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書店員のお仕事ってこんなに大変なの!?書店員兼漫画家が描く“書店員あるある漫画”に迫る

  • 2023年1月4日
  • Walkerplus

書店員の仕事といえば、どのような業務を思い浮かべるだろうか。本の発注やコーナー作り、ポップ制作、レジ打ちなどが想像できるが、実はこれらは氷山の一角。客が普段目にすることのない裏方の仕事がたくさん存在する。そんな書店での仕事の裏側や苦労話、楽しさなどを4コマにまとめているのが、書店員歴10年のいまがわゆいさん(@othellolapin)だ。

いまがわさんは書店員として働く傍ら、漫画家としても活動中で、過去にはTwitterを中心にSNSで「書店員あるある」を連載していたことも。ポップで親しみやすい作風と書店員の一喜一憂が垣間見えるストーリーにファンが増え続け、2022年5月にはついに『本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』(廣済堂出版)が発売された。

漫画家として活動しながら書店員を続けるいまがわさんは、どんな経緯で書店員の仕事を漫画にすることになったのだろうか。そして書店員の仕事の魅力とはどのようなところにあるのだろうか。いまがわさんに漫画を描き始めることとなった経緯を聞いた。

■「魅力を知って欲しかった」書店員4コマを始めた理由
22歳から書店員として本屋に勤務しているいまがわさん。働きながら漫画家やイラストレーターとしても活躍し、東京や大阪で開かれる自主制作漫画の展示即売会を行っている。発表している作品のなかでも特に人気なのが、書店員の仕事を4コマでまとめたコミックエッセイ。「書店員の仕事内容やリアルな書店事情などがおもしろい」と評判だ。そんないまがわさんが4コマを描き始めたのは、「ほかの書店員や書店好きな人々との繋がりがほしかったから」だったそう。

「私にとっては“日記のようなもの”という側面もありましたが、書店員さんと気持ちを分かちあったり、書店員の仕事の魅力を未経験の人にも知ってもらいたいという気持ちで始めました。文章より漫画のほうが見ていておもしろいのと、自分自身もTwitterで漫画作品に出合うことが楽しいので、自分でも発信をしてみようかなと思ったのがきっかけでした」

書店員の仕事は客の目線からでは見ることのできない部分も多く、例えば書籍の発注や荷解き、コーナー作り、シュリンク包装の作業など、裏方の仕事が意外と多いのも特徴だ。そんな見えない作業の多い書店員の仕事を、多くの人に伝えたいと思ったのが4コマを描いた理由だ。

「いろんな仕事の話を聞いたり、職場の裏側を教えてくれるコミックエッセイなどを読むのが大好きなので、私も書店の裏側を伝えられたらおもしろいんじゃないかなぁと思っています。書店は誰でも気軽に立ち寄れる場所だからこそ、『あの作業にはこんな意味があったのか!』と、見ていただいた方に楽しんでもらえたらうれしいですね」

いまがわさんが漫画を描くうえで心掛けていることは、書店員未経験の人の目線に立つこと。知らない人から見たらおもしろい「非日常」でも、書店員から見れば「日常」の光景。そのため、日々の業務に溶け込んでいるネタを掘り出しては、どのように描けば伝わるかを考えていくのがいまがわさんのこだわりだ。

「仕事中になにか漫画のネタを思いついたら、エプロンのポケットに入れているネタ帳に殴り書きして、そこから4コマにしたことも多かったですね。字が汚くて読めないこともよくありましたが(笑)」

■書店員の仕事は魅力もあれば苦労もあり!
いまがわさんは書店が好きすぎて「職場に住みたい!」と思ってしまうほど、いわば“本屋の虫”。書店員の仕事は本を見続けることができるため、本好きにはたまらない仕事だ。いまがわさんは書店員の仕事にどのような魅力を感じているのだろうか。

「書店員の仕事の魅力は、素敵な本が入荷するのをいち早く見られることです。書店には毎日本が入荷するのですが、その本をブックトラック(移動できる本棚)に本のジャンルごとに並べます。そこに並ぶ新刊を見て、『これは装丁がきれいだな』『この紙とインク、素敵だな』と毎回ワクワクします」

そんないまがわさんが毎年楽しみにしているのが、毎年夏に行われる文庫のフェア。それぞれの出版社が用意しているノベルティがどれもこだわり抜いたものばかりで、その時限定のオリジナルのカバーや拡材にいち早く触れられる瞬間が幸せなひと時なのだそうだ。

「お客様にノベルティを選んでもらう時も楽しいです。本を楽しそうに選んでいるお客様や、お目当ての本を見つけてうれしそうに購入される姿を見るとほっこりします。また、自分が描いたポップの本をレジで販売したときはうれしくて変な汗をかいたこともありますね(笑)。ほかには、出版社の営業担当さんが書店に来たときもワクワクします。本についての情報交換や世間話は心を潤わせてくれるんです」

一方で、意外と力仕事が多くて筋肉がついてしまったりと、書店員だからこその苦労も多いのだとか。特に仕事をするうえで苦悩しているのが、来店客に対してスタッフが少ないことだという。

「スタッフが少ないと、お客様は問い合わせる人をわざわざ探すことになります。また、問い合わせを受けると本探しに走り回ったりと、スタッフも1人でこなす仕事の負担が増えてしまいます。そして対応をしているうちに必要最低限の作業しかできなくなり、整った売り場作りをすることが難しくなってしまうんです」

書店員の1人当たりの業務量は想像以上に多いのが現状だ。そのため、来店者のフォローや書籍の問い合わせなどに追われてしまうと、売り場が回らなくなることも。丁寧な対応ができない書店の状況を解決するために、人手不足の改善が早急な課題だといまがわさんは話す。

「学生アルバイトさんには、レジはもちろん、裏方のお仕事をお願いすることが多いです。ですが本を書棚に入れたり発注したりなどの本屋らしい仕事をしてもらって、『書店は楽しいよ!』と伝えたいと思う反面、自分のことでいっぱいいっぱいになり、そこまで力及ばずに歯痒い思いをすることもあります」

■ずっと本と関わる人生に…いまがわさんが抱く大きな夢
前述したとおり、いまがわさんは書店員の傍ら、クリエイターとして幅広い活動を行っている。2022年には書籍が発売されたことで、著者として出版イベントをこなしたりと、新たな肩書きを持ちながら書店員の仕事を続けている。

そんないまがわさんには、1つの大きな夢が。いつかイラストレーターとして本の装丁を描いてみたいそうだ。自らが手掛けたカバーの書籍を新刊入荷時に「この本の表紙、私が描いたんやで」と自分自身に自慢しながらニヤニヤ眺めるのが夢だという。だが、ほかの仕事をすることになったとしても、書店員は続けて行きたいというのがいまがわさんの願いだ。

「私は本が好きなので、今後もできる限り続けていろんな良い本を現場から発信したいです。将来的に書店員でなくなることがあったとしても、どんな形であれ本に関する仕事をしていきたいです」

2022年秋には地元の岡山から京都に引っ越し、京都市内の書店で書籍の販売に打ち込んでいるという。人には向き不向きというものがあるが、本に囲まれながら本を発信し、さらに自分でも生み出していくいまがわさんにとって、書店員は天職なのではないだろうか。これからの活動からも目が離せない。

取材=織田繭
文=福井求(にげば企画)

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