
育児に関する漫画やイラストをSNSで投稿している「はみだしみゆき(@HamidashiMiyuki)」さん。“もし赤ちゃんがこんなふうに会話していたら”と妄想が膨らむ漫画「屋台ヤケミルク」シリーズに「わかる!」「屋台ごと買い取りたい!」と共感の声が寄せられている。登場人物は赤ちゃんだけ。やけ酒ならぬ“ヤケミルク”をしながら繰り広げられるベビートークにほっこりする。今回ははみだしさんにインタビューし、漫画を描く思いや屋台を舞台としたきっかけなどを聞いてみた。
■赤ちゃんが飲んだくれてたら…という発想がきっかけ
2019年5月に息子を出産しママとなったはみだしさん。「もともと趣味や仕事で漫画やイラストを描いていましたが、妊婦時代に育児漫画を描いている方々の投稿を見て『私も描きたい!』って思いました。子育てが少し安定してきたころにタブレットを購入して、念願だった育児漫画を描いてSNSに投稿しました」と話す。
“屋台”と“ヤケミルク”という設定については、「夫と夕飯を食べながら雑談していたときに、子育てって大変だけど、赤ちゃんは私たちより何も知らない状態だからもっと不安かも、『眠いのになんでミルクを飲ませるんだよ~』って愚痴を言っていたらかわいいね、って盛り上がって。サラリーマンみたいに屋台で飲んだくれてたらおもしろいと思って、“屋台”で“ヤケミルク”になりました」。
■お客も大将も現役の赤ちゃん
漫画には、主にお客ののんちゃんとモモコ、屋台の大将が登場。大将ももちろん、むちむちの赤ちゃんだ。お客の2人が注文したものを大将が提供し、お客も大将も世間話で盛り上がる、という大人の世界では普通の光景だが、全員が赤ちゃんだというからシュールでかわいらしい。しかも世間話の内容も赤ちゃんならでは。
例えば2話で、「なんか今日寝つけなくてさ~泣き疲れちゃったよったく」とのんちゃん。「そんな日もあるよ」と言うモモコに「でもその間ママがずーっとそばにいてくれてさ」とうれしそうに話すのだ。
「寝かしつけや夜泣きって親も寝不足になるし、もし一緒に寝てしまって赤ちゃんを押しつぶしてしまったら…と精神的にも身体的にも疲弊しますよね。ただ赤ちゃんも泣き疲れて大変なのかもしれない、と思ってこの話を描きました。私が息子を寝かしつけるときは『ママはずっと抱っこしてゆらゆらしてあげるから、安心して早くお眠り~』という気持ちでした」と作品への思いを語ってくれた。
また、ゴックン期ののんちゃんがモグモグ期のモモコに「オレまだゴックン期でさ…」と相談する4話は、段階を踏んで進めなければならない離乳食の大変さを、赤ちゃん目線でおもしろく描かれている。
そして特に反響が大きかったというのが、ジョイントマットの話。のんちゃんとモモコが大将にジョイントマットを注文してカミカミするエピソードで、「息子が動けるようになってきたとき、体が痛くないようにジョイントマットを敷きました。ふと目を離したすきに端っこのパーツを器用にはがしてカミカミしていて、何度直しても端っこを引っ張ってカミカミ…思わず笑ってしまい漫画にしました。読者の方からも共感の声が多かったですね」。
■子育てに奮闘する人々へ癒しとエールを
「あと、ママへの恩返しがテーマの話もお気に入りです」とはみだしさん。のんちゃんとモモコが「いつも夜中に寝かしつけてくれるママに何か恩返ししたいんだよね」としみじみと語り合う話だ。
「私の愛情を、息子がちゃんと受け取ってくれていたらいいな、と思って描きました。漫画のなかでは、モモコが『ママにお礼でボーロをあげるのはどうかな?』って言うんですけど、自分の息子も食べていたボーロをくれたという方がいました。『そちらの屋台でお世話になったかもしれません。想像して泣きそうです』とコメントをいただいたのは印象的でした。毎日子育てを頑張っている方々に少しでも癒しを感じてもらえたかな、とうれしくなりました」
そのほか、エコー写真を見ながら盛り上がったり、おなかのなかにいる赤ちゃんと通話ができる電話があったり、おっぱい大好きマンのハヤトが登場したり、くすりと笑えるユニークな発想と展開が人々を引き付けている。
「息子に『こんな一面があるなぁ』というものをベースにして、想像を膨らませています。ほかにも友人の子供の言動が話のネタになることも。赤ちゃんならではのエピソードを溜めておいて、『こんな子がいたらかわいいな、楽しいな、おもしろいな』と考えながら描いています。息子の昔の写真を見返しているときに、突然漫画の構成がひらめくこともありますね。子供の夜泣きが激しかったり、イヤイヤ期が始まったり、日々の子育てに追われているママやパパに読んでもらって、リラックスしてほしいなと思います。今後は、屋台ヤケミルクのキャラクターグッズも作ってみようかと計画中です」とはみだしさん。
はみだしさんの実体験をもとにした漫画は、子育て中のママやパパはもちろん、これから子育てをする人にとっても、「子供と一緒に過ごすのが楽しみ!」と感じさせてくれるバイブルとなりそうだ。
取材・文=重藤歩美(関西ウォーカー編集部)