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あべのハルカス美術館「奇才」後期展示もすごかった!傑作、代表作が一堂に

  • 2020年10月20日
  • Walkerplus

大阪・阿倍野の「あべのハルカス美術館」で2020年11月8日(日)まで開催中の「奇才 ―江戸絵画の冒険者たち―」がすごいと耳にしていたが、10月13日から大幅な展示替えが行われたということで、さっそく見に行ってきた。

■全86点中63点が後期のみの展示

今回の展示替えは展示作品86点中、63点が後期のみの展示ということで、前期と後期両方見れば149点もの江戸期の傑作が見られるという大盤振る舞いだ。前期と同じ展示物でも絵巻の巻を変更したり、画帳のページを替えたりしているので興味は尽きない。

■現在の大家も当時はアバンギャルドな奇才

本展は葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳、丸山応挙、池大雅、与謝蕪村など江戸時代の画家の作品展。今でこそ彼らは世界に認められた画家ばかりだが、実のところ作品を発表した当時はアバンギャルドで強烈な個性を放つ「奇才」ばかりだった。

今回はその代表作といわれる作品を中心に集め、「京」「大坂」「江戸」「諸国」とエリアを分けて35人の作品を展示。江戸や京、大坂などの都市ばかりでなく、諸国にもとんでもない奇才がいたことがわかる展示になっている。今回はその奇才の代表作や傑作がずらりとそろう。

■圧倒される北斎の迫力

会場に入って最初に出迎えてくれるのは葛飾北斎の「上町祭屋台天井絵 男波」と「東町祭屋台 龍図」の2枚。その迫力と力強さに思わず足が止まってしまう。波の躍動感や龍のドラマチックな表現は壮年期を思わせるが、なんと80代半ばの作品だそう。北斎のエネルギッシュな表現力が時空を超えて伝わってくる作品だ。

■配置を再現した襖絵の迫力

今回の展覧会では大作が多いのも特徴の一つ。そのなかでも大きな見どころなのが、長澤蘆雪の「龍図」と「虎図」。これは和歌山県の無量寺本堂の襖絵で、今回は本堂の配置の通り、龍と虎が向かい合うように展示されている。巨大な虎と龍がにらみ合うように向かい合う姿は圧巻。これは後期のみの展示なので前期を見た人もぜひもう一度足を運んでいただきたい。

■くすっと笑える戯画も

大坂の画家で筆者が好きなのは戯画作者の耳鳥斎(にちょうさい)。何点か展示されているが、特に「別世界巻」という絵巻はくすっと笑いたくなるような“ゆるかわいい”おもしろさだ。本作はいろいろな職業の人が落ちる地獄を描いたものだが、「歌舞伎役者の地獄」では役者が大根とともに煮られていたり、「飴屋の地獄」では飴屋が飴のように延ばされたり、曲げられたり、マンガのような楽しさがある。

■水木しげるの先達がここに

さらに歌川国芳や谷文晁など有名どころが顔をそろえる江戸の見応えは言うまでもないが、諸国の層の厚さも見逃せない。

古河の河鍋暁斎、駿河の白隠、岡山の浦上玉堂など上げればきりがないが、特に印象に残ったのが小布施の髙井鴻山(たかいこうざん)。この人は市井の教養人で、北斎を小布施に招き、冒頭で紹介した祭屋台の天井画を依頼したりしている。その絵は趣味の範囲を超えた画力で、特に妖怪の絵は斬新でまさしく奇才。水木しげるも驚きの妖怪画の先駆者だ。

■おどろおどろしい絵金の表現力

もう一つ、土佐の絵金の作品も必見。絵師金蔵、略して絵金は、血なまぐさい芝居絵で知られるが、その色鮮やかさには驚かされる。高知で行われている「絵金祭り」では、作品をろうそくの灯りで展示するそうだが、そのような薄暗い中で見るのにちょうどいい色使いなのだろう。

ここで紹介した作品はほんのひと握り。実際に現物を見れば、彼らが奇才と呼ばれた理由がよくわかる。後期展示も見どころ満点。もう一度見てもいいと思える展示だった。

取材・文=鳴川和代

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