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コーヒーで旅する日本/東海編|コーヒーをきっかけに、人と出会い、感性を磨く一助となる。「Q.O.L.COFFEE」

  • 2023年7月19日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第31回は、名古屋市中区丸の内にある「Q.O.L.COFFEE」。世界中から厳選した個性豊かなスペシャルティコーヒーを自家焙煎して提供するカフェだ。約14種類ものコーヒー豆を扱い、トーストメニューやスイーツなどのフードも充実。店内にはさりげなくアート作品が飾られ、2階では不定期で上映会や作品展を行うなど、ギャラリーとしての一面もある。

一方では、パソコン作業や打ち合わせなど、仕事の場として利用する人も多く、お客それぞれが多種多様な目的を持って集まってくる。オーナーの嶋 勇也さんが「コーヒーにまつわるすべてを提供したい」と話すように、ただコーヒーを飲むだけに留まらず、訪れる人にプラスアルファの出会いや気付きをもたらしてくれる場所だ。

Profile|嶋 勇也(しま・ゆうや)
1982年(昭和57年)、愛知県名古屋市生まれ。小さい頃から「喫茶店をやりたい」と夢を抱き、高校卒業後は調理師専門学校へ進学。その後、レストランで働き、22歳で名古屋・久屋大通の「加藤珈琲店」に入社。スペシャルティコーヒーを知り、コーヒーにより深い興味を抱くようになった。岐阜県各務原市に本店を構える「珈琲工房ひぐち」でエスプレッソマシンや焙煎機の扱いを学んでいた頃、サードウェーブの波に遭遇。33歳でオーストラリア・メルボルンへ渡る。帰国後は、名古屋の老舗コーヒー店「ボンタイン珈琲」で働きながら物件を探し、2017年に「Q.O.L.COFFEE」をオープンした。2022年には、名古屋パルコに2号店をオープン。Qグレーダーの資格を取得し、ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップの審査員も務める。

■カフェであり、ロースタリーであり、ギャラリー
「Q.O.L.COFFEE」は、名古屋随一の繁華街である栄エリアから、名古屋随一の観光名所である名古屋城へ向かうルート上にある。メインストリートのひとつである大津通をまっすぐ北上するだけなので、多少距離はあるものの意外と歩いて移動する観光客は多い。「徒歩で移動する人たちがちょうど休憩したくなる場所にコーヒー店があれば喜ばれると思い、この場所に開業を決めました。名古屋のセントラルパークこと『Hisaya-odori Park』も近いので、テイクアウトして公園で過ごすのもいいですね」と話す、オーナーの嶋 勇也さん。大津通と外堀通という大きな通りの交差点に佇む青い外観のカフェは、2017年にオープンするやあっという間に人気店となった。

カフェであるとともに、店頭に設置した焙煎機で少量ずつ焙煎するロースタリーであり、扱う豆はどんどん増えて今や14種類になった。100グラム1000円程度のスタンダードラインでは、世界各国から幅広いキャラクターの豆をチョイスしている。

ほかにも、100グラム2500円を越える特別なコーヒー豆をラインナップ。スペシャルティコーヒーの中でも特に評価が高く希少な、カップオブエクセレンス入賞豆などを扱っている。カフェで味わう場合は1杯1050円からオーダーでき、コーヒーの奥深さを実感できると好評だ。

コーヒーのお供にぴったりなスイーツは、すべて手作り。タルト、チーズケーキ、パウンドケーキ、シュークリームと、すべて店内で焼き上げている。

夏の新商品として登場したばかりの、コーヒーアイスクリームゼリーも好調だ。コーヒーゼリーに、ラムレーズン入りのコーヒーアイスクリームをトッピング。コーヒーの風味を存分に楽しめる、贅沢な大人のスイーツに仕上がった。

フードはトーストやサンドイッチなどの軽食を用意。カフェでありながら、レストランで働いていた経験を持つ嶋さんのフライパンさばきは見事なもの。アツアツのだし巻き卵で作る厚切りだし巻きサンドイッチはインバウンドや観光客、地元の方にも人気のメニューになっている。

店を彩るアート作品にも注目したい。外壁にはポップなストリートアートが描かれ、インテリアやカップにも作家ものをセレクトしている。「根幹にはコーヒーがありますが、コーヒーを通じて人との出会いの場となったり、くつろぎの時間を過ごしたり、アートに触れて感性を広げたりできる場所になればいいなと思っています」と嶋さん。

2階はギャラリーを兼ねており、不定期で多くのアーティストが作品展を開催。コーヒーを飲みながら、アート鑑賞ができる場になっている。

町の様子を眺められる窓際のカウンター席や、打ち合わせにぴったりの広いテーブル席があり、パソコン作業をするノマドワーカーもちらほら。プロジェクターを設置しているので、壁をスクリーンにした上映会も可能だ。

■甘さ、クリアな味わい、余韻がポイント
比較的浅めの焙煎が多い「Q.O.L.COFFEE」では、豆の風味を生かした焙煎が持ち味。ユニークな豆の特徴を、丁寧に表現している。「オープン当初は、ラッキーコーヒーマシンの4キロ焙煎機を使用していましたが、現在は世界大会で公式でもあるギーセンの6キロ焙煎機になりました。気に入っています」

