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【漫画】SNSで話題沸騰の衝撃作『ケモ夫人』とは!?予測不可能なファンタジーが生まれるまでの舞台裏

  • 2022年2月22日
  • Walkerplus

おっとりぽわぽわな雰囲気を漂わせる動物顔のご夫人が、なぜか巨人の討伐に任命されてしまうWEB漫画『ケモ夫人』をご存じだろうか。2021年10月に第1話が投稿されるやいなや、Twitterをはじめ、ネット上でたちまち話題に。半獣半人のいわゆる“ケモ顔”で、「ちょうちょしか捕まえたことがない」と語る夫人というキャラクター像からは想像もできないダークファンタジーで、深まる世界の謎や予測のできない展開、それに翻弄されるケモ夫人や彼女を取り巻く強烈なキャラクターといった要素が多くの読者の心を掴んでいる。

その人気から、2月22日(火)にはアフタヌーンKC(講談社)からコミックスが刊行され、さらには人気声優の皆口裕子によるASMR音声も発売されるなど、多方面にムーブメントが波及しつつある本作。今回はコミックス発売に際し、作者の藤想さんにケモ夫人の誕生のきっかけや創作の裏話を訊いた。

■「可愛い奥さんが困っている姿が見たかった」衝撃的な第1話ができるまで
――Twitter発で大きな反響を集めている『ケモ夫人』ですが、まずはケモ夫人というキャラクターが誕生したきっかけを教えてください。

「仕事のお昼休みに少し暇だったので、珍しくミルクティーを飲んだら、急に動物っぽくてムチムチした奥さんを描きたいと思い、なんとなくスケッチしました。完全にエッチな漫画を描く目的で描きました。そしてこの人がどういう人なのかを知るために、漫画を試しに描いてみることにしました。この人がもっと困っている様子を見たかったので、なんとなく斧を持たせてみたら予想外に似合ってしまい、ケモ夫人というキャラクターが完成しました」

――漫画の第1話も「困っているところが見たい」が出発点だったのですか?

「可愛い奥さんが困っている姿が見たかったので、いきなり斧を渡されて巨人を討伐してください、と言われたら物凄く困るんじゃないかと思いました。そして斧を渡されたケモ夫人は、この人絶対にちょうちょしか捕まえたことないだろうな、絶対巨人討伐できないだろうなと思いました。とにかく困ってほしかったんです。困っているのを見たかったんです」

――第1話は即興で描かれたとうかがいました。当時はまだ長編で続けて描くつもりはなかったのでしょうか?

「1話は完全にお試しで描いたので、何も考えていませんでしたし、その話を続けていく自信もありませんでした。第1話の反響から間を置いて、初めて自分の漫画に対して1万いいねが付いた記念に恋人と行った居酒屋で、第2話以降を描く決断をしました。長編として連載する決意をした段階で、第2話以降の構想およびケモ夫人とはどういう人物なのかを固めていきました」

■“自分の当たり前”が読者の驚きに。予測不能な展開の源
――現在は構想やストーリーの結末を見据えて描かれているのですね。

「さまざまなものを見据えながら描いています。ストーリーの大筋はあるのですが、連載は生モノであると強く感じているので結末は少しずつ変化しています。キャラクターは常に活き活きと活躍し続けるので、時折作者の想定外の言動に走り、その影響が細やかに結末に影響を与え続けています。ご期待ください」

――そうした予測不能の部分にハラハラしています。物語を転がす上で意識していることはありますか?

「私が読者の皆様を意図的にハラハラさせている部分もありますが、読者の皆様がハラハラしているのは、私にとって当たり前の展開だと思っている部分が多い気がしています。私は刺激が多いことや変化が大きいことが好きなので、つい物語を転がし過ぎてしまいます」

――藤想さんの当たり前が読者の驚きにつながったのは、たとえばどんなシーンがありますか?

「一番いい例は『耳が長いからスマホが長いのは当たり前だ』と思っていたらそれをめちゃくちゃ驚かれたことです。私は結構さまざまな部分を当たり前だと思っています。その当たり前を読者の皆さんに伝えるのが難しいのですが……。逆に意図的な部分で意識していることは、荒木飛呂彦先生も著書で書かれていますが、やはり肝となるキーワードは『サスペンス』だと思います」

――そうした展開のほか、本作で特に力を入れている点はありますか?

