「お姉ちゃんをやめたくて仕方なかった」自分より甘やかされる妹へのどす黒い感情【作者インタビュー】

  • 2025年5月18日
  • レタスクラブニュース
『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち

家族の中心はいつも、私ではなく妹だった…。

常に姉妹で比較されて育ってきた26歳のOL・エリ。彼女は大人になって家族と離れて暮らすようになった今も、妹のことが大嫌い。妹のわがままばかりが通り、姉の自分は「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」とやり込められてきました。そんなある日、実家に婚約者を連れていくと、呼んですらいなかった妹が突然現れ、エリは不安が拭い切れなくて…。

姉と妹の確執を描いたセミフィクションコミックエッセイ『世界で一番嫌いな女』。試し読み連載のページビューが累計900万を超えるなど、熱い注目を集めています。今回は、作者のただっちさんに作中のエピソードについてお話を聞きました。

あらすじ


『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

エリの中で今も苦々しい記憶となっているのが、小学2年生の誕生日の出来事です。誕生日プレゼントにずっと欲しかった”リリちゃん人形”を買ってもらったエリですが、それを見た妹のまりあが「自分も欲しい」と駄々をこねはじめたのです。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

母親は、わがままを言って泣きわめく妹を嗜めることもせず、ニコニコしながら抱きしめてなだめ、甘やかします。エリは自分の誕生日の雰囲気を台無しにされてしまうのでした。

 『世界で一番嫌いな女』より

さらに後日、誕生日でもなんでもないまりあには、華やかなドレスを着た限定版の”リリちゃん人形”が買い与えられていたのでした…。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

無邪気に人形を自慢して姉を傷つけるまりあに我慢ができず、エリは冷たい態度を取ってしまいます。それが原因でエリは母親から「お姉ちゃんなんだから少しくらい我慢できるでしょ」と怒られてしまうのでした。

エリの実家は、いつも妹のまりあが中心で、姉のエリは我慢を強いられてばかりだったのです…。


お母さんなんで…? 苦々しい記憶が今も残る小学2年生の誕生日プレゼント


――この漫画を描くにあたって、実際に人から話を聞いたり、取材したことなどはありますか? こぼれ話などがあれば教えてください。

ただっちさん:
きょうだいに関する心理学の本を読んだり、姉妹を子育て中の友人に話を聞いたりしました。取材のこぼれ話ではないのですが、少し心が痛むことがありました。この本を読んだ母からこんなメッセージが来たのです。

「あなたには悪いことをしたと思ってる。妹に対しては、いつまでも赤ちゃんの気持ちで可愛がっていた。ごめんなさい。」

もちろん、妹の方が可愛がられている感じはずっとあったのですが、私は何不自由なく育ててもらえて両親には感謝の気持ちしかありません。子育ては誰でも初心者だし、下の子が可愛く思えるのは当たり前だと思います。「上の子可愛くない症候群」という言葉もよく聞きますし…。親目線で見ると、罪悪感を掻き立てる内容になってしまったのかも、と思いました。


『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

――子ども時代の”リリちゃん人形”をめぐるエピソードで、「いつもお姉ちゃんをやめたくて仕方なかった」というモノローグに胸がキュッとなりました。この時のエリとまりあの心境について詳しく教えてください。

ただっちさん:
エリは真面目に誕生日まで我慢して、やっとリリちゃん人形を手に入れた一方で、まりあは泣いてごねるだけで手に入れてしまいます。もちろんエリは理不尽に思いますが、まりあのように泣きわめいて、お母さんを困らせてまで欲しいとは思いません。だから、モヤモヤを抑えて一旦はまりあと遊んであげています。

その時点までは耐えられましたが、自分より高額なリリちゃんを自慢された上に、シンプルな衣装のリリちゃんを「お姉ちゃんみたいだね」とコンプレックスを刺激されたことで、爆発し、「もう遊ばない」とそっぽを向いてしまいます。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

手を出したわけでもなく、怒鳴ったわけでもないのに、まりあが大号泣して、お母さんに「お姉ちゃんなんだから」と責められて・・・。何度もそんなことが繰り返され、「お姉ちゃん」という役目が、「まりあのわがままに付き合う」だけの存在だとしか思えなくなってしまいます。

――あまりにも理不尽でモヤモヤが止まりません…。妹の方にあまり悪気がなさそうなところもなんとも歯痒いですね。

ただっちさん:
そうですね。ただ、まりあには悪気はありませんが、自分の思い通りになる可能性が高いと分かって泣き喚いています。理不尽に感じているエリにリリちゃんを自慢したのも、単純に「お姉ちゃんに褒めてもらいたい、認めてもらいたい」という気持ちです。エリがまりあよりもシンプルな服装を着ている理由も、エリの趣味だと思っています。それなのに「もう一緒に遊ばない」と言われ、どうしてこんなに意地悪なことを言うの?と不思議に思っています。
『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA


***

何かと比較されたりどちらかだけが贔屓されたり…。兄弟姉妹がいると、「自分も似たような経験をしたことがある!」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。 
姉妹の駆け引きはその後、ふたりに恋人ができる年齢になってからも続いていくのですが…。ふたりの確執から目が離せません!


取材・文=宇都宮薫

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2016 KADOKAWA Corp All Rights Reserved