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中田英寿がシェアしたい“日本の新たな価値”「透明感のある上品な白さと造形美が際立つ『井上萬二窯』」

  • 2021年5月18日
  • Walkerplus

中田英寿氏が47都道府県を旅して出会った日本の「わざ」と「こころ」。日本のことを知るために47都道府県を巡る中田氏の旅は6年半におよび、移動距離は20万キロになった。その間、訪れた地は約2000に。そこで中田氏は、現地に行かなければわからない、素晴らしき日本があることを知った。

ウォーカープラスでは、中田氏の「に・ほ・ん・も・の・」との共同企画として、珠玉の“にほんもの”をお届けする。

中田英寿
「全国47都道府県の旅で出会ったヒト・コトを、”工芸芸能・食・酒・神社仏閣・宿”に分けて紹介。日本文化を多くの人が知る『きっかけ』を作り、新たな価値を見出すことにより、文化の継承・発展を促していきたい。」

有田焼といえば、美しい色絵に彩られた磁器を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、陶芸家・井上萬二さんの作品のほとんどは加飾されていない白磁だ。それでも萬二さんが作る器は、派手に色付けされたものよりも遥かに大きな存在感を見せる。透き通るように真っ白な磁器は、曲がりくねり絡みあい、どんなふうに作りあげたのか想像もつかないような複雑な造形。最新の3Dプリンターでも不可能ではないかと思われるような形を、ろくろと手だけで作り上げる。その高い技術が評価され、彼は有田焼白磁の重要無形文化財保持者(人間国宝)となった。

「私にとっては形そのものが文様です。工芸ですから、用と美を兼ね備えていなければならない。複雑な形のものも作りますが、実は平凡な器がいちばん難しいんです。ひとつの茶碗を作るのにどうしても納得できず1年くらいかかったこともあるんです」と萬二さんは話す。

1929年生まれの萬二さんは、軍人から復員し、十二代酒井田柿右衛門のもとで磁器作りを学んだ。修行7年目のときに大物成形ろくろ師として名高い初代奥川忠右衛門の技術に惚れ込み、彼の門下生に。以来、ひたすらにろくろと向き合ってきた。

「展覧会などがあれば海外にもいきますよ。旅行すれば刺激を受けるし、それが作品にいきてきますから」という萬二さんの言葉からも、ろくろへのひたむきさを感じる。

これまでに萬二さんのもとで学んだ人は500人を超え、海外にも数多く存在するそう。

「人に教えるのは大変ですよ。自分で作るだけなら10の力で十分ですが、人に教えるには12〜13の力が必要。昔の技術を受け継ぎながら、いまの焼き物を作る。そうやって伝統が受け継がれていきます。昔のままにやっているだけでは発展はしません。常にチャレンジが必要だし、新しい人を育てていかなければならないんです」と萬二さんは伝統の継承について語る。

「焼き物に向いているのはどんな人ですか?」と中田が聞くと、「不器用は駄目だけど、器用すぎても駄目。器用だとすぐに形ができて、努力しなくなる。どんなことも同じでしょうが、毎日同じ努力を続けられる人が結局大成します」と萬二さんは答えた。

「白磁に完成はない。90歳になっても勉強です」。楽しそうに白磁を語る萬二さんとお話しさせていただくと、この方は心から白磁を愛しているのだということが伝わってくる。萬二さんは、有田焼創業400年を迎えた節目に際しては、20年をかけて、すべて「異なる」400個の白磁の作品を生み出した。萬二さんの作陶の追求に、「これでいい」という終わりはない。

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