パッケージの「▲」に込められた願いとは?年間売上2億5千万本突破した「Q・B・Bチーズ」が売れた理由

  • 2022年9月6日
  • Walkerplus

スーパーのチーズ売り場にズラリと並ぶ縦長の4個入りチーズ。さまざまな味のバリエーションがあり、つい「アレもコレも」と買ってしまう…それが「Q・B・Bベビーチーズ」である。

その誕生は今から50年前の1972年のこと。神戸に本社がある六甲バター株式会社によるブランドで、今では年間2億5千万本もの売り上げを誇り、国内のベビーチーズシェアNo.1だという。しかし、ここまでの圧倒的な支持を得るまでは容易くなく、発売後30年近く苦戦し続けた商品でもあったんだとか。

今となっては当たり前のように見かけるチーズ。今回はこのQBBベビーチーズの歴史について、六甲バター株式会社(以下、六甲バター) 開発本部の高橋圭輔さんに話を聞いた。

■“小さなブロックチーズ”の認知に大苦戦!
QBBベビーチーズを販売する六甲バターは、神戸市中央区に本社を置く食品メーカーだ。創業は1948年で、当初は「平和油脂工業」という社名だった。創業当時はマーガリンの製造をメインにした事業を行うメーカーだったが、まだマーガリンが世間に浸透していない時代だったこともあり「人造バター」と揶揄するような声もあったという。このため、1954年に現在の「六甲バター」に社名を変更し、1958年から現在の主力商品であるプロセスチーズの製造に着手した。

1960年に魚肉ソーセージから着想を得て、世界初となる棒形のスティックチーズをリリースし、1971年にはスライスチーズとしては日本初の個包装を実現。歴史にその名を刻む、市場ニーズを先取りするかのような試みを複数行ってきた。高橋さんによれば、こういった斬新な開発力によってQBBベビーチーズも誕生したという。

「それまでのチーズはブロックタイプが主流で、ご家庭で好きな分をカットして食べていただくものが多かったです。この手間を省き、個包装にして便利に食べていただこうとして作ったのが1972年に誕生したQBBベビーチーズです。現在の縦型の4個入りと全く同じです」

今考えれば、チーズをおやつやおつまみとしていただくうえで、これ以上便利なものは思いつかないようにも思えるが、「発売時は全く売れなかった」と高橋さんは言う。

「チーズの主流がカルトンのブロックタイプだったことと、当時は消費者の方に認知していただく方法も店頭でのアピールだけでしたので、見栄え的にも大きいブロックタイプにはどうしても勝てなかったというわけです。また、近しいところでは他社の6Pチーズに勝てなかったところもあり、発売から30年近く普及に苦戦した商品でもありました」

■火つけ役は「カマンベール」。売上が急激に伸びたワケ
しかし、2000年代に入り事態は大きく変化する。1990年代から「スモーク味」「アーモンド入り」といったバリエーションを加えていったが、決定的だったのが2001年に発表した「カマンベール」だった。この辺りから主力販売先のスーパーマーケットの理解を得られ、同時に店頭の棚の位置を変更するなどして視認性を良くし、一気に支持が高まったという。

「それまでは棚の上段で扱われることが多かったのですが、この頃から当社の営業の提案で下段展開を開始しました。あえて下に置いてもらうことで、QBBベビーチーズの多彩なバリエーションを理解していただきやすいのでは?と考えました。そうすると急激に売上が伸び、2005年に6品体制になったタイミングで年間1億本を突破。それから10年以上経った2016年には年間2億本を突破。2020年に年間2億5千万本を突破し、国内のベビーチーズシェアではNo.1となっています」

■三角マークに込められた意味は?知られざる秘密
発売から50年の歴史を持ちながら、そのうち30年間は売れ行きに苦戦したというQBBベビーチーズ。それだけにさまざまなトリビアがあるのではないかと思い、高橋さんに聞いてみた。意外とも思える事実がいくつかあったので、ここでご紹介したい。

(1)三角マークは「止まれ」の標識を模している
高橋さんは六甲バターに入社した当初、三角のマークを「六甲山をイメージしているのだろう」と思っていたそうだが、実際は「止まれ」の標識を模したものだったそうだ。「消費者の方に立ち止まってほしい」という願いが込められている。

(2)QBBベビーチーズの歌がある
2019年に神戸のバンド「ワタナベフラワー」が「Q・B・Bベビーチーズの歌」のMVを制作し、現在公式サイトで公開中。2020年にはテレビCMにも使用された。

(3)6月の第1日曜日は「ベビーチーズの日」
毎年6月の第1日曜日を「ベビーチーズの日」として日本記念日協会に申請。コロナ禍以前まで毎年の同日、六甲山牧場でイベントを実施していたという。地元のアーティストに出演してもらったり、QBBベビーチーズを使ったピザ作りなど、おおいに盛り上がっていたそうだ。高橋さんは「コロナ禍が落ち着いた後、再開したい」と話す。

(4)「Q・B・Bプロセスチーズパーク」という見学できる施設がある
神戸工場に隣接した見学棟を設け、「Q・B・Bプロセスチーズパーク」として一般に開放している。コロナ禍の影響で公開・運用を延期していたが、2022年7月にようやく公開され、8月いっぱいは満員状態となっていた。すぐに予約で埋まるため、今後も公式サイトのチェックが必須。

■どれもおいしそうで迷っちゃう!売上トップ3のフレーバーは?
支持が急激に高まったのは100円前後で買える手軽さもあるが、もちろん、チーズへの強いこだわりを持つ六甲バターならではの“味わい”にもある。

QBBベビーチーズには保存料が使われておらず、また同じ種類のチーズでも熟成度合いが異なると風味や物性が変わるため、品質管理を十二分に行っているという。このように丁寧に作られたQBBベビーチーズプレーンをベースに、さまざまなバリエーションが加わったことが圧倒的な支持を得るに至った大きな理由のように思える。

種類が多く、店頭でどれを買うか悩みがちだが、売上ベスト3はどのフレーバーになるのだろうか。

「圧倒的な支持があるのはやっぱり『プレーン』です。定番ですので、これが1番売れています。その次の2〜3番目が『カマンベール』、『アーモンド』という感じですね。カマンベールは女性の方に人気で、柔らかさとチーズの風合いでご支持をいただいています。アーモンドはザクザクした食感と香ばしさがチーズに合っていると評価をいただくことが多いです」

■「消費者のニーズに応え、挑戦をし続けていきたい」
50年という節目を迎えたQBBベビーチーズだが、さらなる未来をどう見据えているのだろうか。最後に、高橋さんにその思いを聞いてみた。

「当初は普及に苦戦したQBBベビーチーズですが、2000年代以降に絶大なご支持をいただくようになってからは、『六甲バターって、ベビーチーズ以外も作ってるの?』みたいに思われている方もいるほどになりました。

もちろんベビーチーズ以外にも別のチーズブランドがあり、さらにナッツやリンツチョコレートなども販売していますが、QBBベビーチーズとしては今後も消費者の方のニーズにお応えできるよう挑戦し続けていきたいと思っています。今後も多彩なバリエーションを考案し、消費者の方に喜んでいただける商品を作り続けていきたいと思っています」

取材・文=松田義人(deco)

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