ドリップはキントーを使用。「抽出にも、カッピングと同じようにいろいろな味を取るポイントがあります。いろいろなドリッパーを試した結果、キントーが一番よく自分が想定したポイントを出せたので、採用しました」

抽出後は、カップに移さずサーバーのままで提供。自分のタイミングでカップに注ぎながら味わうひと手間も、コーヒーの楽しみのひとつだと感じた。コーヒー豆のデータを記した紙を添えるのも特徴的だ。味わいのチャートを見ながら、実際に自分がどのように感じるのか確かめられるのが興味深い。

エスプレッソマシンは、ラ・マルゾッコのストラーダを使用。「ラ・マルゾッコのマシンはやっぱり安定していますね。ストラーダは圧力を変えられるので、扱いは難しくなりますがマニュアル感が楽しいというか、味づくりをしやすいところもポイントです」

エスプレッソに使う豆は、その日のラインナップから日替わりで決まっている。しかし、「この豆でラテが飲みたい」とオーダーすれば、追加料金で対応してくれるケースもあるそうだ。ドリップと同じく、使用した豆のデータを記した紙を添えて提供してくれる。

■嶋さんが歩んだ、コーヒー漬けの20年間
「小さい頃から喫茶店をやりたいと思っていましたが、当時は特別コーヒーが好きなわけではありませんでした」と話す嶋さんがコーヒー店に方向転換したのは、名古屋・高岳の「加藤珈琲店」に入社したことがきっかけだった。「休憩中に飲むコーヒーが『いつも飲んでいるコーヒーと違うな』と思ったんです。いろいろな豆を日替わりで飲めるのですが、味がそれぞれ違っていて『おもしろいな』と。それからスペシャルティコーヒーの存在を知って、風味豊かな味わい、豆ごとに違うキャラクターにハッとしました。だんだんと、将来の夢が喫茶店からコーヒー店にシフトしていきました」

「加藤珈琲店」はドリップ専門であり、エスプレッソメニューはない。「将来的にコーヒー店を経営するならドリップ以外もやりたいと思い、岐阜県各務原市の『珈琲工房ひぐち』でお世話になりました。エスプレッソマシンや焙煎機を扱いながらバリスタ・焙煎士としての経験を積んでいくうちに、サードウェーブの波が到来。海外にも目が向くようになっていきました。それで、海外で働くための資金を貯めて、オーストラリアのメルボルンに行くことにしたんです」

「メルボルンで過ごした半年間は、コーヒーの勉強よりも、日本とは違う世界のコーヒーカルチャーを肌で感じられたことが大きな収穫でした」と嶋さん。メルボルンのコーヒーの在り方は町の一部であり、人々の日常となっていることに感銘を受けたという。帰国してからすぐに物件探しに取り掛かり、2017年に「Q.O.L.COFFEE」をオープンした。22歳でコーヒー業界に入り約20年間、コーヒー漬けの日々を過ごしてきた嶋さんだが、まだまだやりたいことは尽きないという。

■名古屋のコーヒーシーンの未来を見据えた挑戦
2022年、名古屋パルコに出店した2号店は、本店とは違って客席のないコーヒースタンド。「パルコを利用する若い世代にコーヒーカルチャーを知ってほしい」と、ポップなスタイルを意識した店舗になった。ドリッパーもビジュアルのかわいいORIGAMIを使用。普段はコーヒーを飲まない層からも注目を集めている。

さらに、今年は大きな野望を実現したいと意欲的だ。「2023年6月に周年を迎え、7年目に突入しました。今年の目標は、名古屋でもコーヒーフェスを開催すること。全国的でも盛り上がっていますから、名古屋でも開催したいです。全国からコーヒー店を招いて、ローカルの人気フードや雑貨も集めて、コーヒーとの出会いの場になったり、コーヒー好き同士のコミュニティが生まれる場になればいいですね」と、今後の展望を語ってくれた。店の外壁に描かれたストリートアートには「人種を問わず、骨になるまでコーヒーを楽しみたい」というメッセージが込められている。名古屋のコーヒーシーンを熱く盛り上げるべく動き出した嶋さんのこれからに、ますます目が離せなくなりそうだ。

■嶋さんレコメンドのコーヒーショップは「TRUNK COFFEE」
「2014年にオープンした『TRUNK COFFEE』は、名古屋のみならず日本のコーヒーシーンを語るうえで欠かせない店でしょう。ORIGAMIドリッパーのプロデューサーでもありますし、ほかでは扱えないような個性の尖った生豆を仕入れてその魅力を紹介していますし、『シーンに影響を与えたい』というスタンスが素晴らしいと思います。国内では名古屋市内に3店舗ありますが、それぞれに違ったキャラクターがあって、そういう店舗展開もおもしろいですね。さらに、共同経営者の鈴木さん、田中さんのお二人以外にも、これからのコーヒーシーンを担っていく若手が育ってきています。ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ2022で優勝した石原さんは、日本代表として世界大会に参加しました。どんな経験をしてきたのか、それをどう生かしていくのか、今後が楽しみです」(嶋さん)


【Q.O.L.COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/ギーセン半熱風式6キロ
●抽出/ハンドドリップ(キントーSCS-S04ブリューワー)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ ストラーダ)
●焙煎度合い/浅煎り~中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム950円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


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