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岡田健史が語るストイックすぎる仕事観「満足しはじめた瞬間に死ぬんじゃないかと思っている」

  • 2020年11月13日
  • Walkerplus

作家・中山七里によるクライム・サスペンス小説を原作とした実写映画『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』が、2020年11月13日(金)より公開される。連続ドラマ「MIU404」でも刑事役を務めた俳優の岡田健史だが、本作で初となる刑事役に挑戦。映画のオリジナルキャラクターで新米刑事の沢田圭として、破天荒な直感型の敏腕刑事・犬養隼人(綾野剛)と、そのバディの冷静沈着な女性刑事・高千穂明日香(北川景子)と共に、安楽死を手口とする連続殺人犯“ドクター・デス”の謎を追った。俳優デビューから2年がたった岡田に、本作で経験できたことや、ストイックなその仕事観について語ってもらった。

■本作に出演していなかったら「『MIU404』での未来は違ったと思う」
――今回、岡田さんは原作には登場しない新米刑事・沢田圭を演じました。沢田を演じる上で気をつけたこと、こだわったことがあれば教えてください。

【岡田健史】(サスペンス、刑事役特有の)“説明セリフ”に耐えられるように準備しました。もちろん、刑事とはどんな職業で、どんなことを考えているんだろうということは、自分を安心させるためにリサーチしましたが、それよりも演技の上で、感情を込めず、余計なことを削ぎ落として、でも不自然にならないように情報を伝えることに力を入れていました。それを頭ではわかっていても、体が追いつかないことはたくさんあったんですが。

ただ、それ以外は特に刑事役だからとこだわったポイントはないですね。今回は自分の演じるキャラクターの色をどう出すのかということよりも、(綾野剛演じる)犬養さんと(北川景子演じる)高千穂さんとどう絡むかということを重視していました。

――完成した映画をご覧になった感想を教えてください。

【岡田健史】本作は、実際に放映されたのが先だった「MIU404」よりも前に撮影した作品だったので、僕にとって刑事役を演じる初めての機会でした。今観ると、まあ課題が多いですよね。特に一番印象に残っているのが、僕の「藻?」というセリフの下手さです。当時、自分の思うように表現できていなかったことを、このセリフで痛感しました。

――撮影時から、沢田役を演じることの難しさを感じていましたか?

【岡田健史】沢田というキャラクターは演じていて心地よかったんです。でも、“心地よさ”と“いい芝居”がつながるとは限らないんだなと思いました。自分のベストを尽くしたつもりではあったのですが、今観ると粗が目立ちますね。

【岡田健史】ただ、(振り返ってみて)その違いに自分でちゃんと気づけたということは嬉しかったです。なんでそういうセリフの言い方になっていたのかもよくわかるし、今の自分ならどうするべきかもわかるので、少しは成長できたのかもしれないと思いました。

――出演作を観るときは、いつもご自身を客観的に見て、反省点を見つけていますか?

【岡田健史】僕の(演技の)粒子がまだまだ粗すぎるので、反省点ばかりが目に付くんですよ。監督とプロデューサーにも、試写が終わった後に直接「僕のダメ具合がわかってよかったです」と伝えました。もし『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』に携わっていなかったら、「MIU404」での未来は違ったと思うので、参加させていただいて感謝していますし、本当に「一つ一つの仕事を一生懸命こなすしかないな」と感じました。

■敬愛する綾野剛の存在 「役以外の人間性を知りたいと思った」
――本作には綾野剛さんや北川景子さんを始め、活躍する俳優さんが多く出演されています。共演者の方から刺激を受けたことがあれば教えてください。

【岡田健史】綾野剛さんに関しては、初日から衝撃の日々でした。こんなにも作品への愛が深い人、愛する力が強い人と出会えてよかったなと心の底から思いましたね。実際に、綾野さんと(撮影で)出会った去年の夏から、僕の作品に対する考え方も180度変わりました。その経験が僕の『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』での思い出のひとつでもあります。

――素顔の綾野さんや、オフで会われたときの綾野さんの印象はありますか?

