サイト内
ウェブ

このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第91回 エコ大学ランキング最優秀大学が取り組む環境対策〜三重大学

  • 2011年8月11日

第91回 特集/「増えるエコキャンパス」〜大学が地域・社会を変える エコ大学ランキング最優秀大学が取り組む環境対策〜三重大学 三重大学学長補佐、人文学部文化学科教授 朴 恵淑

無断転載禁じます

 「世界一の環境先進大学」を目指す三重大学は、かつて四日市公害で苦しんだ三重県唯一の総合大学で、2007年11月に日本初となる全学部一括のISO14001認証を取得し、環境教育・環境研究・社会貢献・業務運営の合理化に積極的に取り組んでいます。環境立国日本が掲げる、低炭素社会・循環型社会・自然共生社会づくりのトップランナーとなることで、四日市公害の過去の負の遺産を未来への正の資産に変えることとなり、大学の社会的責任(USR)を果たすものと認識しています。

循環型社会への身近な3R活動

 三重大学内の3R環境活動は、環境ISO学生委員が中心となって、2006年2月から取り組んでいます。まず、発生抑制(リデュース)活動として、レジ袋ゼロ運動が挙げられます。2008年1月から大学生協でのレジ袋有料化により約99%のレジ袋を削減。2009年10月に日本初となるレジ袋を置かないコンビニの取り組みによって、年間約20万枚のレジ袋を削減し、約20tの二酸化炭素(CO2)を削減しました。

 再使用(リユース)活動として、校内の放置自転車を修理し、新入生や留学生に譲渡したり(年間約100台)、卒業生から譲り受けた家電製品を新入生や留学生へ譲渡する(年間約150台)再使用に取り組んでいます。
 さらに、再生利用(リサイクル)活動として、校内で年間約200t の古紙を回集し、トイレットペーパーにリサイクルし、校内で消費する約30%を賄う仕組みに成功しました。これらの3R活動によって、2009年1月に「平成20年度容器包装3R推進環境大臣賞」優秀賞を受賞しました。

国際的な環境人財を育成

 三重大学の特色ある環境教育として、2008年度から文部科学省の教育GPに採択された「三重大ブランドの環境人財養成プログラム」を積極的に推進しています。

環境資格支援教育プログラム

 文系・理系を問わず、環境内部監査養成セミナー(2単位)の履修者には環境内部監査員資格を授与し、2009年度には77名の内部監査員を養成しました。環境内部監査員は、環境マネジメントシステムにおいてPDCAサイクルの評価を行うことで、学生でありながら大学の環境運営に関わる社会体験ができます。環境インターンシップ(2単位)では、社会に認められる技能の取得や、環境マインドの高い環境人財を養成しています。2009年度の環境資格支援教育プログラム関連科目の受講生は2,659名で、全学部生の約42.9%にあたります。環境資格支援教育プログラムから11?12単位を取得した学生には、学長から修了証書が授与されます。2009年度には16名が対象となりました。

国際環境教育プログラム

 国際的視野を持ち、実践外国語能力を高め、三重(地域)に根ざし、世界に通用する国際環境人財を養成しています。国際環境インターンシップ(2単位)として、2009年12月にコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)に4名の学生が参加し、コペンハーゲン大学とエール大学主催の世界14大学が集まった国際環境ワークショップにて、三重大学の環境活動の発表や意見交換を行いました。2010年10月には、名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に34名の学生が参加しました。
 国際環境教育プログラムのプラットフォームとして、2009年10月に、9ヵ国(モンゴル・極東ロシア・中国・韓国・日本・タイ・インドネシア・オーストラリア・アメリカ)33 大学からなる「アジア・太平洋大学環境コンソーシアム」を構築し、三重大学が事務局を務めています。時差の少ないアジア・太平洋地域の利点を生かし、テレビ会議システムを活用することで、各大学の環境教育プログラムの相互受講が可能です。
 三重大ブランドの環境教育は、地域における環境経営の発展と環境文化の創造のさきがけとなる優れた成果として認められ、2010年6月に「第8回日本環境経営大賞環境経営部門最優秀賞」環境経営パール大賞を受賞しました。

手作りの環境報告書

 大学の法人化に伴う環境配慮促進法によって、2006年4月から環境報告書の作成が義務付けられ、毎年9月末までに環境報告書の作成、公表が求められています。三重大学の環境報告書は、学生と教職員が中心となって資料収集や原稿執筆、編集などをすべて手作りで行っています。三重大学環境報告書2006、2008、2009は、環境省と地球・人間環境フォーラム主催の第10、12、13回「環境コミュニケーション大賞」環境報告書部門優秀賞(環境配慮促進法特定事業者賞)を受賞しました。とくに、三重大学環境報告書2008は、東洋経済新報社主催の「第12回環境報告書賞」公共部門賞も受賞しました。最新の環境報告書2010は、東洋経済新聞社主催の第14回環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞を受賞することが決まり、三重大学のWeb(www.iso.mie-u.ac.jp)で紹介しています。

COP10 in 三重を開催

 自然共生社会づくりの基軸となる生物多様性保全への取り組みとして、2010年10月にCOP10のパートナーシップ事業として、三重大学が中心となり「COP10 in 三重」を開催しました。アジア・太平洋の7ヵ国から約200名の子供や大学生、教職員が参加し、三重大学が誇る300t級演習船の勢水丸による伊勢湾洋上生物多様性環境学習、亀山市里山公園(みちくさ)での池干しや生物観察会を実施しました。

 また、アジア・太平洋の大学生による生物多様性保全環境宣言文の作成および発表、世界生物多様性マップ作成、COP10会場での三重大学ブースの設置運営、国際環境教育シンポジウムの開催、アジア・太平洋大学環境コンソーシアムの戦略会議、四日市コンビナートの見学などを行いました。

世界一の環境先進大学を目指して

授賞式後の記者会見
「第2回エコ大学ランキング」総合・国公立大学部門第1位授賞式後の記者会見(2010年11月5日)
 低炭素社会の実現は、世界一の環境先進大学を目指す三重大学の最優先環境対策として、2020年までに1990年比で温室効果ガスを30.7%削減する「カーボンフリー大学」構想が内田淳正学長により、2010年6月に宣言されました。日本の大学の中で最大削減目標値であり、政府の25%削減目標に比べても大変な削減目標となります。
 カーボンフリー大学構想では、キャンパスは、設備投資による削減だけでなく、エネルギーを創る・活かす・操る仕組みのノウハウを活かす環境研究の場であり、環境教育の拠点となるスマートキャンパスとなります。また、在学生や教職員、卒業生や地域住民の協力によるCO2削減を促すスマートコミュニティーモデルを構築することで、大学と地域が一丸となって取り組む野心的な仕組みです。

 三重大学の多岐にわたる環境対策や取り組みが高く評価され、2010年11月には、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)主催の「第2回エコ大学ランキング」において、総合・国公立大学部門第1位になりました(写真)。1位になった経験や誇りは、さらなる持続可能な発展とつながり、名実共に世界一の環境先進大学実現への大きな原動力となります。


キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。