
イラストレーターとして活動しながら、Twitterに漫画を投稿しているかもみら(@hc_feee)さん。その切ないストーリーと表現が注目を集めている。作品のひとつ「いじめっ子がトラックに轢かれる話」には、読者から「読み終わりの衝撃が止まらない」「考えさせられる」などの声が寄せられた。かもみらさんに、漫画を描いたきっかけやこだわりなどを聞いてみた。
「いじめっ子がトラックに轢かれる話」は、病院で意識のない男の子のそばで、もう1人の男の子が呼吸器の管を外そうとする、ドキッとする場面から始まる。そこから話は遡り、高校2年生の黒山は学校で犯人の分からないいじめに悩んでいた。そんな黒山に幼馴染の白沼だけは、優しく声をかけてくれていた。
黒山への陰湿ないじめはその後も続く。しかし、ある日教室に忘れ物を取りに来た黒山は、衝撃的な光景を見てしまう。白沼が自分の机に落書きし、カッターで傷を付けていたのだ。戸惑う黒山に、白沼は「僕は一度も君を友達だなんて思ったことはなかったよ」と言う。黒山は「お前なんか大っ嫌いだ」「死ねばいいのに」と涙ながらにその場を立ち去る。
翌日、黒山は白沼が下校中にトラックに轢かれたという知らせを聞く。動揺しつつも「バチが当たったんだ」「僕には関係ない」と自分に言い聞かせる黒山の前に、白沼の幻影が現れて...。
■本業の息抜きに始めた漫画。画面の情報量を減らし、伝えたいことを表現
1、2年ほど前から、本業のイラストレーターの仕事の息抜きとして漫画を描き始めたというかもみらさん。「いじめっ子がトラックに轢かれる話」は、男子学生2人の隠れた本心と、それがすれ違う様子を描いている。実は描かれた時期は違うが、「認知症になった恋人」「君の幸せを願っています」という、今作と同じ世界観の作品も。これらの作品はどのように誕生したのだろうか。
「描くテーマについて深く意識したことはないのですが、私は話を考えるときはいつも、そのときのコンディションに左右される性質です。3作品はそれが共通していたのかなと。ちなみに3作品とも、すごくお腹が空いていたときに考えた話です(笑)」
繊細な物語なのですごく考え込まれたうえで描かれているのかと思いきや、意外にも自然体で描いているかもみらさん。空腹時に生まれた漫画だというのも、なんとなくギャップがあって面白い。
作品には「何回読んでも同じ量の涙が出る」や「表現や表情がすごい」など、ストーリーだけでなく登場人物の感情が伝わるイラストにも心打たれたというコメントが。漫画を描くときのこだわりについて聞いてみた。
「描き込みすぎて伝えたいことが伝わりにくくならないよう、できるだけ画面の情報量を減らすことを心掛けています」
■創作活動を行うときは取材でインスピレーションを
漫画内に説明はほとんどないが、読者はだんだんと2人の本心に気付かされていく。自分を見てほしくて黒山をいじめていた白沼と、白沼への思いに気付きつつも「友達」と呼ぶ黒山。最後までお互いの気持ちが交わらない、同性同士の恋愛の物語と衝撃のラスト。「あのときこうしていれば」と考え、何度も読み返したという人も。
そんな緻密なストーリーや表現で、読者の心を打つ作品を生み出すかもみらさん。イラストや漫画など、創作活動に影響を与えているものはあるのだろうか。
「影響とは違うかもしれませんが、イラストを含め、創作活動を行う際には取材に行くことが多いです。写真を撮りに行ったり、資料館に足を運んだりといろいろですが、やはり実際に目にすると強いインスピレーションを受けることができます」
最後にかもみらさんは、「これからもたくさん絵を描きたいです。いつも読んでくれてありがとうございます!」とコメントをくれた。登場人物の思いを繊細に描くかもみらさんの作品を、これからも楽しみにしたい。
取材・文=松原明子