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コロナ禍でも“発売50日”で年間販売目標達成、「キリン 生茶 ほうじ煎茶」が売れたワケ

  • 2020年12月30日
  • Walkerplus

2020年9月15日に「キリン 生茶」から新しく「キリン 生茶 ほうじ煎茶」が発売された。独自製法による香り高く、かろやかな味わいがウケ、発売から50日で“年間販売目標”をクリアするヒット商品となった。ほうじ茶に、生。その開発までの道のりと人気の秘密をマーケティング部・松井のり子さんに聞いた。

■近年、無糖茶市場では麦茶やブレンド茶、ほうじ茶などの「茶色系のお茶」が伸びている

「キリン 生茶」といえば、2000年に発売された緑茶。芯まで凍らせて鮮度を保った生茶葉を使い、まるごと搾った生茶葉が新緑のような爽やかさをもたらしていて、また新製法で茶葉本来のあまみと香りを一層引き出している。発売当初から、それまで一般に緑茶にあまりイメージしていなかった「あまみ」や「うまみ」が感じられると一躍人気商品となった。

「キリン 生茶」は、うまみ豊富な玉露と、爽やかな渋みの煎茶との中間である「かぶせ茶」を使用し、バランスよく仕上げている。お茶の味を左右するお湯の温度にもこだわり、じっくり時間をかけて低温抽出することで丁寧にお茶のうまみを引き出しているのも特徴だ。また、容器の中に見える“にごり”も「キリン 生茶」の特徴の一つ。最新技術のセラミックボールミルで茶葉を丸ごと超微粉砕し、抽出されたお茶に組み合わせることで、余韻を生み出している。緑茶の世界に「生」という新しいおいしさを生み出した。

今回、なぜ「キリン 生茶 ほうじ煎茶」を手掛けることになったのか。マーケティング部の松井のり子さんは「生茶ブランドは、誕生から“生”のチカラで日本茶を革新することを目指して取り組んできました。20周年を迎える2020年に、新たにお茶のおいしさを進化させる提案として着目したのが“ほうじ茶”でした」と話す。

実は、近年無糖茶市場では、茶色系のお茶(麦茶やブレンド茶、ほうじ茶など)が伸びていて、緑茶ユーザーでも多くの人が茶色系無糖茶を日常的に飲用しているという。松井さんいわく、「なかでもほうじ茶は昔から飲み慣れている“和のお茶”としての安心感と、抹茶のように洋風のアレンジもできる嗜好性・汎用性の高さで、お客様の注目が集まり、注目されているカテゴリー」だという。それだけ支持されているにもかかわらず、「多くの人が、ペットボトルのほうじ茶に対しては、『どれも同じ』という評価をしている」ことがわかったという。

■新しいおいしさを体現するために約900本の試作を行った

今や若い世代も注目しているほうじ茶。その楽しみが広がっている今こそ、「ペットボトルのほうじ茶でもお客様にうれしい驚きを届けたい。20年前に緑茶の世界に“生”という新しいおいしさを持ち込み、お客様に驚きと喜びをもたらしたように、ほうじ茶の世界にも“生”で価値を広げていきたい。そうした思いで昨年春から何度もお客様の声を聞き、開発を進めてきました」と松井さん。

しかし、簡単には進まなかった。「生茶」ブランドから発売するほうじ茶はどのようなものであるべきか。松井さんは実際に茶畑に出向き、生の茶葉をかじってインスピレーションを得ながら、「生茶ブランドのほうじ茶のおいしさはどのようなものか、どうすれば“生”のおいしさを感じてもらえるのか、何度も試行錯誤を重ねました」と話す。

実際、「生茶葉の新緑のようなあまみと香り」と、ほうじ茶の上品な香ばしさを兼ね備えた新しいおいしさを体現するために、約900本の試作を行ったという。最終的には、「さまざまな茶葉の焙煎の工夫と、“まる搾り生茶葉抽出物”の掛け合わせ」で、上品に香り高く、雑味のない軽やかできれいな余韻が広がる味わいを実現した。「商品ターゲットは“おいしいお茶を飲みたい全ての人”として、今までのほうじ茶にないおいしさを目指しました」と松井さん。

■「コロナ禍でお茶に対するお客様の期待は二分された」

そんな大きな苦労を経て誕生した「キリン 生茶 ほうじ煎茶」。販売戦略はどのように行われたのか。「生茶ブランド誕生時と同じように『ほうじ茶に、生』という新しい驚きのあるニュースとして堂々と伝え、トライアルを喚起することに重点を置きました」と松井さん。「味覚には自信があったので、まずは1本試してもらえるように、“登場感”と“生のおいしさによる際立ち”をキーワードに、お客様にとって“飲み逃せないニュース”となるべく、全社を挙げて、広告と連動したあらゆるお客様接点での拡売を徹底しました」

広告には、満島ひかりさんと吉沢亮さんを起用し、テレビやポスターなどで見られる2人のおいしそうな表情が高い共感を呼んだことも大きかった。そうしたことで商品への関心や期待が高まり、トライアルに繋がった。実際、味覚に対する評価もすこぶる高く、「生のおいしさへの納得感」「ほうじ茶らしい香りの高さ」が好評で、リピート購買につながっている。その結果、発売から約3週間でキリンビバレッジ過去3年新商品最速の2000万本を突破、発売約1カ月半で年間販売目標の達成となり、さらには「生茶」ブランド全体の9、10月の2カ月の販売数量も前年比115%となった。

2020年は新型コロナウイルスという、誰もが考えもしなかった事態になった。そんな中での新商品の発売に影響はなかったのか。松井さんは「コロナ禍でお茶に対するお客様の期待は二分されたと考えています。カテゴリーに新規性があり、お客様の期待が残るほうじ茶は伸長し、無糖茶の代表で健康的なイメージも強い緑茶は前年並みで進捗。一方で、節約志向を背景に今まで伸びていた麦茶は縮小と、飲用理由が不明瞭になってきたブレンド茶も厳しい市況が続いています。その中で『生茶ブランド』は、“生”という新規性のある提案で、お客様のカテゴリーをうまくとらえることができ、成功につながったと考えています」と話す。

「生茶」ブランドの根幹である「まる搾り生茶葉抽出物」と「茶葉の焙煎の工夫」によって、唯一無二のほうじ茶を誕生させたキリンビバレッジ。20周年のチャレンジは好スタートとなった。今後も生茶ブランドの提案する“生”のおいしさを広げる存在として、広く愛される商品になるべく、市場定着を図っていくという。

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