
コミックエッセイ「自閉症育児奮闘記~今できること」は、シングルマザーのまるさん(@shishishishimr)と、発達障がいと診断された幼い息子・リュウくんの日常を描いた作品だ。ただでさえ大変な初めての育児に加え、息子の成長への不安や戸惑い、悩みが描かれ共感を呼んでいる。また、そんな親の苦しみをよそに、ゆっくりと確かに成長していく息子の姿も微笑ましい。今回のストーリーは「リュウくんの発語の遅れ」がテーマ。
2歳半になっても単語を話す兆しが見られず不安に思うまるさんだが、周囲に話しても「大丈夫」「うちも同じ」「男の子は(元々)遅いから」というアドバイスばかりで、逆にますます思い悩んでいく。
そんな中でも、リュウ君の発する喃語のかわいらしさに「もうこのままでいい!」と思ったりもする、不安と感激に揺れ動く毎日だった。せめて言葉を引き出そうと、リュウ君に「ママと言ってみて、マーマ」「だっこって言ってみて、こー」と必死に促すと…。
焦らずリュウくんのペースでゆっくりと成長できればいい、と改めて思うまるさんだった。
■周囲の楽観的な声に最初は期待もあったけど…
言葉の遅れについて、周囲の楽観的な声によって逆に孤独が深まる描写が出てくる。「『うちの子もそうだったよ』『男の子は言葉遅いからね』という言葉に期待半分、疑い半分でした。このころは息子が発達障がいだと認めたくなかった時でもあり、もしかしたらこの人たちの言う通りもうすぐ普通に話し出すかもしれない!との期待が強かったです。しかしその後すぐに発語が出ることもなく、期待していた分ショックでした」
だっこを強要してリュウくんを泣かせてしまうところが非常に印象的だ。「まねが大事、まねをすれば言葉が出てくる、とよく聞くので、どうにかその一歩を踏み出してほしいと必死になっていました。ですが、息子が泣いてしまって…。ものすごい罪悪感に加えて『あぁ、まだ今やることではないんだな』と落ち込みました」。その後はどうなったのかというと、「しつこく言わせようとしたせいで、一切まねしてくれなくなってしまいました。これは逆効果だなと気付き、その後は発語が出るまでこのようなことはしなかったです」
とはいえ、まるさんの焦る気持ちもよく分かる。みなさんはどう思われるだろうか。
取材・文=折笠隆