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Twitterで5万いいね超え、第27回手塚治虫文化賞受賞の話題作『女の子がいる場所は』の著者・やまじえびねさんに聞きました

  • 2023年4月30日
  • レタスクラブニュース



先日、4月25日に第27回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」の受賞作が発表されました。ノミネートされていた8作品のうち、今年の短編賞を受賞したのはやまじえびねさんの『女の子がいる場所は』でした。

『女の子がいる場所は』は、モロッコやインドなど世界各国の女の子たちの日常を描いた作品です。国も宗教も文化も違うそれぞれの国で、「女の子だから」という男女格差に直面しはじめた10歳の女の子たちの姿を描いています。

この中でも、昨年、Twitterでも5.1万を超える「いいね」を集めて話題となったのが「サウジアラビア編」です。
「泣きました」
「考えさせられる」
「なんとも言えない…」
「すごく良い作品」
など、Twitterでも多くの感想が寄せられました。このエピソードのあらすじをご紹介しましょう。

『女の子がいる場所は』サウジアラビア編 あらすじ



サウジアラビアに暮らす少女・サルマは、週末しか家に帰らない父親と、母親の三人暮らし。ミサンガ作りが得意なサルマは、父が「遠い親戚」と紹介してくれた女性・アミーラの元へ、ミサンガ作りを習いにいくようになりました。
車の運転ができて、留学経験もある聡明なアミーラは、ミサンガ作りの名人。ほどなく、サルマはアミーラが「パパの第一夫人」であり、ママが「パパの第二夫人」であることに気づきます。

サウジアラビアは一夫多妻制。結婚は親同士が決めるのが当たり前、結婚式まで顔を合わせないことも多く、花婿が花嫁を気に入らなかったら、式の当日に結婚がダメになることも……。



同級生ファイの姉の結婚や、アミーラと母がそれぞれ父と結婚した時の話を聞くうち、サルマは「わたしたちは結婚しないと生きていけないの?」「結婚する前に外の世界を見てみたい」という気持ちを抱くようになります…。

この作品について、作者のやまじえびねさんと、編集担当の青木さんにお話を伺いました。

やまじえびねさんインタビュー



──まずは手塚治虫文化賞受賞おめでとうございます。受賞についてのコメントをいただけますか?

やまじえびねさん この本の発売に合わせて、ツイッターを始めました。試し読みをツイートしたら、予想を超える「いいね」をいただきました。これが最初のびっくりです。それから様々なメディアでご紹介いただき、気がつけば、手塚治虫文化賞・短編賞を受賞しました。本当に驚くばかりです。読んでくださったみなさまに、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました!

──「世界各国の少女たちの日常でのジェンダーギャップ」をテーマにしようと思ったきっかけを教えて下さい。

やまじえびねさん ちょうど担当編集者が交代したところで、わたしも新たな気持ちで取り組もうと、 新担当にアイデアを出してもらいました。ふたつのうちのひとつが今回選んだ「女性差別を受けている海外の少女たちの日常を描く」というお題です。選ばなかった方も新鮮で面白いものでしたが、こちらの方がよりわたし向きだと感じました。

──編集ご担当の青木さんは、なぜこのテーマを提案されたのでしょう?

編集担当・青木さん やまじさんに合うテーマを探して、自分の本棚を端から眺めていたところ、かつて女性が自転車に乗ることを禁じられていたサウジアラビアが舞台の映画『少女は自転車にのって』のDVDが目に留まりました。"女の子だから"という理由で自由を奪われている少女たちを描くことは、これまでに多くの作品で「生きづらさを抱えた女性」を描き続けてきた著者に合うのではないかと思い、提案しました。 
  
──女性差別やジェンダーギャップについての各国の状況を描くのに、共通して「10歳の女の子」を主人公に選んだ理由をお聞かせいただけますか?
 
やまじえびねさん 進路や恋愛や趣味など、自分のことで忙しくなる年齢ではなく、まだ子供っぽくて、自分の世界を固めていく少し手前にいるけれど、大人の世界を理解できなくはない年頃がよいと思いました。好奇心があり、見たもの聞いたものをまっさらな気持ちで受け止め「それってどういうこと?」と問うことができる主人公が必要でした。



──今回題材にした国以外にも、様々な国の資料に目を通されたようですが、資料を調べていく中で感じたことなどがあれば教えて下さい。
 
やまじえびねさん 資料をあたっている時は「こんなひどい国があるのか」「こんなことがまかり通っているのか」と驚いたり憤ったりしましたが、作品を描き出すと「日本だっていろいろあるじゃないか。根っこは全部いっしょだぞ」「すべてよそ事じゃないんだ」という思いが湧きました。



     *    *    *

日本でも女性参政権が認められたのは戦後のことでした。今でも程度の差はあれ、ジェンダーギャップは多くの国に様々な形で存在します。このやまじえびねさんの作品集『女の子がいる場所は』は、世界の少女たちに優しく寄り添いながら、それぞれの感じる戸惑いや困惑を丁寧に描いていきます。

サウジアラビアから始まってモロッコ、インド、アフガニスタンの少女たちの日常を描き、日本の少女も登場します。そこにあるのは誰もが感じたことのある「女の子なんだから」という抑圧について描かれたエピソード。私たちのすぐ身近にもある根深いジェンダーギャップについて、考えさせられる物語です。

※本記事は2022年7月掲載の取材記事に新たなコメントを加えて再構成・編集したものです。

取材・文=レタスユキ

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