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タザキの投資本案内「ウォール街のランダム・ウォーカー」/投資を勉強するなら、本棚にまず置いておくべき1冊

  • 2023年3月14日
  • Walkerplus

こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。今回は「ウォール街のランダム・ウォーカー 原著第12版」(著:バートン・マルキール/日本経済新聞出版)を取り上げます。

■ウォール街のランダム・ウォーカー
「ウォール街のランダム・ウォーカー」は、初版が1973年に出ていて150万部以上売れているベストセラー本です。私が初めて読んだのは、投資を始めたての頃です。面白い皮肉も随所に効きまくった1冊なので、ページ数は多いですが、初心者の頃でも意外と楽しみながら読めました。また投資の流派を俯瞰的に眺めることができるのがいいですね。この記事では、最新の第12版を解説していきます。

古い本と思われがちですが、最新版では、第3部「新しい投資テクノロジー」で「スマートベータ」や「リスクパリティ」が、「市場の狂気」の章では「仮想通貨」に関する話が追加されているなど、新しい知識と、時の試練に耐えた普遍的な知識の両方を学べるようになっています。

特定の手法を賛美するものではなく、二大流派として「ファンダメンタル価値」学派と「砂上の楼閣」学派を比較するような内容です。

■株式投資は美人投票
「砂上の楼閣」というのは美人投票理論に例えられます。これは有名な経済学者のケインズが、昔のイギリスの新聞で実施されていた美人コンテストに例えたという話です。

このコンテストでは、誰が美人投票で1位を取るか予想して応募するものだったので、自分の好みよりも「皆が投票しそうな人に投票する」というものになっていました。砂上の楼閣理論もこれと同じで、「皆が買って上がりそうな銘柄を選ぶゲームである」ということになります。心理戦の読み合いで、株価が決まるということですね。

しかし時として、砂上の楼閣は一気に崩れ去ることもあります。その企業の本質的な価値が変わっていないにも関わらず、です。

そして対照的なのが、企業の本質的な価値を分析する「ファンダメンタル価値」学派で、ウォーレン・バフェットもこちらに属すると考えられます。

■ウォーレン・バフェットも使うファンダメンタル価値
ファンダメンタル(本質)価値という絶対的な価値は、現状分析と将来分析を注意深く行うことで推定できるという流派です。

株価は心理によって上がったり下がったりするものの、いずれファンダメンタル価値に修正されていくため、割安な時に買い、割高な時に売ることでリターンを得られるという考え方です。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、EPS(一株当たり当期純利益)などに代表される数々の株価指標の分析、DCF法といった将来の価値に基づく分析などを駆使します。

砂上の楼閣派からは「やることが多い割に結果が出ない」などと批判されることもあり、本質的な価値を正しく分析できたとしても、そこに収れんするまでに長すぎる時間がかかることもあります。

■投資界の不都合な真実
さて、それらのような分析手法を駆使するプロたちが運用するアクティブ投資信託が、ただ市場の平均リターンを享受するだけのインデックス投資信託に対して、長期的にはほとんどの商品が負けてしまうという現象が何十年も前から続いています。

これは業界の「不都合な真実」として語られており、投資初心者たちがその世界の厳しさを認識させられる事実でもあります。

インデックスファンドを上回るためには、より多くかかるコストを踏まえた上での超過リターンが必要であり、それを継続するためには類い稀なる能力が必要にもなります。

そこに挑むことは投資家の性というか醍醐味でもあるわけですが、調査の過程すらも楽しめるようでなければ、インデックスファンドを買うことが個人投資家としては正しい戦略なのではと思います。

■バブルという砂上の楼閣の崩壊
バブルの歴史についても非常に詳細にまとめられております。とはいえ「新訳 バブルの歴史」の中でチューリップバブルや南海泡沫事件には触れているので、印象的なフレーズのみを抜粋します。

かのニュートンもバブルの崩壊で大損を被るほど、バブルの列からうまく抜け出すのは簡単なことではありません。誰もが“自分たちよりもっと愚か者が存在する”と信じてしまうからです。

