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先史・原始時代に奄美・沖縄諸島で暮らした人々の生活を考察!

  • 2021年6月19日
  • 沖縄島ガール

先史・原始時代の奄美や沖縄の文明の研究をまとめた書籍「奇跡の島々の先史学 琉球列島先史・原始時代の島嶼(とうしょ)文明」(ボーダーインク)が発売中。

「奇跡の島々の先史学 琉球列島先史・原始時代の島嶼文明」は、沖縄・那覇市出身の人類学博士・高宮広土(たかみや・ひろと)氏の著書。ボーダーインクからは「島の先史学 パラダイスではなかった沖縄諸島の先史時代」に続き、2冊目。

本書は、序章から始まり、全6章で奄美・沖縄の先史・原始時代について考察を進め、終章で“先史・原始時代に起こった奇跡「島嶼文明」”として定義をまとめている。

第一章では、「現代奄美・沖縄諸島人の起源」と題して、遺跡から出土した土器、貝塚に捨てられていた貝、当時人々が食べていた穀物を調査し、“ヒト”がいつ頃から奄美・沖縄諸島に適応していったのかを仮説を立てていく。「一日二〜三時間、週に三〜四回食料探しに費やし、あとはレジャーなどの自由な時間で、おしゃべりしたり、ダンスをしたりしていることが明らかに」と、生活が想像できる記述も非常に興味深い。

第二章は「狩猟採集民のいた島」として、海外の似たような島嶼環境と比較して、奄美・沖縄諸島が世界的にも稀有な島であったことを説く。その論拠としているのは、狩猟採集で暮らすには島の面積が圧倒的に狭小であったという点。

続く、第三章は「貝塚時代における社会組織の変遷」にクローズアップ。ここでも高宮氏は、奄美・沖縄諸島が珍しい社会変遷をたどっていることを紹介する。階層社会のような複雑な社会とシンプルな共同体のような社会とが“ノコギリの刃”のように繰り返していたと定義し、後世の詳しい検証を期待する形で結んでいる。

そして、第四章では、先述した“狩猟採集”から“農耕”へと変わっていったタイミングを検証。こちらもまだ明確になっていないものの、グスク時代に何らかの変化が起こっていたことを示す。本章では、小さな島で民衆の生活スタイルが変わったきっかけ、本州の弥生農耕との違いなどをじっくりと感じ取りたい。

第五章では、ヒトは環境に大きな影響を及ぼす存在であるにもかかわらず、奄美・沖縄諸島における環境影響が非常に少なかった点、第六章では、沖縄最古の土器を巡る悲喜こもごもが綴られる。

考古学というものに、ヒトはロマンを感じ、大きな感情を入れ込みがちだが、本書に綴られる、奄美・沖縄諸島の稀有な現象の数々は、著者のいう、まさに“奇跡”としか言いようがない近年の調査研究に、思わずワクワクを隠せない。

まだまだ後進の研究に委ねるところは大きいが、それでも、今はこの“奇跡”にしばし酔いしれていたい、そんな気にさせてくれる1冊となっている。

「奇跡の島々の先史学 琉球列島先史・原始時代の島嶼文明」
発売中 2,420円(税込) ボーダーインク

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