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SNSでも大反響の手塚治虫文化賞受賞作!10歳少女の目から見たジェンダーギャップ『女の子がいる場所は』著者インタビュー

  • 2023年5月4日
  • レタスクラブニュース



ゴールデンウィークのお休み、いかがお過ごしですか?
年度はじめのバタバタした時間も一段落、ようやく一息つけたという方も多いかと思います。そんな休日にじっくりと読んでみたい作品をご紹介しましょう。

今回ご紹介するのは漫画家・やまじえびねさんが描いた短編集『女の子がいる場所は』。こちらは先日、4月25日に発表された第27回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞した話題の作品です。モロッコやインド、サウジアラビアなど世界各国の女の子たちの日常を通して、国も宗教も文化も違うそれぞれの国で、「女の子だから」という男女格差に直面しはじめた10歳の女の子たちの姿を描いています。



中でも注目を集め大きな反響を呼んだのが、昨年、Twitterで3.9万いいねを集めた「日本編」です。
「考えさせられる作品」
「同じことを親に言われてきた」
「誰も悪くないのがつらい」
「絶対的な善悪に分けられないところがリアル」
など、このツイートには様々な感想や意見が寄せられています。
このエピソードのあらすじをご紹介しましょう。

『女の子がいる場所は』日本編 あらすじ

父親と母親は2年前に離婚し、今は祖母の家で暮らしている、10歳の少女・まりえ。祖母の輝子は「女の子なんだから勉強なんかできなくていい」「女が男よりできがいいと苦労する」とまりえに話します。



一方、母親の真知子は大学准教授としてTV出演や本の執筆に忙しい日々。真知子は、輝子が無意識のうちに「女には勉強より美容やファッションが大事」といった考えをまりえに伝えることをやめて欲しいと思っています。真知子の離婚の原因となったのは、真知子が仕事で認められることや家事をしないこと、輝子が家事の手伝いに来ることを夫が快く思っていなかったことでした。

まりえは、共働きの両親をもつ友だちの「なっきー」や、2ヶ月に一度だけ会いに行く父親の利樹との会話を通して、「幸せ」について考えていきます。そして、母に「今、幸せ?」と問いかけます……。



ここで描かれるまりえと家族のエピソードは、大きな事件が起こるわけではありませんが、家族それぞれの価値観の違いを日常会話の中から丁寧にすくいとった作品になっています。
SNSで大きな反響を呼んだこの作品の作者、やまじえびねさんにお話を伺いました。

著者・やまじえびねさんインタビュー




──このお話を書こうと思ったきっかけはなんですか?

やまじえびねさん 祖母や高校教師の「女の子なんだから〇〇しなさい」という言葉の「女の子なんだから」を疑問に思う、という大学生からの新聞投書に着想を得ました。

──このエピソードはTwitterで公開され大きな話題になりました。この反響をどう受け止めましたか?

やまじえびねさん とても驚きました。舞台が現代の日本だから、全部ではないにしろ、それぞれにどの点かが「他人事ではない」と感じられるのかもしれません。




──どんな感想がありましたか、印象に残っているものがあれば教えて下さい。

やまじえびねさん 「『幸せ』について考えさせられた 」「おばあちゃんのような価値観に傷ついてきた」「どの価値観が『正しい/間違い』とは言えないのでは?」「一番リアルに感じたのはパパだ」 などなど。印象に残ったのは「ママはおばあちゃんに家事・育児を押し付けているのでは?」という感想。もしこう感じた読者がかなりいるのだとしたら、わたしの描写が足りてなかったと反省するところです。

     *    *    *

やまじえびねさんのコメントにもあるように、「女の子は勉強なんかできなくていい」という価値観に傷ついてきた人もいれば、「おばあちゃんもそう言われて育ったんだよね」と同情する人も。さらに、まりえの前では真知子の仕事に理解があるように見えたまりえの父・利樹についても、かつては妻が仕事で認められるほど不機嫌になっていた……という描写に「リアルだ」というコメントもありました。

登場人物それぞれ、誰が正しく誰が間違ってる……とは言いきれない、この作品への様々な反響は、そのまま現代社会を映し出す鏡と言えそうです。おばあちゃんの発言にも、お父さんの不機嫌の理由にも、お母さんが疲れた表情をしていた理由にも、どれも背景には社会的な問題があります。
10歳の少女の視点を通して「女性の生き方」や「女性の幸せ」について考えるこの作品、あなたはどんな感想を抱くでしょうか?

※本記事は2022年7月掲載の取材記事を再構成・編集したものです。



取材・文=レタスユキ

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