「第一は皆様に『この漫画を読んでいて良かった』と思っていただき、本作からエネルギーを得ていただくことだと考えております。そのためキャラクターが活き活きとしていることは常に考えます。黄色は元気の色だと思っているのですが、そういったことを考えながらケモ夫人とフォックステール博士の髪の色を黄色に設定しました。

そして作者としての意気込みは、常により良いもの、今までよりも良くなったものを皆様に継続して提供し続けることを心がけています。もちろん、それは作品の方向性をいきなり変えてやろうという意味ではありません」

■読者が驚いた電撃的なコミックス化は「作者も編集者も驚いた」
――『ケモ夫人』は当初からネット上で大きな反響を集めましたが、藤想さん自身はどう感じられていましたか?

「所謂『バズる』という現象については、当時から私には何も分からなかったですし、今でも分かりません。ただただ途方もなくありがたい出来事が連鎖的に起き続け、素直に嬉しいと思いましたが、人が感じられる嬉しいという感情の上限にすぐに達してしまい、それからはもう、とにかく感謝しなくてはいけないと思い、感謝することしかできませんでした。

私の精神は理解を越えた事象によりストップしているのですが、状況は常に進展し続けており、正直に申し上げて、いきなり人気ラーメン屋の店主を未経験の状態から任されたような滅茶苦茶さとプレッシャーを感じていました。その後反響が衰えない様子を見ていて、最初に思ったことは『このまま漫画家になれるかもしれない』でした」

――以前からプロの漫画家は目標にあったのですか?

「自分がプロになるイメージは全く持っていませんでした。漫画の原作者にはもしかしたらなれるかもしれないと考えることもありましたが、いつも漫画の原作者として活躍されている方々の知識量が恐ろしくて怯えていました。

私はただただ、絵やコマ割りやその他諸々の基本スキルよりも漫画の面白さのパラメータだけを専ら優先して、投稿し続けたら自分はどうなってしまうのかが分からなかったのですが、その答えが今の状態なんだなと受け止めています。なので、全く意味不明な努力をひたすら積み重ねていました」

――そうした中、Twitterでの連載から2カ月足らずでアフタヌーンKCでの単行本化が決まりました。

「『ケモ夫人』が話題になった後、現在の担当編集者様にTwitterのDMにてお声をかけていただきました。読者の皆様は(単行本化までの)スピード感に大変驚かれたと思うのですが、私も驚いていますし、担当編集者様も『本当に書籍化できるとは…』という感じでした。さまざまな偶然が重なり、関係者の皆様の迅速な対応によって実現しました。担当者様には、私のキャラクター人格の描き方や少ないコマ数での表現力から魅力を感じていただき、お会いすることになりました」

――同時に、声優の皆口裕子さんによるASMR音声化も発売されるなど、ケモ夫人という作品の広まりを感じます。

「単行本化がさまざまな偶然と関係者様のご尽力により実現したように、ASMR化についてもさまざまな幸運と大勢の担当者様方の努力の結晶ですので、『ケモ夫人』という作品のメディア展開を『ケモ夫人』を愛して下さる方々と進めることができて、本当に良かったと思っています。本当に人に恵まれています。どうしてこのように事態が進んでいるのかと冷静に考えれば、やはり皆様がケモ夫人のように優しい心を持っていらっしゃるからだと思います」

――いよいよ発売となる単行本ですが、加筆や変更などはあるのでしょうか?

「本編の内容については変更するかどうか、話し合いも行われましたし、編集者さんとは作画を別の方にお願いすることも視野にありました。しかし、編集部内での会議で『元のままで書籍化しよう』となり、最終的にはTwitterで掲載したままがベストだという結論に至りました。なので大きな加筆や変更点はありません。その代わり!22ページにもおよぶフォックステール博士の前日譚が描き下ろしで収録されております!」

――最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

「いつも『ケモ夫人』を読んで下さっている皆様、『ケモ夫人』をご存知の方、本記事で『ケモ夫人』をお知りになった方。『ケモ夫人』は皆さんを応援しています!是非この機会に単行本を宜しくお願いいたします!Twitterでのケモ夫人の連載も是非よろしくお願いいたします!頑張ってまいります!」

取材協力:藤想(@561273)

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