せよ
高い粗利益率を誇っていても、長期的優位性が失われることもあります。原因の多くは、営業経費の増大です。

次の3つのうちどれか1つでもコストが増大すれば、長期的な成長は破壊されかねません。

1.販売費及び一般管理費(SGA費)
販管費は一貫性を保つことが重要です。毎年、粗利に対するSGA費の割合が大きく変動する企業は、厳しい競争に苦しんでいる可能性があります。

粗利に対するSGA費の割合は、30%~80%と、業種により水準は異なります。しかし、低ければ低いほど、望ましいとされます。

2.研究開発費
バフェットが好む企業、たとえばムーディーズやコカ・コーラは、それぞれ研究開発費がほとんどかからないと言われています。特許がある、先進技術があるというのは一見よいように思えますが、それが本当に永続的な優位性なのか、疑問が残ります。

そう考えると、技術競争を続ける必要がない企業を、バフェットは好んでいると考えられます。

3.減価償却費
減価償却費は、いつも必ず発生している現実の経費です。機械も、建物も、長い年月をかけて劣化していきます。そして、必ず買い替えの時期が訪れます。

注意が必要なのは、EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)です。これはグローバル化に伴い、国際的な収益力の比較にも使われる指標です。比較の用途ならば理解できますが、企業の永続的な優位性を評価する場合には、減価償却は無視できません。優位性を持つ企業は、減価償却費の割合が低くなる傾向があるとされています。

■貸借対照表の法則:流動比率で企業の優劣は決まらない
一般的には、流動比率(流動資産/流動負債)は120%、もしくは200%以上が必要だと言われますが、バフェットはこの法則に異を唱えます。

事実、バフェットが投資するコカ・コーラやプロクター&ギャンブルの流動比率は、2022年度ではそれぞれ約114%、約65%でした。

一般的には、これらの流動比率だと、返済に窮しているように思われがちです。しかし、これらの企業は実際には高い収益力を持っており、流動負債の返済は容易です。

また、優良企業は高い収益を高額な配当や自社株買いに投じるため、現金保有高を減らし、結果的に流動比率を下げています。

これらの事例から、流動比率だけで企業の競争優位性を判断することは難しいと言えます。

■貸借対照表の法則:長期借入金は少量もしくはゼロ
バフェットは、永続的な競争優位性を持つ企業は、長期借入金がゼロか少ないと考えています。

直近10年間の状況を確認し、長期借入金がほとんど発生していない場合、何らかの競争優位性がある可能性が高いとされています。

バフェットの投資履歴から見ても、長期借入金を毎年の純利益で、3~4年分で返済できる程度しか借りていない企業が多いことが分かります。

2022年度の実績では、アップルでもプロクター&ギャンブルでも、純利益の2~3年分で返済が可能でした。このような企業は投資の有力候補となります。

■内部留保の着実な増加
企業が内部留保を着実に増加させることはよい指標です。内部留保の安定的かつ長期的な増加は、永続的な競争優位性を持つ企業の特徴と言えます。

損益計算書を見る際、全ての費用を差し引いたあとに残るのが純利益です。この純利益の使い道は主に「配当に使う」「自社株を買い戻して株主還元をする」そして「内部留保を積み上げる」の3つです。

配当を多く出す企業や、自社株買いを頻繁に行う企業もありますが、利益のすべてを内部留保として貯蓄する企業も存在します。

同書では、内部留保が増えていく企業を高く評価しています。内部留保の増加は、決算書から純利益を算出し、そこから配当や自社株買いに使用した金額を引くことで計算できます。配当や自社株買いは株主への還元ですが、内部留保は企業の成長のための投資として利用されます。

「IRバンク」というサイトで、銘柄を検索し、財務状況の中の「利益剰余金」の推移をみるのが私のおすすめです。

バークシャー・ハサウェイの例を引用すると、バフェットが経営権を取得した日から、配当の支払いをやめ、内部留保を積み上げ始めました(ちなみに、バークシャー・ハサウェイは、元々は繊維会社です。経営が傾いたため、バフェットが買収し、投資会社として再建しました)。

そして、市場が暴落するチャンスが来るたびに、その内部留保を使って投資を行いました。これがバークシャー・ハサウェイの資本利益の大きな成長につながりました。

つまり、永続的に成長するためには、株主への還元だけでなく、企業自身の成長のために投資することが重要なのです。

■【まとめ】財務諸表の見え方が変わる58のルール
同書では、財務諸表を通じて見るべきポイントを全58のルールという視点から解説しています。

本書は約10年以上前に出版されたものですが、示されている考え方は、今でも十分に通用します。長期投資を志向する方々にとって、ぜひ読んでいただきたい一冊です。



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