
江戸で人気の袋物屋・三島屋を訪れた客が、聞き手のおちかだけに胸にしまってきた怖くも不思議な話を語る江戸怪奇譚「三島屋変調百物語」。宮部みゆきさんのホラー時代小説を原作とし、宮本福助(@fukusuke_m)さんによって漫画化された「三島屋変調百物語」のコミックス1巻が2023年6月7日に発売された。今回は、本作を描くことになったきっかけや裏話などについて、宮本福助(@fukusuke_m)さんにインタビューした。
――「三島屋変調百物語」を描くことになったきっかけについてお聞かせください。
今お世話になっている担当編集さんとオリジナル作品を立ち上げようとしていたのですが、自分が描いたものが全くおもしろく感じなくて、完全にドツボにはまっていた時期がありました。そんな折に飼い猫が病気になって、無職なのに治療費がドンドン出ていって「これは無職ではいられない…!」と思い、なんでもいいので仕事くださいとお願いしたら「こういうのがあります」とご紹介いただいたのがきっかけです。
――本作を描くにあたり、工夫された点を教えてください。
原作の登場人物の語り口調がとても好きなのですが、そのまま漫画にしてしまうとどうしても長くなってしまうので、台詞が多すぎないようにしています。三行以内に台詞を収める、それより長くなる場合は段落を分けるなど。見やすい画面を工夫というよりは心がけている、という感じです。
――本作を描く際に、どのような点に苦労されましたか?
原作がこんなにおもしろいのだから「まんま描けばいいんじゃないの?」と思いましたが、いざやってみたら『曼珠沙華 前編』だけでネームが軽く100ページを超えてしまいました…。そこからは担当さんといかに漫画用にメリハリをつけるか、どこを削りどこを大きく見せるかなどをひたすらネーム調整しています。毎回苦労しているのはここですね…。
――彼岸花は縁起の悪い花で知られていますが、宮本福助さん自身は彼岸花にどんなイメージがありますか?
パッと出てくるイメージは、横溝正史さんの世界です。なにやら事件が起こりそうな感じがいいですよね。縁起が悪そうなところも含めて…!
――コミックス発売にあたり、読者にメッセージをお願いします。
素で原作ファンなので布教の気持ちで描いているところもあり、漫画版を読んで「原作読んでみようかな」って思ってくださるとすごくうれしいです。でも忙しい現代、小説を読む時間が取れないな~なんて方は、漫画版をさくっと読んで頂けるとこれまたうれしいです。つまりどちらもよろしくお願いしますってことなんですが…!
一番気になるのは、原作既読の方の反応です。世界観を壊さず漫画にできているでしょうか…大丈夫でしょうか…。私も「三島屋変調百物語」ファンの一人として精一杯頑張ってコミカライズしますので、一緒に主人公・おちかちゃんの成長を見守ってもらえるとうれしいです。今後ともどうぞよろしくお願いします!
「三島屋変調百物語」1巻では、紹介した「曼珠沙華」と「凶宅」の一部を収録している。客が語る『変わり百物語』の内容だけでなく、おちかの抱える過去と成長も気になるところだ。宮本福助(@fukusuke_m)さんの漫画に関する情報はTwitterでも投稿されているので、ぜひチェックしてほしい!
取材協力:宮本福助(@fukusuke_m)