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人と同じ空間にいるだけでプレッシャー…。パニック障害と12年間闘った経験を漫画に

  • 2021年7月29日
  • Walkerplus

クロバさん(@kuroba_hiroba)が自身の体験を描き、Instagramやブログで配信しているコミックエッセイ「パニック障害12年生」。心や体に異常を感じ、パニック障害と診断されてからの12年間、どのようにしてパニック障害と向き合ってきたのかがリアルに描かれていて、クロバさんと同じようにパニック障害と闘う読者から共感の声が多く届いている。

今回、クロバさんに取材し、コミックエッセイを通して伝えたい思いなどを聞いた。

■心身共に崩れていくパニック障害
普段は漫画家として活動しているクロバさん。パニック障害が発症した当時、連載漫画という自分にとって大きな夢を手に入れたと同時に、そのプレッシャーが大きくのしかかったという。

「確実に変だなと思ったのは、漫画の取材先に電車で向かっている途中、全身の力が抜けて自分の意志とは関係ない『感情のない涙』が出た時。それまでは、どこか気持ち悪いと感じることはありましたが、精神疾患だとは思いもしませんでした。気持ち悪い時は胃薬を飲んでいました」と、当時を振り返る。

ちょっとした体調不良だから大丈夫だと思ってしまうような些細な体の変化が、実はパニック障害のサインだったのだ。クロバさんは「僕はどちらかというと“適当”な性格だったので、パニック障害と診断された時は“まさか…”と驚きました」と話す。

また、クロバさん自身が苦労したことを聞くと、「症状的に吐き気が強く、特に人との食事にプレッシャーを感じていました。僕の連載漫画が料理漫画だったため取材で食べなくてはならない機会が多く、ごまかしながら食べるのが苦しかったですね。パニック障害のことを相手に知られると連載自体がなくなるのではないかと考えて、共に食事をする編集者にカミングアウトしていなかったので余計にプレッシャーを感じていました」と、日常生活にも仕事にも支障があったようだ。

さらに、薬の副作用による眠気やだるさがクロバさんを襲い、仕事の効率も悪くなっていたそう。

「“不安”がいつも付きまとうので、自分の心に制限がかけられている感じがして、何をしても心の底から喜べなくなりましたね」

■周囲の理解が強い支えに
次々と出てくる心や体の変化と闘う中で、いかにして仕事をこなしていくか試行錯誤していたクロバさん。病院やカウンセリングに通いながら、少しずつ行動を起こしていく姿が描かれている。

「自分がパニック障害であると、カミングアウトすると楽になりました。周りにいる人が理解してくれることが支えでしたね。いつ発作が起きてもいいように、外に出かける時は薬はもちろん、吐く用の袋や水などを、お守りのように持ち歩くことで安心感もありました」

実際に、クロバさんがアシスタントへカミングアウトした時の様子も描かれているが、毎日のように顔を合わし、共に仕事をする仲間の理解ほど、心強いものはないだろう。

「認知行動療法、ランニング、ヨガ、カウンセリング、食事改善など、改善されると言われていることはとりあえずやってみました。僕は人と同じ空間にいるだけでプレッシャーになるので、自分に合った人との距離感を作りました。漫画家という職業だったからできたのかもしれませんが。よく『パニック障害は必ず治る!』的な本がありますが、経験者の個人的な意見としては『治る』よりも『楽になる』という表現の方がしっくりきます。基準は人それぞれだと思いますが、“ここまでできればOK”と自分の中に基準があれば、それがすでに一つの個性だと思っています」

人との距離をほどよく保ち、薬の副作用で眠い時は割り切って寝て、それ以外の時間を仕事にあてるという自分に合ったペースで仕事や生活をすることも、プラスになったという。

■自分と向き合うことができた今だからこそ描ける
コミックエッセイ「パニック障害12年生」についてクロバさんは、「数年前なら描けなかったと思います。思い出すと嫌なこともあるので。今描けているということは、自分と向き合うことができたのかなと感じています。読者の方々と触れ合うことで当初抱いていた“僕の経験が、今悩まれている方々の何かしらのきっかけになれば”という気持ちが大きくなっていきました。今は僕の方が読者の方々に支えられています!」と語る。

多少の演出はあるものの、読者のために自分の感情ややってきたことに関しては「嘘を描かない」と決めているクロバさん。コミックエッセイの中には、パニック障害を擬人化した“パニッくん”というキャラクターが登場するが、「これはふざけているわけではありません。『心の病気』は目に見えないので、擬人化することで症状などを分かりやすくするため、また当時の僕は自分の心と対話することが多く、僕一人だとモノローグばかりになってしまうので、心の対話相手としてパニッくんを出しています」と、読者に分かりやすく正確に伝えるためのこだわりも教えてくれた。

「漫画としても楽しめるように描いているので、パニック障害に関わりがない方も含めて、一つのドラマとして少しでも多くの方々に読んでもらいたいです。重苦しくなく気軽な感じで、パニック障害を知るきっかけになれば。僕としては『おもしろい』=『共感』だと思っているので、『おもしろい』と言っていただけるとうれしいです。僕の経験はあくまでも一例。これからも僕の意見として描いていきますので、最後までお付き合いただけたらと思います」と締めくくってくれた。

筆者も、クロバさんの作品を読んで改めてパニック障害について知識を深めることができた。精神疾患は他人事ではなく「誰もがなり得る」ということを、心に留めておきたい。

取材・文=重藤歩美(関西ウォーカー編集部)

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