これが令和の紙芝居!?ストーリーと絵に施された仕掛けが凄すぎる!68万以上のいいね獲得で海外からも称賛の声

  • 2022年7月1日
  • Walkerplus

分厚いノートを広げると、2つの写真立てが映る。写真にはウエディングドレス姿の女性と、タキシード姿の男性。どちらも相手は見えない。そして始まるのは“ある人物”視点によるカップルと、そこから生まれる家族の物語。


“ある人物”は震える手で、ショートカットの女の子にラブレターを渡す。そして2人は仲を深め、結婚し、子供を持つ。子供はすくすくと成長し、大人になり自分の人生の伴侶を見つけ巣立っていく…。ノートにあるつまみを動かすと、登場人物が表情を変えたり、手が動いたりと、そのギミックにも驚かされるが、物語の最後で多くの人が“ある人物”の正体に驚くだろう。

「愛する日々」と題されたこの動画は、物語と絵に施された仕掛けに多くの人が感動。Twitterで68万以上のいいねを獲得、コメントも2000以上寄せられた(2022年6月時点)。動画を制作したのは工作漫画家・紙工作作家として活躍するしんらしんげさん(Twitter:@shin___geki)。紙コップやノートなどを使って漫画を新しい形で表現しており、その作品の独創性が高く評価されている。しんらしんげさんに「愛する日々」がどのようにして生まれたのか聞いた。

■固定観念を利用して驚きのストーリーを作る
実は、「愛する日々」は2020年に発表した「私の大切なひと」という作品のリメイク版。「私の大切なひと」はクリアファイルで作った箱の中に鉛筆を軸にした長い紙を設置。鉛筆を回して紙を動かすことで絵が変わっていくという仕掛けだった。仕掛け自体は違うが、ある人物の視点でストーリーが展開していくのは変わらない。

「固定観念を利用することで、叙述トリックみたいなストーリーを作りたいと思ったんです。彼女とのデートみたいな描写をすれば、見ている人たちは“主人公は男だ”と思ってしまうと考えて作っていきました」

「愛する日々」で大きく変わったのは、子供の登場シーン。「愛する日々」では特別養子縁組のパンフレットのカットが入ってきて、最初から子供が養子であることを示唆している。

「『私の大切なひと』では子供が、いわゆる“血の繋がった子供”ではないということは、種明かしの部分で説明していました。しかし、動画をTikTokにアップしたら、『なぜ女の子同士で子供が生まれるの?』と、子供が養子であるということが伝わっていないコメントがあって。子供が養子であること自体は、主人公に関しての種明かしに大きく関わらないと考えて『愛する日々』では最初からわかるような形にしました」

このほかにも、「愛する日々」では登場人物の動きのギミックを増やしたり、ストーリーのテンポを調整したりとさまざまな改良がなされた。ノートの形になることでカメラがより作品に近づき、画質の向上も相まって非常にわかりやすくなっている。その甲斐あってか「愛する日々」は、しんらしんげさんの作品の中でも群を抜いてバズった作品となった。この反響の大きさには「正直驚いている」のだそう。

「いただいた反響の中で印象的だったのは、LGBTQ当事者の方からのものです。好意的に見てくださってとてもうれしく思っています」

現在の日本では、同性カップルは法的に結婚ができないため、法律婚の夫婦であることが求められる特別養子縁組の利用はできない(親権が実親に残る里親にはなれる)。主人公たちが特別養子縁組の制度を利用できていたり、子供たちが結婚を報告する際に、同性カップル向けの結婚情報誌があることが描写されていたりと「愛する日々」の世界は現実よりも一歩進んでいるようだ。そのことも多くの人の胸を打つ作品となった理由なのだろう。

■「これからも誰も作ったことのないものを作りたい」
ノート作品と並び、しんらしんげさんの代表的な表現スタイルなのが、重ねた紙コップで作る漫画。紙コップを回転させることで、背景やキャラクターが動いていくもので、この表現スタイルはしんらしんげさん独自のものだ。

「家でダラダラしていることが多いんですけど、家にある紙コップを触っていてなんとなく回して漫画にできるなー、と思って作ってみました」

そのちょっとした思いつきから、オリジナルの表現手法を思いつくのが驚異的だ。「子供の頃、図工の授業で何かを作ると選ばれて賞をもらったことはあります」と、才能の片鱗がうかがえるエピソードはあるが、学生時代にアートや漫画に関わる活動や勉強はしてこなかったという。

「愛する日々」のようなノートの作品もトリックアートの手法を使って何か作れないかな、という思いつきからスタートしたのだそう。ノートは90度に開いた状態で見せるため、角度がつく分、元の絵を歪ませて描いている。「愛する日々」はデジタルで描いているため、普通に絵を描いたものをデジタル上で引き伸ばして加工しているのだが、最初のノート作品は手描きだったため、その歪みを加味して描いていくのに苦労したんだとか。

作品を見ていると、人よりも集中できるタイプなのかと思いきや、「一度ハマると気づいたら朝みたいなことはありますが、基本ダラダラしています」と飄々とした答えが返ってきた。今後の目標はどんなところにあるのだろうか?

「思いついたら作るって感じなので、特に大きな目標は思いつかないんですが……でも、これからも誰も作ったことがないものを作っていきたいですし、もっと人が驚くものを作っていきたいという気持ちはあります」

しんらしんげさんの作る漫画の形が、どういうものになるのかこれからも見逃せない。

取材・文=西連寺くらら


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