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笠松将、俳優になったのは「自分が持っているものを生かせると思った」自身に重ねた最新作について語る

  • 2022年2月20日
  • Walkerplus

2022年2月19日に公開となった映画『リング・ワンダリング』。「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系)やNHK大河ドラマ「青天を衝け」など多数の作品に出演し、注目を集める笠松将が主演を務める。

笠松が演じるのは、漫画家を目指す青年の草介。逃げた犬を探す不思議な女性・ミドリ(阿部純子)と偶然出会ったことから、彼女が生きた過去の世界へと導かれ、そこでかつて起こった出来事や人々の思いを知ることとなる。

現代と過去の東京、そして草介が描くニホンオオカミを題材にした漫画の世界と、3つの舞台が折り重なって描かれる幻想譚。そんな本作の撮影を通して感じたことや、独特の雰囲気をまとう笠松の俳優としてのスタンスについて話を聞いた。

■「東京に来る前はなんでも良かった」けれど…
――本作をはじめ、ドラマや映画に多数の作品へご出演されている笠松さんですが、まず、俳優になりたいと思ったきっかけについてお伺いしたいです。

【笠松将】完全に間違えました。今は俳優って大変だなって思ってます(笑)。東京に来る前は本当になんでも良かったんです。サッカーがうまかったらサッカー選手になりたかったけど、選手になれるほどではなかったし、このままだとマジでやりたいことがないから、どうしようって考えて。お笑いはコンビを組んだり、養成所に行ったりしなきゃいけないから無理、歌は下手だし、楽器もできないし、ダンスもできないし…と思った時に、俳優だったら自分が持っているものを生かしてやれるんじゃないか、と思ったのが最初ですね。

でも、上京しても事務所も決まらない、もちろんオーディションも決まらない、現場に行ったら「後ろのやつらごちゃごちゃするな!」って怒られて…。ちょっと役をもらったりしても全然カメラに写ってないとか、そういう感じだったので「どうしたら認めてもらえるんだろう?」っていう悔しさから、いまだに一生懸命やっています。

世の中で良いとされているものって、なにか共通点とか方程式があって、理解したいと思ったら絶対できると思うんです。それができたら、もっとおもしろいものを作れるはずなので、そのためにどうすればいいのかなって考えている最中です。

――ちなみに、俳優業以外にも自身でデザインしたファッションブランド「ANOMALY」のアイテムをECサイトで販売されていますが、やりたいことはいろいろやっていこうというスタンスなんですか?

【笠松将】その時に描きたいと思ったから描いて、じゃあTシャツ作ろう、って軽い感じでやっています。ほかのジャンルでの活動もしているけど、その中で芝居も評価される俳優になりたいというか。選択肢は多く持ちたいんです。

■『リング・ワンダリング』は知る、気付くということの大切さを教えてくれる作品
――『リング・ワンダリング』は3つの世界線が重なりあって、絶妙なバランスでひとつの作品に仕上がっているところがおもしろいと思ったのですが、「どうなるのだろう」と思いながら撮影して、できあがったものを見たら「上質なエンターテインメント作品になっていた」とコメントされていますね。改めて今思うことはありますか?

【笠松将】主人公は過去に行っていろいろなことに気付くんですが、“気付く”ってことがすごい大事なんだなって。撮影中はピンとこなかったけど、撮影から2年以上経って改めて思いました。例えばコロナ禍という状況を経験したから、劇場に人が集まるというのは本当はすごいことだとわかったんですよね。そういった、知る、気付くということの大切さを教えてくれる作品だと思います。

――草介はバックボーンが描かれていないキャラクターですが、「観客を代表するような役」とお話されているのを読んで腑に落ちました。そのあたりについて、演じるうえで意識されたことはありますか?

【笠松将】僕はキャラクターの過去とか未来とか、台本に書かれていないことより書かれていることが大切だと思っているんです。そういうと乱暴に聞こえますけど、台本に書かれていることを再現して、それ以外のことは見た人が感じてくれたらいい。それは、演じている役は全部自分だからなんです。草介も僕だし、ほかの作品でも、その時代や世界に生まれていた僕だったらこうなる、と思って演じています。人によってはすごく過去を大事にしたり、家族構成を書き出したりする人もいますが、僕は全然そういうやり方をしないです。

――書かれていない部分は受け手にゆだねるような?

【笠松将】映画やドラマ、音楽とかスポーツも全部、見た人が感じることがすべてじゃないですか。僕自身、自分が見たものを良いと思えば良いし、つまらないと思ったらつまらないと思うだけだし、それは観客にゆだねるものでしかないから。

草介は漫画家になりたくて建築業で働いているけど、それは俳優になりたくてバイトしてた僕と一緒なんですよ。漫画を描くのに行き詰まってる草介も、「全然ページが進まない台本とかあったよな」と、自分に重ねましたし。そうやって過去の思い出から引っ張ってお芝居をするタイプなので、演じている役はすべて僕でしかないと思っています。

■現場には自分のセリフだけを覚えて現場にいく、笠松将の芝居のやり方
――そうすると、ご自身が経験していないことを演じるのは大変なのでは?

【笠松将】それも結構言われるんですけど、逆になりきるタイプのほうが限界があると思うんです。まったく別人になるんじゃなくて、環境や状況を自分がそこにいたら?と考えて、経験や思い出を当てはめて脚色していくっていうのが僕の芝居のやり方。なりきる演じ方もたまにやりますけど、でも自分をベースにするのが基本ですね。

――自分がそのシチュエーションに行ったらどうなるか、というところから役を作っていくんですね。

【笠松将】ト書き(セリフの間にある状況説明の文章)も読まず、自分のセリフだけ覚えて現場に行くんです。『リング・ワンダリング』の撮影でミドリと神社にいるシーンでも、大きな木があって、そこにミドリ役の阿部純子さんがいて、ろうそくの光だけが山の中に浮かんでいる…そういう環境におかれたら、「怖っ!」って感情は自然に出てくるので。そこで阿部さんと演じて、そのシーンの意味を理解して、監督と話して、という感じで進んでいきました。

本作においては、美術の部谷京子さんが素晴らしい空間を作ってくださったので、僕たちは現場に行くだけで作品の世界に没入できたんです。疲れたとか眠いとか思う暇もないくらい、監督やスタッフさんたちがパワーをくれたので、大変だったけど楽しかった印象がありますね。

スタイリスト=徳永貴士
ヘアメイク=松田陵(Y's C)
撮影=鎌田瞳
取材・文=大谷和美
衣装協力=エルメネジルド ゼニア

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