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「人間不信」から生まれた“四角”の無限空間。「スクエアアート」の魅力を大解剖!

  • 2021年4月22日
  • Walkerplus

見渡す限りの四角、四角、四角…。途方もない数の四角が紙や壁を埋め尽くす「スクエアアート」。ひと目見ただけで、並外れた根気と精神力が必要とされることがわかるこの作品を作るのは、国内で唯一のスクエアアーティスト・MINAMI MIYAJIMAさん(@MNMMYJM)。今回はMIYAJIMAさんに、自身の作品について聞いた。

■「人間不信」の行きつく先が「スクエアアート」だった
小さい頃から絵が好きだったというMIYAJIMAさん。好きを極めようと美術専攻の高校に入学したが、「自分は特別絵がうまいわけじゃない」と自信をなくし、17歳の時に生きづらさを感じて人間不信になってしまったそうだ。

「人間不信になっていたとき、気づいたら不安の感情をぶつけるように、紙にペンで建物のような四角形をひたすら細かく緻密に描くようになっていました。描いていたら落ち着くというか、頭が整理されていって冷静になれました」と、MIYAJIMAさん。

そんなMIYAJIMAさんに大きな転機が訪れる。高校生対象の芸術祭に応募した際、自信を持つことができないまま出展した、四角形を埋めつくした絵が賞を受賞したのだ。この出来事が、「自分はアートができない」という思い込みやネガティブ思考を止めるきっかけとなった。

「自分が良くないと思っていても、他の人からすれば良いものなのかもしれない。その判断に正解はない。『正解がないからこそ、思い込みで自分を責めたりしてはいけないんだ』と、賞を受賞したときに気づかされました」

MIYAJIMAさんは「『世の中の自分に自信が持てない人々に、俯瞰的に自分を見つめなおして視野を広げた考えを持ってほしい』と思い、“客観視”というコンセプトで活動を開始したのがスクエアアーティストとしての始まりです」と語る。

■「不安」や「悩み」が個性あるスクエアに
“不安”や“自信”との戦いから生み出されたスクエアアート。スクエアを描き続けて7年になるというMIYAJIMAさんに、その魅力や四角形に対する思いを聞いてみた。

「なぜ四角形に魅力を感じるかというと、おそらく私が建築が好きだからです。昔から建物を見ることが好きで、散歩していてもビルや工場をずっと見てしまいます。特に無機質なコンクリート製の建物が大好きです」

また、制作中のMIYAJIMAさんは、ひたすら悩みや不安を考え抜くという。「ネガティブな感情をキャンバスにぶつけて精神を安定させるために始めたので、制作中は悩みや不安をひたすら考えています。四角を描いているうちに考えが整理されて冷静になれるので、私にとっては大切な行為です」

悩みや不安の内容は日によって変わり、毎回違うことを考えながら制作しているため、毎回四角形の形や大きさ、雰囲気が変わるそうだ。そういった部分が作品の味となっているのだろう。

■オリジナルのマスクが大好評!四角もファッショナブルに
MIYAJIMAさんは「スクエアアートを世に広めよう」と、自身の公式サイトで作品を販売している。その中でも1番人気なのが「スクエアマスク」だ。

「新型コロナウイルスが流行し始めた時に、なんとなく思いつきで制作したところ、意外と反響がありました。その頃は今みたいにデータ入稿ですぐにマスクを作るサービスがなかったので、自分で布を発注して手作りしていました」

今ではアーティストが手掛けるマスクを多く目にするが、2020年前半頃はまだ流通していなかった。そのため、当初は新聞に取り上げられたりしたという。

次に人気なのが「スクエアiPhoneケース」。「過去にもスマホケースをいくつか作ってきましたが、このケースは形自体が四角いんです」と、四角にこだわるMIYAJIMAさんならではの作品だ。

「スマホケースって基本的に丸型が多いので、四角いものを制作したところ『かわいい!』と言ってもらえることが増え、人気商品となりました」

そして番外編が「ひやむぎケース」。普通にペンケースとして売り出してもおもしろくないと思ったMIYAJIMAさんは、衝動的に家にあったひやむぎを入れて写真を撮り、「ひやむぎケース」と名付けたそう。「フタは閉まらないので、ひやむぎを保管したくてもできないんですけどね(笑)」と、MIYAJIMAさん。

■四角に死角なんてなし!三次元アートにも挑戦
スクエアは、紙や壁だけでなく三次元のオブジェクトにも描くことがあるという。冷蔵庫やスニーカーなどさまざまなものにアートを施してきたが、その中でも一際目を引くのが石膏像だ。

「人の顔とこんなに近距離になってスクエアを描いたのは初めてだったので、相手にちょっとドキドキしていました」とMIYAJIMAさん。石膏像の白さとスクエアのポップさが融合した現代アートだ。

その他に、人工の観葉植物にアートを施すことも。葉っぱに白のスプレーを吹きかけて、乾かした後にスクエアを描き込んでいくそうだ。

「葉っぱの裏に描くのがなによりも大変でした。形が変わるのを防ぐため寝かせて描けないので、首がつりそうになりながら覗き込むように必死に制作しました」MIYAJIMAさんのスクエアアート史上、最も大変だった制作物なんだとか。

精力的に作品を発表し続けるMIYAJIMAさんは、アーティストとしての活動の傍ら、自らがオーナーとしてコミュニティスペース「JITSUZAISEI」を大阪市内にオープン。

自身の学生時代の経験から培った、「私が自分自身のことを客観視できるようになれば、もっと作品が生まれるはず」というMIYAJIMAさんの思いから、「あなたと“面白い”を創る。」というコンセプトを掲げて、2021年4月にオープンを迎えた。「無限の可能性が存在するということをたくさんの人に伝えたい」と思ったのがきっかけだそうだ。

コロナ禍により、資金や制作場所、発表場所がなくなってしまった若手アーティストを多く目にしたこともきっかけの1つだったという。

「どれだけ才能があるアーティストでも、資金面で表現が難しく、発表する機会を逃してしまう現状があります。これらの問題に直面した時、まずは大阪で若手アーティストのために場所を提供したいと思い立ちました。いろんな理由で作品を発表できる場や意見交換する場がなくて困っているアーティストのために場所を提供したいです」

「ジャンルに縛られない、アーティストの表現交流空間を目指すとともに、それぞれの作品に込められたメッセージを日本だけでなく世界に発信できるような場所にしたいです。まずは大阪のアートシーンを盛り上げます!」と、MIYAJIMAさんはコミュニティスペースの展望を語ってくれた。

コミュニティスペース「JITSUZAISEI」の場所は7月まで非公開となっている。詳細は公式サイトを確認。

■「いつも心に“客観視”を」
最後に、今後のアーティスト活動、そしてコミュティスペースのオーナーとしての目標を聞いた。

「とにかく作品を作り、発表し続け、“客観視”という選択肢を心のどこかに置いてもらいたいという願いがあります。そしてアートの歴史に残るような活動をし、憧れの現代美術家の草間彌生さんのような人間像を目指しています。『JITSUZAISEI』と一緒に成長していきたいです」

自らの不安を払拭するために始めたスクエアアート。彼女の作品やコミュニティスペースは、これからのアートシーンを担う若手アーティストの不安や悩みに寄り添うものになっていくだろう。

取材・文=福井求

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