自分よりももっと情報を得るのが遅い人間が、次々と買い続ける限り、バブルは崩壊しません。「最後まで残っていなければセーフ」と言わんばかりのババ抜きのような状態になります。しかし、その「より愚かな者」の供給はいつか必ず途切れます。

そのサインの一つとして、「靴磨きの少年が株の話をしだしたら株価の暴落は近い」という言い伝えもあります。普段は株に興味も示さないような人まで株の話をしだしたら、天井が近いということです。

人間のバブル崩壊に関する記憶力は非常に乏しいものですが、過去の事例を学ぶことは大いに参考になります。本書で学べるバブルの歴史は、最高の教訓になるでしょう。

■ウォール街の3つの歩き方
最後の第4部は「ウォール街の歩き方の手引」として3つの歩き方が解説されています。

1…思考停止型
1つ目は思考停止型です。その名の通り、余計なことを考えずにインデックス・ファンドを買う方法です。つまらない方法かも知れませんが、投資先進国である米国の大企業の年金も、かなりの部分がインデックス運用されています。

また株式以外の、債券や不動産投資にも、インデックスファンドで投資することができます。自分に合った資産配分で、低コストでポートフォリオを組めるのもメリットです。第14章には「ライフサイクルに応じたアセット・ミックス」も掲載されていますが、インデックス・ファンドのみでも、再現することは可能だと思います。

2…手作り型
著者が最もおすすめするアプローチがインデックス・ファンド投資でしたが、それでは退屈だと感じる方には、自ら有望銘柄を探す手作り型アプローチが参考になります。手間もかかる上、長期にわたり勝ち続けられるのはごく一部ですが、銘柄選択で成功するための4つのルールを以下にまとめます。

・ルール1 少なくとも五年間は、一株当たり利益が平均を上回る成長を期待できる銘柄のみを購入すること

言うほど簡単ではありませんが、一株当たり利益(EPS)の成長は株の利益の源泉であるため、それに期待した市場での株価収益率(PER)の成長も同時に高まる可能性があります。

・ルール2 企業のファンダメンタル価値が正当化できる以上の値段を払って株式を買ってはならない

仮にEPSの成長が見込める企業であっても、既に株価が割高な水準にあれば、リターンは見込めません。そこで重要な基準値がPERです。市場平均のPERと比較し、あまり上回っていない銘柄を買うべきだとされています。

これは「低PER戦略」とは異なり、市場平均よりやや高いPERであっても、将来の期待成長率が市場を上回っていれば問題ありません。「相対的低PER戦略」と表現されています。 GARP(Growth at Reasonable Price)戦略とも言われます。

・ルール3 近い将来、「砂上の楼閣」作りが始まる土台となるような、確固たる成長見通しのある銘柄を購入するとよい

市場の心理的要因のみで株価は動いているわけではないとはいえ、成長ストーリーが他の投資家にアピールするようなものかどうかを、検討すべきだと言われます。その他の投資家たちが押し寄せる数カ月前に仕込むことが成功の鍵です。

・ルール4 なるべく売買の頻度を減らすべし
売買頻度を増やして最も得をするのは、手数料を儲ける証券会社です。ただし負け犬銘柄は容赦なく損切りしなければなりません。特に年末には、含み損があれば、キャピタルロスをキャピタルゲインと相殺して節税することを検討したいです。

3…専門家型
最後は、シンプルに良い専門家を雇えということですね。多くの少額の個人投資家の場合は、手数料が割高になることを避けるため、基本的には1か2を選ぶべきかと思います。

■まず履修しておくべき投資本の超定番
多数のデータを元にして、相場の歴史や、各流派のメリット・デメリットを網羅的に学ぶことができる1冊。投資の勉強をするなら、まず履修しておくべき本でしょう。

何度でも読める充実した内容、ボリュームは素晴らしいので、とりあえず本棚に置いておいて損しません。

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