【岡田健史】共演者の方のことは、素の人柄よりも現場での役柄で見るタイプなので、綾野さんのように役以外の人間性を知りたいと思う人を見つけられたのは、僕にとって珍しいことなんです。周りの方々は綾野さんのことを、これまでの出演作のイメージもあって「寡黙でクールな方」と思っていたというのですが、実はキュートな一面を持っていて、童心や好奇心を忘れずに、常に自分を探求されている方でした。それを見て僕はとても影響されましたし、綾野さんのようでありたいな、綾野さんを上回っていきたいなと思いました。

■俳優デビューから2年、今の“まっすぐ”な自分以外の自分を知りたい
――2020年には4つの映画が公開され、2021年には大河ドラマにも出演されるとのことで、デビューから2年でありながら、とても活躍されている印象です。これまでの2年間を振り返ってみて、今どう思われますか?

【岡田健史】うーん…、「大丈夫かな?」と思います。思いませんか?(笑) 常に危機感を持ちながらやっているからでしょうか。あまり急いで成長しようとすると「身が持たないよ」といわれるとは思うんですけど、常に「やばいな」と思いながらやっています。

――ご自身のお仕事に満足することはないですか?

【岡田健史】ないですね。あったとしても、その日のうちに切り捨てます。自分の糧や自信にはしますが、その自信が次の作品には使えるかというとそうではなくて、(芝居として行うことが)すごく幅広い中、ひとつの自信にすがったりしていたら、それこそ危ないなと思うんです。僕は常に自分の芝居を全然ダメだと思うことを大事にしていて、「ちょっといいじゃん」と思い始めた瞬間に、生き生きしなくなるというか、死ぬんだと思っています。

――なるほど。そんなストイックな岡田さんが自分の強みだと感じることはなんですか?

【岡田健史】まっすぐさですかね。ただ、それが今の武器だと思う一方で、あくまでもひとつの点でしかないので、もっと違うものがほしい、探求していきたいと思っています。オーディションなどでは、まっすぐさが利用できる役よりも、そうではない役の方が圧倒的に多いですし。この武器をさらに鋭利に磨いて、強固なものにしていくというのは晩年になってからでいいので、今はもっと広く見て、自分は何ができて、何ができないのかということをひたすら知っていきたいです。

――なるほど。今は世の中としても、好きなことや強みを伸ばそうという風潮が強いと思うのですが、岡田さんはあえて得意を極めようとはしないんですね。

【岡田健史】それができたら申し分ないんですけど、そうじゃないからみんな苦しんでいるんだと思います。それが生きていくということかもしれないし。ただ、その中で僕は今好きなことでご飯を食べているという時点で、十分恵まれているとは思っています。その好きなことの中から、さらにできることの可能性を探しているということですね。

――それでは、岡田さんにとってライバルとなる存在はなんだと思いますか?

【岡田健史】僕としては特定の人は見ていなくて、自分の中にいると思っています。敵は己の中にありです。

――自分の中にいる敵とはなんですか?

【岡田健史】自我ですね。僕は、仕事は仕事で目的があって、やるべきことも決まっていると思っているので、自我だけでは仕事ができないと考えています。だから、必要以上の自我は出さないようにしているんです。僕がやりたいことではなく、役がやりたいことをやるのがお芝居だと思うので、脚本の言葉をいかに自分の言葉のように表現するか、僕自身を役にどうやって寄せるかを大事にしていますね。

――最後に、今後挑戦してみたい役や作品があれば教えてください。

【岡田健史】今ここにいる僕以外の役です。役者という仕事は、役を通して自分を知り、鍛錬できる、いいお仕事なので、今の自分以外が核となっている役はすべてやりたいです。

取材・文=於ありさ

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