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【漫画】現役の僧侶が描く漫画から、仏教の教えを学ぶ。「1日1日を生きられていることが奇跡みたいなもの」/ヤンキーと住職

  • 2022年10月11日
  • Walkerplus

仏教やお経と聞くと、なんとなく堅苦しいイメージを抱く人も多いのでは?現役の僧侶(浄土真宗本願寺派)である近藤丸さん(@rinri_y)が描く漫画「ヤンキーと住職」は、仏教が大好きなヤンキーと少々頭でっかちな住職とのやりとりから、仏教の教えをわかりやすく伝える漫画。読者からは「興味深い」「ためになった」「書籍化してほしい」との声が多く寄せられている。

ウォーカープラスではそんな「ヤンキーと住職」の中から特に印象的なエピソードを厳選し、近藤丸さんのインタビューと共にご紹介。今回は、どことなく儚さを感じる言葉「諸行無常」の本当の意味について。

ヤンキーの特攻服に刺繍されていた「諸行無常」の文字を見た住職。意味を知っているのか聞いてみたところ、「はかなさへの目覚め」との答えが。そして「諸行無常」をはじめて感じた、ヤンキーの悲しい過去が明かされる…。

■お経はお葬式で読まれるもの?本来は日常生活でいつでも読むべきもので、人間のさまざまな悩みに対する解決方法が説かれている

高校時代、友人が突然亡くなったことがきっかけで、仏教に興味を持ったヤンキー。お経と言えば「お葬式」が真っ先に浮かんでくるが、そもそも最初からお葬式で読まれることを想定されたものなのだろうか。作者の近藤丸さんに聞いてみた。

「いえ、お経はインドの言葉で『スートラ』と呼ばれるもので、分かりやすく言えばお釈迦様(釈尊、釈迦牟尼)の教えをまとめたものです。目覚めた人(仏陀)の言葉です。お釈迦様は相手の悩みに合わせて、さまざまな苦しみ解決方法を説きました。これを『対機説法』といいます。だから、沢山のお経が残されているのです。8万4000もの教えがあることから、『八万四千の法門』などと言われることもあります」

お経は決して亡くなった人だけのものではなく、あらゆる悩みや苦しみの解決方法が説かれているのだそう。ではなぜ生きている人のためのお経が、お葬式で亡くなった人のために読まれるようになったのだろう。

「お経と一口に言っても、書いてある内容はとてつもなく幅広いです。ものすごく簡単にざっくり言うと、あらゆる人間に対して『大切な事に目覚めてくれ』と書かれています。ですからお経は、本来は『生きている者が、どんな時でも聞くべきもの』として残されているのです。つまり、ことさらにお葬式の場で読むことを想定されたものではありません。

ただ、人が死にゆく葬儀の場はある意味、人生で最も大切な場。そこで仏様の教えを聞くことが、仏教の伝統の中で大事にされてきました。仏教徒は、亡き人をしのびお別れをするという儀式を通して、仏様の教えを聞く縁を頂いてきたのです。そういう意味でやはり別れの場、悲しみの場がお経を聞く機縁となることが多くなりますね。しかしお経は本来、日常生活の中で、いつでも読ませていただくべきものなのです」

■タイプの異なる2人と仏教の教えが起こす化学反応を、自身もワクワクしながら執筆
普通は住職がヤンキーを仏教の教えで導きそうだが、そうではないところが「ヤンキーと住職」の面白さ。ヤンキーは、知識はないが実直な性格と豊富な人生経験で、住職よりも素直に仏教を理解している。その理解力は、作中で住職が思わず「師匠と呼ばせてください!」と言ってしまうほどだ。

近藤丸さんはこれまで、仏教学校の教師時代を描いた作品や、自身のお盆参りなど数々の漫画を執筆しているが、この「ヤンキーと住職」はどのような作品なのだろう。

「いずれ漫画の中にも描いていきたいなと思うのですが、私自身が漫画の住職と同じく、寺の生まれではありません。でも、中学生の頃に出会ったお坊さんや、仏教の教えに少なからず助けられたところがあり、僧侶になるご縁を頂きました。仏教ってすごく奥が深いですし、人生の苦難に寄り添ってくれるような教えだと感じています。

私自身まだまだ勉強中で、仏教の教えを分かっているとはとても言えないのですが、仏教の言葉に出会って感じたことや教えられたことを、表現出来たらなぁと思っていました。そんな時、漫画仲間とのやり取りの中で思いついたのが『ヤンキーと住職』でした。この作品は私の中で、自分が出会ってきた仏教や言葉との出会いから教えられたことをなるべくストレートに伝える作品になっています。仏教高校時代の経験をエッセイにしたものも好きな作品ですが、一番こだわりをもって描いているのが『ヤンキーと住職』です」

近藤丸さんが心を動かされた仏教の教えを、わかりやすく描いた漫画「ヤンキーと住職」。正反対の2人の会話からどんな話が生まれるのか、自分でも興味深く思っているそう。

「この2人と仏教の教えが化学反応を起こすことで、どういう話が生まれるのか?自分自身、興味を持ちながら毎回制作しています。ただ、ものすごく悩みながら描いているので遅筆というか、少しずつしか描けない点がもどかしいのですが…。真面目に描きつつも話自体はゆるいので、暇な時に気軽に読んでいただけると有難いですね。

でも、この話はあくまで私が教えや、教えの言葉に出会って感じたことでしかないので、正解とかではありません。間違って自分勝手に捉えている部分もあると思うのです。私としては一番の願いは、これをきっかけに読者が自分自身で、直接お釈迦様の書いたものや、仏教の伝統の中に生きた僧侶の言葉に直接あたってもらって、深く考えてもらうことです。仏教の言葉は、自分の人生や悩みのうえで聞いていくべきだと思うんです。そういうことが本当に大切だと思っています」

テーマは深いけれど読みやすく、2人のやりとりが微笑ましい「ヤンキーと住職」。次回はどんなことを教えてくれるのか。これからも楽しみにしたい。

取材・文=石川知京

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